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制裁及び軍縮不拡散に関するセミナー(第5回)の開催

2013年6月10日

6月10日、日本政府国連代表部及びポーランド、トルコ代表部が共催し、ワシントンDCのシンクタンク、スチムソンの協力を得て、21世紀の拡散問題の課題と違法なネットワークの役割について議論を行う国際会議(タートルベイ・セミナー)が開かれました。

 

この会議は、日本が国連において開催する5回目のセミナーにあたります。最初の2回は核兵器をはじめとする大量破壊兵器の拡散を防止するための枠組みや地域jにおける課題について議論し、第3回目の会議では2012年7月に開催された武器貿易条約に関する国連会議の直前に、国際的な武器取引の課題を扱いました。第4回目の会議では、国連安保理の下での制裁の枠組みなどが、大量破壊兵器及び通常兵器の拡散をどのように防止するかにつき出席者で協議しました。今回の会議は、不法なモノやカネのネットワークがいっそう技術的にも進化ししていることに伴う問題点を取り上げるとともに、最近採択された武器貿易条約がこうした課題に取り組む上で、どのような意味を持つかを議題にしました。(会合の詳細な議題(英文)は こちら)。

今回の会議には 100名以上の各国外交官や、国連事務局、NGO,シンクタンク関係者が出席しました。こうした幅広い出席者を得ることにより、議論は幅広い視点や分野横断的な論点に基づくことができました。こうした議論は、専門分野に特化しがちな国連の会議においては、なかなか実現しづらく、このセミナーの大きな得jちょうとなっています。

日本の西田国連大使、トルコのチェビッチ大使及びポーランドのヘルチンスキー臨時代理大使が主催者を代表して冒頭の挨拶を行いました。その後、第一パネルにおいては、ニューヨーク大学のシドゥ教授、ワシントンのシンクタンクCNASのアッシャー氏、同じくワシントン所在のNGOであるFund for Peaceのタフト氏がパネリストとして発言しました。三名はそれぞれ、大量破壊兵器及び通常兵器の不法なネットワークがどのようにして犯罪やテロ活動とも関連し、活動を拡大しているかを議論しました。パネルはスチムソンのフィンレー氏が司会となり、こうした違法なネットワークの特徴や、国際社会がこうしたネットワークの台頭にどのように対抗すべきかといった点に焦点を当てて議論しました。タフト氏はとくに、テロリストや犯罪組織がこうしたネットワークの存在を利用し、モノやカネを移動するようになっている傾向に警鐘を鳴らしました。出席者との間の議論では、一部の参加者からは分野を特定した地域横断的な制裁措置の導入を検討すべきではないかといった発言や国連内の異なる制裁委員会の連携強化の必要性などが指摘されました。また、地域内の拡散防止のための努力の重要性を指摘するコメントもありました。

第二パネルは、最近採択された武器貿易条約(ATT)をどのように活用していくかといった点に焦点を当てて、議論しました。ニュージーランドのマクレイ大使、アメリカン大学のボスコ教授、NGOのコントロール・アームズのピトラック氏がパネリストとして参加し、スチムソンのストール氏が司会を務めました。パネリストからは、ATTの批准国が一定数に達した段階で、各国はATTをどのように実施するかのための具体的な条約運用の体制を考えていかなければならないと発言しました。また、条約の内容において意図的に曖昧にされている箇所をどのように実施するかも課題となると指摘しました。また、条約実施のために必要な、各国内及び地域内の措置が何か、速やかに優先付けをしなければいけないとのコメントもありました。他のパネリストからは、NGO,市民社会が条約の実施状況をモニターすることの重要性が強調されるとともに、実際に条約が機能しているかは、各国が提出する国内の履行状況についての報告の質及び量にかかっているとの指摘がされました。パネリストからはまた、ATTが適切に実施されない場合には、ATTは他の既存の条約と同じように、単なる紙切れに過ぎないという批判を受けることとなり、そうした事態を避けるためにも、これまでの条約の実施の経験や教訓を十分研究する必要がある旨発言しました。ATTが成功するか否かの一つの重要な判断要素として、どれだけ多くの主要国がATTを着実に実施するかにもかかっているとのコメントもありました。出席者はパネリストが指摘した諸点に同意しつつ、いかにして各地域において、ATT実施のためのオーナーシップを涵養するかが重要であると述べました。また、ATTの内容を実施する上で、国際協力が不可欠であること、支援に際しては各国の国情に合致した形で行う必要があるとのコメントもありました。

 

この会議の基調講演は、ピューリッツアー賞の受賞経験のある、ワシントンポスト紙の安全保障問題担当エディターのダグラス・フランツ氏が務めました。フランツ氏は2011年に出版した、 “Fallout: the True Story of the CIA’s Secret War on Nuclear Trafficking.”という、パキスタンの核開発を手がけ、その後リビア等に核技術を流出したAQカーン博士の核密輸ネットワークの実態を追った著作でよく知られています。フランツ氏は、大量破壊兵器拡散の危機は、たった一回のミスも許されないほど深刻なものであると表現しました。 著書 “Fallout”の取材の過程で得られた教訓の一つとして、拡散を防ぐための抑止力はきわめて重要であり、各国共に拡散を助長する行為を決して許さない、そうした活動に関与した際には、思い処罰が待っているということを明確に示す必要があるという点を挙げました。違法なビジネスに関与した際の罰則が禁止的なほど厳しくなくてはならないという指摘でした。フランツ氏はまた、各国共に核兵器不拡散条約(NPT)を遵守し、核兵器国は着実に核兵器を削減する必要があると述べました。とくにWMDの拡散を通じた経済的な利益を追求しようとする動きに対抗する必要があると強調しました。国際原子力機関(IAEA)も、こうした違法ネットワークを根絶するためにも情報収集能力をさらに強化する必要があることをフランツ氏は指摘しました。引き続いての議論では、参加者からは、拡散を防止するための各国の政治的な意思がいっそう示される意必要があること、既存の法的な枠組みの強化や新規の法制度の整備などが、拡散防止の上で不可欠という意見が示されました。

その後、西田国連大使及びチェビッチ・トルコ国連大使がそれぞれ挨拶し、会議の内容を総括しました。西田大使は、出席者に謝意を表した上で、拡散を防止するための政治的意思の重要性を指摘しました。国際社会は、持ちうるすべての手段を講じる必要があり、拡散防止のための努力は劇的な効果をもたらすとは限らないが、着実な取り組みが行われない限り、現実に影響を及ぼすことはできないと強調しました。西田大使は、こうした重要な議題を議論するために、引き続きタートルベイ・セミナーを開催していきたいと述べ、会合を締めくくりました。

 

過去3回の制裁及び軍縮・不拡散に関するセミナーの概要は以下をご参照下さい。


第1回 2011年5月31日
第2回 2011年12月5日
第3回 2012年5月21日
第4回 2013年1月18日

 

会議に参加した国連の各国外交官、シンクタンク、NGO関係者

会議に参加した国連の各国外交官、シンクタンク、NGO関係者

 

西田国連大使の冒頭挨拶

西田国連大使の冒頭挨拶

 

第一パネルに参加した、シドゥ、アッシャー、タフト、フィンレーの各氏(左から)

第一パネルに参加した、シドゥ、アッシャー、タフト、フィンレーの各氏(左から)

 

第二パネルは武器貿易条約の実施の課題を議論:NZのマクレイ大使、ピトラック、ボスコ、ストールの各氏(左から)。

第二パネルは武器貿易条約の実施の課題を議論:NZのマクレイ大使、ピトラック、ボスコ、ストールの各氏(左から)。

 

セッション毎に行われるグループ討論:タートルベイ・セミナーで好評を博している議論の形態

セッション毎に行われるグループ討論:タートルベイ・セミナーで好評を博している議論の形態

 

ワシントンポスト紙のフランツ氏による基調講演

ワシントンポスト紙のフランツ氏による基調講演

 

パネリストとの議論に参加するセミナーの出席者

パネリストとの議論に参加するセミナーの出席者

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