2011年

 
 

制裁及び軍縮・不拡散に関するセミナーの開催

 

2011年5月31日

5月31日、ニューヨークのジャパン・ソサエティーにて、日本政府代表部がポーランド及びトルコ政府代表部との共催及びスチムソン・センター(ワシントンDCに所在する有力シンクタンクの一つ)と協力し、制裁及び軍縮・不拡散に関する1日がかりのセミナーを開催しました。

会合には、潘基文国連事務総長が基調講演を行ったほか、ホッペ国連軍縮部次席上級代表をはじめとする国連事務局関係者、1540委員会(大量破壊兵器の不拡散に関する委員会)、1718委員会(北朝鮮制裁委員会)、1737委員会(イラン制裁委員会)の業務を補佐する専門家パネルのメンバー、米国内のシンクタンクのメンバー及び62カ国の各国政府代表部から約150名が参加し、活発な意見交換を行いました。

 

会合においては、冒頭西田恒夫大使が歓迎と開会の挨拶を行った後、基調パネルディスカッション、3委員会の専門家パネルのコーディネーターによるディスカッション、引き続き潘事務総長による基調講演が行われました。午後も、二つの議題(核セキュリティー及び軍縮・不拡散に関する国際的な枠組みの強化、国連安保理決議の実施に関する課題)につき、出席者が少人数のグループに分かれ、率直な議論を行いました(会合の議題はこちら)。

潘事務総長は、基調講演において、今回の日本、ポーランド及びトルコ代表部のイニシャチブが時宜にかなったものであると歓迎するとともに、国連事務総長としてはじめて広島を訪問したことを触れつつ、軍縮・不拡散の問題をいかに重視しているか、様々な事例を挙げて強調しました。また、事務総長は、安保理が実施する制裁が不拡散の分野で重要な役割を果たしているかについても指摘しました。その上で、潘事務総長は、国連加盟国が核軍縮及び不拡散のために具体的な行動をとる必要がある旨呼びかけました。(潘事務総長の基調講演の全文(英文)はこちら。)

 

会合は、国連加盟国にとって関心の高い話題を扱ったこともあり、多くの代表部関係者が参加し、きわめて活発な雰囲気の中で議論が進められました。また、我が国のみならず、トルコ、ポーランドという、それぞれの地域において軍縮・不拡散分野の議論に真剣に取り組んでいる国々と協力して開催したことにより、多くの参加者の共感を得られたと考えられます(トルコとポーランドは、日本がオーストラリアと主導し、昨年9月の国連総会の際に発足させた、10カ国から構成される核軍縮・不拡散に関する外相会合のメンバーでもあります)。また、加盟国の政府関係者だけではなく、国連事務局、専門家パネルのメンバー、研究者、企業関係者等の参加を多数得たことにより、共通の問題について、各界の視点から、それぞれの観点から知見や経験が共有された点が有意義でした。

 

出席者の間ではまた、現在核軍縮を巡る議論は進んでいるものの、期待するスピードでは進んでおらず、少しでも具体的な成果を示していくことが重要である点や、不拡散の分野においては、北朝鮮やイランの問題をはじめ、事態は必ずしも好転しておらず、国際社会として共通の脅威に対応する枠組みを強化する必要があるとの認識が共有されました。我が国が重視する、北朝鮮やイランの核問題等に関し、専門家パネルのメンバーの参加を得て、具体的にどのような課題があるかにつき、率直な意見交換が行われ、各国関係者の認識が深められたことが有意義であったと言えます。また、大量破壊兵器の不拡散を効果的に実現するためにも、各国において専門家だけはなく、政治レベルでの関心を高め、あわせて企業等の民間関係者との協力を進める必要であるといった指摘も、多くの出席者からなされました。さらに、途上国を中心に、安保理決議の履行に関し、様々な困難に直面している際に、その能力向上(キャパシティー・ビルディング)を実施することが不可欠であり、そのためにも地域国際機関やIAEA等の専門的な知見を有する国際機関との連携が重要であるとの点が確認されました。加盟国代表部の出席者からは、こうした重要な課題について、日頃接する機会の少ない専門家と長時間にわたり、時間をかけて率直な意見交換ができたことを歓迎するとともに、日本がポーランド、トルコと協力して会合を開催したことを評価する意見が多く聞かれました。

 

会合の最後に、西田大使が、議論全体をとりまとめる形で閉会の挨拶を行いました。西田大使は、出席者の積極的な議論への参加に感謝するとともに、日本として軍縮・不拡散の分野において、今後も積極的な役割を果たしていく決意であること、そして国際社会が参加する最も普遍的な場であるニューヨークにおいて、我が国として、今回同様の会合を引き続き開催していく考えを表明しました。

 

 

 


会合にて発言する西田恒夫国連大使 

潘基文国連事務総長を歓迎する西田大使

潘基文事務総長による基調講演

西田大使、潘事務総長及び共催者のポーランド大使、トルコ大使

冒頭の基調パネルディスカッションにて挨拶する西田大使

不拡散に関する安保理下部3委員会の専門家メンバーによるパネルディスカッション

午後の個別ディスカッション(第1セッション)


午後の第1セッションの総括をする兒玉次席大使


会合終了に際し議論のとりまとめと閉会の辞を述べる西田大使

 

一部写真(上から1~4枚目及び6枚目)提供:

Mark McQueen