2013年

 
 

制裁及び軍縮・不拡散に関するセミナー(第4回)の開催

 

 

 

2013年1月18日

1月18日、ニューヨークのジャパン・ソサエティーにおいて、日本政府代表部が、ポーランド及びトルコ政府代表部との共催及びスチムソン・センター(ワシントンDCに所在する有力シンクタンクの一つ)と協力し、「フラットな世界における拡散の課題」というテーマで制裁及び軍縮・不拡散に関する1日がかりのセミナーを開催しました。

 

この会合は、2011年以降、日本政府代表部が開催した同様のセミナーに引き続き、第四回目を開催することとしたものです(これまでのセミナーの概要はこちら:2011年5月12月2012年5月)。当初のセミナーは、制裁及び軍縮・不拡散の全般的な課題や北朝鮮、イランの地域情勢に焦点を当てた課題を取り上げ、前回の会合では、特に通常兵器の不拡散に議論の主眼が置かれました。今回は、不拡散の支持者がグローバル化した世界でどんな課題を直面することを検討するために、制裁と大量破壊兵器及び通常兵器の不拡散の課題を取り上げました。(会合の議題(英文)はこちら)。

 

会合には、国連事務局(政務局及び軍縮部)関係者、1540委員会(大量破壊兵器の不拡散に関する委員会)、1718委員会(北朝鮮制裁委員会) 及び1737委員会(イラン制裁委員会)の業務を補佐する専門家パネルのメンバー、並びに米国内のシンクタンクの専門家、企業関係者、ジャーナリスト及び 55カ国以上の各国政府代表部の大使及び担当者等、合計約150名以上が参加し、活発な意見交換を行いました。会場は立ち見が出るほどで、出席者のこの問題に関する関心の高さがうかがえました。トルコとポーランドという国連における軍縮・不拡散の分野に積極的に関与している国と、日本が会合を共催したことも、多くの 出席者を得る一因になったとも言えます。日本が、トルコとポーランドという国連における軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)という、地域横断的グループに一緒に参加している国と会合を共催したことも、多くの 出席者を得る一因になったとも言えます。国連加盟国の出席者からの意見に加え、幅広い分野の知見を有するパネリストの出席を得ることにより、分野横断 的かつ示唆に富む議論を行うことが可能となりましたが、こうした議論は通常の国連の会合でもあまり見られないものとも言えます。

 

会議冒頭、主催者である西田恒夫大使に加え、ポーランド及びトルコ大使及びスチムソン・センター所長が開会の挨拶を行いました。(西田大使の開会の挨拶(英文)はこちら)。引き続き 第一セッションでは、シンクタンク及び国連の専門家グループのメンバーが、違法な武器の拡散が、人間の安全保障と経済発展に与える影響について議論しました。専門家は、大量破壊兵器と通常兵器の拡散の共通点や相違点につき指摘しまし た。とくに、出席者は物資の不法移転の2つの態様の違いがあるものの、通常兵器や他の密輸品の売買から得られる利益は、しばしば他の活動、特に秘密の核兵器や他の大量破壊兵器開発計画の資金調達のために使用されると指摘しました。パネリストと出席者との討論の場では、多くの出席者からは、深刻な資源の制約に直面している国のためにも、必要な調査と予防対策を実施する上で、情報を共有することの重要性を強調しました。この点につき、出席者からは、市民社会、シンクタンク及び民間企業が、武器、汎用品と技術の拡散を特定する上で、重要な役割を果たしている点が強調されました。

 

第二セッションにおいても、グローバル化した拡散の傾向が議論されましたが、議論の焦点は、制裁回避の具体的な手法と、違法な取引のパターンに当てられました。パネリストの1人は、企業が重要なパートナーであるとともに、最高の監視役となり得ると指摘し、政府が民間企業と協力を促進することが、企業からも良い反応を得ることができるであろうと述べました。また、他のパネリストは、グローバリゼーション進展に伴う、貨物の「コンテナ化(containerization)」が進むことにより、密輸業者が、より簡単に従来の税関当局による捜索を回避できるようになったと述べました。こうした新しい傾向に対するために、インテリジェンスに基づいている貨物の押収と輸送の阻止だけでなく、税関当局がリスク評価に基づき活動すべきであると述べました。パネリストはまた、不拡散を防止すべきという国際的なコンセンサスがある一方で、その実施手段について意見の違いがあり、特に制裁委員会とその専門家パネルがどこまで、強力な調査ができるかが引き続き課題であると指摘しました。複数のパネリストは、不拡散に関する長期的な政策目標を共有することの重要性を指摘しました。出席者からは、民間企業が法的な義務として求められている以上の措置を講じるためには、軍縮・不拡散の目的と産業界にとってのインセンティブを合致させる方法を考えなければいけないという点が指摘されました。

 

午後のセッションでは、アンゲラ・ケイン国連軍縮担当上級代表は、潘基文国連事務総長の名代として発言し、事務総長のメッセージを紹介しました(事務総長からのメッセージ(英文)はこちら)。国連事務総長からは、拡散によって引き起こされる大規模な社会的·経済的損失の大きさが指摘されると共に、通常兵器の貿易を規制するための国際的な法的枠組みの必要性が訴えられました。

基調講演は、フアン・ザラテ氏が行いました。ザラテ氏は、ワシントンDCのシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)のシニアアドバイザーと米国CBSテレビの安全保障問題のシニアアナリストで、米国政府で安全保障担当次席補佐官も務めていました。ザラテ氏は、不拡散に関連する問題の「生態系(ecosystem)」に取り組むため、活用すべき5つの創造的なアプローチを紹介しました。一番目は、制裁を回避する手段し、報告(及び制裁委員会への通報)を活発化することで、不拡散体制全体に対する説明責任を高めるという点です。二番目は特に拡散活動における、金融取引を注目することです。「カネの流れを追う」ことにより、拡散活動に結果的に関与する当事者を特定することにつながります。第三にザラテ氏は、国連の目的に資するために、既存の組織や団体を活用することが有意義であると述べました。四番目は、民間部門の役割を高め、中心的パートナーとして不拡散体制の強化において中心的な役割を与えることです。最後に、ザラテ氏は、産業界等に対して、明確な基準や承認制度設けることなどを通じ、関係者がこうした不拡散を巡る「生態系」に積極的に関与するためのインセンティブを見いだす必要があると述べました。

 

その後のパネルディスカッションでは、ザラテ氏のほかに、米国のサンディア国立研究所のリンドナー博士やインディアナ大学クロック研究所のロペス教授等が参加しました。パネリストは、国連の制裁委員会の専門家パネルと、民間部門や市民社会が相互に利益を得ることが出来る方法が何か検討しました。一人のパネリストは、技術の進歩の危険性や、不拡散に関連した科学的な防御策が、こうした技術の進歩や将来に適合するためには様々な課題や困難があることを指摘しました。その一方で、他のパネリストからは、従来はあまり存在しなかった、企業と人権団体の間の相互作用に注目し、これが民間部門と不拡散に従事する関係者の間の協力のモデルにもなり得ると示唆しました。

 

会合の最後に、共催者である日本、ポーランド、トルコの三カ国の大使が閉会の挨拶を行いました。西田大使からは、出席者の積極的な議論への参加に対し謝意を述べるとともに、不拡散のような多国間の脅威が市民社会と民間部門などの関係者の広い範囲を含まれる多面的な対応が必要であるとの点をあらためて強調しました。このセミナーを通じて、得られた出席者と国連関係者とのネットワークは、今年3月に予定される国連での武器貿易条約交渉会議にも役に立つと考えられます。西田大使から、このセミナーを通じ、出席者がお互いの作品の利益を得て、今後の実務や研究に役立つことを希望すると述べて、会合は閉幕しました。

 

今回の会合における議論のより詳細なまとめはこちらをご覧下さい。

 

過去3回の制裁及び軍縮・不拡散に関するセミナーの概要は以下をご参照下さい。

第1回 2011年5月31日
第2回 2011年12月5日
第3回 2012年5月21日


共催者のポーランド及びトルコ大使、協力者であるスチムソン・センター所長エレン・レイプソン氏と共に開催の挨拶を行う西田恒夫大使  


第一セッション。左からジョージ・A・ロペス教授、シーナ・C・グレイテンス氏、ジョナ・レフ氏、テレンス・テイラー氏


第二セッション。左から司会のブライアン・フィンレー氏、パネリストのデビッド・オールライト氏、マーティン・ウデン氏、ヒュー・グリフィス氏


パネリストによるディスカッション終了後、議論を行う各国外交官・専門家


国連事務総長からのメッセージを紹介するアンゲラ・ケイン国連軍縮担当上級代表。左からケイン氏、レイプソン氏、フアン・ザラテ氏、デュアン・リンドナー氏、西田大使


基調講演を行うフアン・ザラテ氏。不拡散問題に取り組むため、活用すべき5つの創造的なアプローチを紹介。


基調講演後のパネルディスカッション。国連の制裁委員会の専門家パネルと、民間部門や市民社会が協力する方法について議論されました。


閉会の挨拶をする西田国連大使


 

 

   

 

 




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