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第69回国連総会
パレスチナ問題(議題35)・中東情勢(議題36)(11月24日)
吉川大使ステートメント(骨子)
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1 冒頭
- 総会議長に謝辞。パレスチナ連帯記念日に際し、パレスチナ常駐オブザーバーに祝意を表する。
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2 中東和平
- イスラエル・パレスチナの直接交渉は4月に中断した。その後、7月~8月のガザ危機が続き、残念ながら直接交渉再開の見通しは立っていない。また、アルアクサー・コンパウンドに係わる緊張の高まりやNar Hofシナゴーグでの暴力行為等の最近の現地情勢の緊迫化を懸念。日本は、あらゆる暴力と侵害行為、及びその扇動行為を非難する。また、被害者及びその家族に対し、哀悼の意を表する。
- 日本は、ヨルダン政府による事態の沈静化に向けた努力を評価する。また、最近のケリー米国務長官のアンマン訪問の際にイスラエル、パレスチナ及びヨルダン首脳が事態の沈静化のため行動することに合意したことを歓迎するとともに、ネタニヤフ・イスラエル首相がアルアクサー・コンパウンドの現状維持を再確認したことを重視する。
- 6年間で3度目となる本年のガザ紛争は、2国家解決に基づく公正、永続的かつ包括的な和平実現の必要性を浮き彫りにした。イスラエルとパレスチナが一方的な措置を差し控え、相互の信頼を高めるよう取り組むことが重要。
- かかる観点から、最近のイスラエルによる西岸及び東エルサレムの土地収用は、国際法違反であるのみならず、2国家解決を目指す国際的な取り組みに逆行するものである。イスラエルに対し、国際法違反である入植活動を完全に凍結するよう呼びかける。
- パレスチナには、国民合意内閣が、(ア)イスラエルに対する暴力の放棄、(イ)イスラエルの承認、(ウ)過去の合意(所謂「カルテット三原則」)の遵守を堅持し、国民和解を進めていくことを期待し、交渉再開の妨げとなるような一方的行為を自制するよう呼びかける。
- 日本は、イスラエル・パレスチナ間の相互信頼の醸成を支援していく。先般(11月3日~6日)も、新たに就任した河野政府代表がイスラエル及びパレスチナを訪問し、双方に直接交渉の再会を呼びかけると共に、日本としても和平プロセスに貢献する用意があることを伝えた。
- 次世代の相互信頼を醸成することも重要である。今月初めには、イスラエル、パレスチナの青年10名を合同で日本に招聘した。日本政府が1997年より開始したこの事業で来日したイスラエル、パレスチナの青年の数は、合計約200名に上り、相互理解の促進及び日本の中東和平に対する取り組みの理解促進に繋がっている。
3 日本の対パレスチナ支援
(1)日本のガザ支援
- 日本は、10月12日にカイロで開催されたガザ復興支援会合で、8月に拠出済みの約780万ドルの緊急支援(国際機関、NGO経由)に加えて、2000万ドル以上の支援を行う旨を表明した。
- これらのコミットメントは、(紛争が続いた)従前の状態に戻るためではなく、持続的な停戦、平和的共及び繁栄に繋がるものでなくてはならない。かかる観点から、ガザの復興の為には、治安、人道支援、ガバナンスを柱とする支援メカニズムの構築が必要。日本は、イスラエル、パレスチナ、国連等と協力して、これを具体化させる用意がある。
(2)日本独自のイニシアチブ
- 2国家解決の実現を見据えた政治プロセスの下支えとして、パレスチナの経済基盤を強化することも重要である。かかる観点から、日本は、パレスチナでの民間投資の動員を図るべく、独自の貢献も行っている。
- その一例が「平和と繁栄の回廊」構想である。その旗艦事業ジェリコ市郊外の農産加工団地事業では、既に入居企業11社がテナント契約を交わしている。その内の1社は近く操業を開始する予定。 この事業は、パレスチナの農産加工品の輸出を促進するのみでなく、パレスチナ、イスラエル、ヨルダン間の信頼醸成にも資することが期待される。
- 日本は、東アジアの経済発展の経験や資源をパレスチナ支援に動員すべく、「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合」(CEAPAD)を立ち上げた。既にマレーシアやインドネシアと三角協力による各種人材育成を進めている。日本・インドネシアの共同提案により、明日採択される国連総会決議案「Peaceful Settlement of the question of Palestine」は、CEAPADの進展を歓迎している。
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4 結語
- 日本は、国連及び国際社会と協力しながら、中東和平の実現に向け、今後とも重要な役割を果たしていく考えである。
(了)