中東情勢に関する安保理公開討論(10月22日)
吉川元偉大使ステートメント
(要旨)
ステートメント本文(英文)はこちら
1 中東和平
(1)総論
●日本は、米国の仲介努力により、イスラエル・パレスチナ間の和平交渉が再開されたことを歓迎する。
(2)パレスチナ支援
●日本は、2国家解決による和平実現の環境作りとして、パレスチナの国造りを支援していく。その具体的な取り組みとして、「平和と繁栄の回廊」事業及び「CEAPAD(シーパッド)」について紹介する。
●「平和と繁栄の回廊」事業は、パレスチナ、イスラエル、ヨルダンとの域内協力を通じて、ヨルダン渓谷を開発するもの。これにより、パレスチナによる農産物の輸出が可能となり、西岸において雇用が創出されることが期待される。
その旗艦事業たるジェリコ市郊外の農産加工団地事業は、着実に進展している。7月末、岸田大臣の中東訪問時にジェリコで開催された4者閣僚級協議は、出席者間の信頼醸成の機会となるとともに、本件事業を推進していく重要性につき一致した。
日本としては、中東諸国をはじめとする各国の企業にこの事業に投資してほしいと考えている。また、ケリー米国務長官の発表した西岸及びガザ地区開発のビジネス拡大に関する計画も、地元の企業を後押しすることを狙いとするものであり、日本として支持する。
●「CEAPAD(シーパッド):パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合」は、本年2月に東京で立ち上げられたもので、東アジアの経済発展の経験や資源をパレスチナ支援に動員することを狙いとしている。来年初めにはインドネシアで第2回閣僚会合が開催される予定である。
●安保理が政治的側面だけでなく経済的なインセンティブについても考慮に入れることを期待する。
2 シリア情勢
(1)化学兵器
●日本は、安保理決議2118決議採択、安保理によるOPCW・国連共同ミッション設立承認を歓迎する。
●OPCWのノーベル平和賞受賞に祝意。日本は、米国に次ぐ第2位の分担金拠出国として、また、条約発効以来の執行理事国として、OPCWの活動に貢献。日本は、初代技術事務局査察局長として秋山少将を派遣した。
●安倍総理が表明したとおり、日本は、シリアの化学兵器処理のため、可能な限りの協力を行う。化学兵器廃棄のためのニーズの全体像や廃棄の実施体制のあり方などの情報を考慮し、具体的な協力内容の検討を進めたい。
(2)人道状況
●化学兵器廃棄プロセスの進展によっても、悲惨な人道状況や和平プロセスの進展の欠如から目をそらしてはならない。
●日本としては、155百万ドルの人道支援を実施していく。安倍総理の表明した追加支援60百万ドルにより、国際機関への支援、ヨルダン及びレバノンへのバイの支援、反政府勢力支配下にある地域への支援を行っていく。
(3)政治プロセス
●暴力を停止させ、政治解決を図るためには、ジュネーブ2会議の成功裡の開催が極めて重要。
●日本としては、ジュネーブ2会議に参加し、今後の貢献につなげていく用意がある。
(了)