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安保理公開討論「中東情勢」
2015年1月15日(木)
吉川大使ステートメント(骨子)
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1 中東和平
- 客年7月のガザ紛争は6年間で3度目であった。その後の現場の情勢悪化は、2国家解決に基づく公正、永続的かつ包括的な和平実現の必要性を改めて浮き彫りにした。
- 昨年10月にエジプト及びノルウェーが共催したガザ復興会議は、パレスチナ復興に対する国際社会の強いコミットメントを表した。日本は、右会議でプレッジした2000万ドルの支援を既に実施している。これらは、昨年3月に岸田外務大臣が発表した2億ドルの対パレスチナ支援の一環である。
- 明16日から、安倍総理は中東を訪問する。イスラエル及びパレスチナでは、安倍総理は、両当事者に対して和平交渉の再開を呼びかける。また、17日にカイロで実施する政策スピーチでは、中東の平和と繁栄に貢献する日本の決意を新たにする。
- 米国は中東和平交渉の再開に向けて多大な尽力を行っている。他方、昨今の情勢は、交渉再開の見通しを益々困難なものとしている。中東和平交渉は、当事者の交渉による合意を通じてのみ実現し得る。他方、このような膠着状態の中で、安保理が貢献できるよう取り組んだ加盟国の努力を歓迎し、評価する。今般、中東和平に向けて安保理として一致したメッセージを発出することが出来なかったが、日本としては、適切な形で、且つ必要に応じ、安保理が中東和平に建設的に寄与することを期待している。
- 他方、安保理を含む国際社会の支援は、イスラエル・パレスチナ間の直接交渉を代替するものではない。イスラエルとパレスチナ自らが交渉再開に向けた環境の醸成に努める必要がある。一方的措置や懲罰的措置は負の連鎖を生むのみ。右観点から、イスラエルに対しては、パリ議定書に基づき税還付を継続し、国際法違反である入植活動を完全に停止するよう呼びかける。また、パレスチナに対しては、交渉再開の妨げとなるような一方的措置を自制するよう呼びかける。
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2 日本の中長期的貢献
- 現地情勢は厳しいが、将来に向けた取り組みを怠ってはならない。2国家解決に向けた政治プロセスの下支えとして、相互信頼の醸成やパレスチナ経済の持続性実現に向けた努力を続ける必要がある。右観点から、日本は、中長期的な未来を見据えた独自の貢献を今後とも実施していく。
- 第1に、パレスチナが持続的経済を実現することは、2国家が平和と安全の中で共存する上での下支えとなる。日本は、「平和と繁栄の回廊」構想の下、ジェリコ農産加工団地事業を推進し、民間投資を促進。第2に、日本は、2013年以来、「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合」(CEAPAD)の下で、東アジアの経済発展の経験や資源をパレスチナ支援に動員している。第3に、日本は、相互信頼の重要性に鑑み、客年11月にイスラエル及びパレスチナ自治区から各々5名の将来を担う若手実務者を招待。これまで200名近くを招待し、相互信頼の醸成を支援してきた。
- 所謂「ISIL(イラク・レバントのイスラム国)」は、依然として中東地域のみならず、国際秩序に対する重大な脅威である。客年12月3日にブリュッセルで開催されたISIL対策外相級会合等を通じ、国際社会の連携が強化されていることを歓迎。
- ISILに対抗するためには、多面的かつ長期的な取組が重要である。日本は、人道支援、テロ対策能力強化、民生向上、外国人テロ戦闘員・資金の断絶など、非軍事面で貢献。
- ISILに対抗する上では、政治プロセスの促進も急務。右観点から、客年10月にイラクの組閣プロセスが完了したことを歓迎。シリアに関しては、12年6月のジュネーブ・コミュニケを通じた政治的解決が基本であるとの認識の下、デ・ミストゥーラ国連事務総長特使の取組を支持。関係各国が、「デ」特使の取組を支援することを期待。
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4 結語
- 日本は、中東地域の安定と繁栄の実現に独自且つ建設的な役割を果たせるとの認識の下、今後とも国連及び国際社会と協力していく考えである。
(了)