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「国際の平和と安全の維持:安全保障,開発及び紛争の根本要因」
(2015年11月17日)
南大使ステートメント骨子
1 冒頭
- 安保理が紛争の根本要因への対処に焦点を当てることを歓迎。安保理がその政治的重みを紛争予防・平和構築に活用し,時機を逸しない関与により大規模な行動が必要となる事態を回避することは,結局は国際社会全体のコストダウンと国連の効率化に繋がる。本年行われている各種レビューにおいても,紛争予防の重要性が指摘されている。
- 我が国は,PBCのアクティブなメンバーであり,明年からは安保理のメンバーとなる。安保理とPBCの効果的かつ現実的な連携強化は,紛争予防において特に重要。かかる観点から,議長が本日PBC議長を招請したことを歓迎。
2 『平和・安全』と『持続可能な開発』との連関に関する考察:「安保理は如何に平和・安全と開発とのsilosを埋めていけるか」,「平和と安全の維持のために,如何に開発アジェンダを考慮すべきか」,「安保理は,さらにどれくらい安全と開発のスペクトルに関する作業に関わっていくべきか」
- 平和・安全と持続可能な開発との連関は自明。持続可能な開発のための2030アジェンダは,平和・安全と持続可能な開発への統合的なアプローチを目指すもの。事実,SDGsゴール16が入っていることは画期的であり,サイロ・アプローチを廃すべし,というのが加盟国の共通認識である。実施に際しては、国連の主要機関それぞれが果たす役割がある。
- その中でも,やはり,国際の平和と安全を担う安保理の役割の重要性は強調し過ぎることはない。NYでの議論においては,安保理は時としてそのマンデートゆえに,他の政府間機関との関連性に注意を払わないことがあるのではないか。持続可能な開発と平和・安全の関係は明白である以上,安保理とPBCは言うに及ばず,議論のサイロ化を避け,総会,ECOSOC,High-Level Political Forum on Sustainable Development(HLPF),基金・プログラムの執行理事会,人権理などとの議論の整合性をとり,holisticに考える必要がある。長期の観点から対応すべき措置や,平和の基礎条件の整備については,各機関の利点を生かすべし。それが安保理の負担軽減に繋がる。安保理の方から各機関にリーチアウトすべきである。
- 現場においても,紛争予防により注意を傾けるべきである。このためには,国連カントリー・チームの役割が重要である。カントリー・チームの報告を受けた事務局が,積極的に安保理にブリーフィングを行い,安保理がメッセージを発出する,場合によっては現地にミニ・ミッションを派遣する等緊張の高まりの初期から関与していくことは,紛争予防の有効な手段。
- 紛争予防のためには,「制度構築」が極めて重要。この点,日本が議長を務めるPBC教訓作業部会では,本年まさに「制度構築(institution building)」の年間テーマの下,各国が直面する課題と教訓について焦点を当ててきた。このような作業を通じ,PBCは安保理が必ずしも扱わないところに目配りをし,補完的役割を果たすことができる。本年末までに活動報告を取りまとめ,本日のテーマに更なるインプットと貢献をしたい。
3 我が国の取組
- 我が国は,人間の安全保障をその考えの中心に据えている。これは,人間を開発の中心におき,保護と能力強化を通じて,紛争など多くのリスクから人々を守り,強化していくという考えである。このため,我が国は,「紛争予防・平和構築無償資金協力」の枠組み等を通じ,紛争予防から,紛争終結を促進するための支援,紛争後の平和の定着,紛争再発予防・復興,そして持続可能な開発支援まで,継ぎ目のない支援を実施してきている。
- 例えば,ソマリアについては,日本は,ソマリア自身の能力向上が喫緊の課題であるとの認識を国際社会と共有し,①基礎サービス改善,②治安能力向上,③国内経済活性化を3本柱としてソマリア支援に取り組んできている(2007年以降,約3億7100万ドルの支援を実施)。これは,当事国のオーナーシップと責任能力のある政府制度の構築を通じ,持続可能な平和と開発の両方の目的を達成しようというもの。
4 結語
- 日本は,積極的平和主義の旗印の下,引き続き国際社会とともに,紛争予防,平和構築,人道支援,開発支援にholisticなアプローチにて努力していく。