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北朝鮮人権状況に関するパネル・ディスカッション
加藤勝信拉致問題担当大臣によるスピーチ

 

平成28年12月1日(木)
国連本部(ニューヨーク)

 

 

アルメイダEU代表部大使、バード豪州代表部大使、キング特使、イ・ジョンフン大使、ご列席の皆様、

 

          本日は、各国外交団の皆様、有識者の皆様、そしてNY市民やプレスの皆様を前に、安倍政権の最重要課題である北朝鮮による日本人拉致問題について、日本政府を代表してお話させていただく機会を得て大変嬉しく思います。

 

          私は、本年5月にここ国連本部において、「北朝鮮の人権状況―人間性の回復に向けた戦略―」と題する国際シンポジウムを主催させて頂きました。本日はその際お世話になったパラム・プリート・シンさん、そして北朝鮮の人権問題に取り組むいわば「国際チーム」のレギュラー・メンバーであり、私の仲間でもあるキング特使やイ・ジョンフン大使とも再びご一緒することが出来、とても光栄に思います。

 

          さて、本日私に与えられたテーマは、北朝鮮による拉致問題です。COI報告書では、「外国からの拉致及び強制失踪」という独立の項目の中で、韓国、日本に加えて、レバノン、タイ、中国、マレーシア、シンガポール、ルーマニア等の諸外国の国民の拉致被害について、様々な事案が詳細に報告されています。また、COIは、「拉致及び強制失踪」を「人道に対する犯罪」に当たるとしています。

 

          日本政府は17名を北朝鮮による拉致被害者と認定している他、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない800を超える事案について、現在も警察当局が捜査を継続中です。これらを踏まえ、COIは、少なくとも100名の日本人が北朝鮮に拉致された可能性があると判断しています。北朝鮮による拉致問題は、当該国の主権及び国民の生命と安全を脅かす重大な問題です。同時に、拉致された方々の将来、御家族との大事な絆を断ち切る、人権上も人道上も許しがたい問題です。

 

          日本政府が拉致を認定した17名については、1970年代から80年代に日本の海岸や外国留学中などに拉致されました。2002年9月に小泉総理(当時)が訪朝して金正日国防委員長と会談した際、金正日委員長が日本人拉致を初めて認め、謝罪しました。金正日委員長が認めた生存者5名とその家族の帰国は実現しました。しかし、残りの被害者については、北朝鮮側は、死亡したと説明のあった被害者8名の内、2名については、別人の骨を被害者の「遺骨」として日本側に提出した上、未だに明確な証拠を示すことなく、8名が死亡、4名が未入境という主張を変えておらず、このような説明に日本側は全く納得していません。北朝鮮が死亡したと主張する被害者の中には、当時13歳の女子中学生で、下校途中に拉致された横田めぐみさんも含まれています。

 

          これまで、日本政府は北朝鮮に対し、拉致被害者の安全確保及び即時帰国、真相究明、拉致実行犯の引渡し等を一貫して要求してきました。その結果、北朝鮮は2014年5月の政府間協議で、拉致被害者を含むすべての日本人に関する調査に合意しました。しかしながら、この間、具体的な調査結果も示されず、拉致被害者の帰国は実現しておりません。他方で、北朝鮮は本年に入り、核実験や弾道ミサイルの発射を強行し、日本政府が制裁措置を決定すると、一方的に特別調査委員会の解体等を宣言するなど、拉致問題の解決に向けた具体的な進展がない状況が継続しており、日本政府として全く受け入れることはできません。

 

          11月30日に対北朝鮮制裁に係る安保理決議第2321号が採択されました。今回、北朝鮮に関する安保理決議として、初めて、主文において、北朝鮮にいる人々が受けている深刻な苦難に対し、深い懸念が表明されました。この決議が示すとおり、人権、核、ミサイルといった国際社会の共通の懸念に対する国際社会の声を無視して挑発行為を繰り返す北朝鮮に対しては、国際社会は緊密に連携して、断固たる対応が必要です。COI報告書にも明記されているとおり、北朝鮮による拉致被害は多数の国に及んでいます。拉致問題は、拉致被害者一人一人の将来を奪い去るものであり、基本的人権という人類普遍の価値を共有する国際社会全体に対する挑戦です。その解決には国際社会がスクラムを組んで対応していくことが重要です。

          今、この瞬間にも、北朝鮮において基本的人権を奪われ、過酷な環境の下、我々の救済を待っている多くの人々がいます。5月のシンポジウムで、横田めぐみさんの弟、拓也さんは、ヒトラーやミロシェビッチによる人権侵害を例に挙げながら、「過去の歴史に学び、自由を謳歌している人々は、自由を奪われ、救いを求めている人々を救出する義務と責任がある」と訴えました。幼少のころ、家族の中でヒマワリのような存在だった13歳のお姉さんを突然奪われた兄弟の訴えに、私の心は大きく揺さぶられました。

 

           北朝鮮で救いを求める人々にとって、またその家族にとって、もはや一日の猶予も許されません。基本的人権の尊重は、国連憲章や世界人権宣言などに明確に規定された人類共通の価値であり、国際社会はこれを積極的に擁護していかなければなりません。

 

          国際社会は、北朝鮮の「人道に対する犯罪」について責任追及を行うための強力な措置の一つとして国連安保理によるICCへの付託を重視しています。そのためには、安保理常任理事国の一致した対応が必要です。私はこの場を借りて、安保理常任理事国を含むすべての国連加盟国に対し、世界の如何なる場所においても人間の尊厳が確保されるよう、一致団結して臨むことを要請します。

 

          現在、ダルスマン前北朝鮮人権状況報告者の後を引き継いだ、キンタナ特別報告者が、「専門家グループ」とともに、北朝鮮の人権侵害に対する責任追及のための方策を検討しています。

 

          私は先週、キンタナ特別報告者と東京で面会し、日本政府の拉致問題に取り組む姿勢を説明するとともに、特別報告者や「専門家グループ」の活動を支援するため、如何なる努力も惜しまない旨を伝達しました。また、面会した拉致被害者御家族の悲痛な訴えは、キンタナさんや専門家のお二人に、拉致被害の悲惨さや被害者の救出が切迫した課題であることを理解いただく上で、十分雄弁に心に響いたものと確信しています。

 

          日本人の拉致被害者の帰国を実現するためには、日本政府自身が主体的に取り組むべきは当然です。日本政府は、これまで一貫して、2002年に日朝両首脳が署名した「日朝平壌宣言」に基づき、北朝鮮が拉致問題を含む人権、核、ミサイルといった諸問題に誠意をもって取り組むよう、粘り強く働きかけてきました。

日本政府は今後も、金正恩・国務委員長に「拉致問題を解決しなければ、北朝鮮がその未来を描くことはできない」という安倍総理の発言の真意を理解させ、全ての被害者を即刻帰還させる判断をさせるため、「対話と圧力」、「行動対行動」の原則の下、北朝鮮に対する国連安保理の決議等も梃として、対話を通じ北朝鮮から具体的な行動を引き出すべく、あらゆる施策を講じて参ります。

 

          北朝鮮を巡る情勢は極めて厳しいと言わざるを得ない状況です。しかしながら、私は拉致問題担当大臣として、いかなる些細な機会でも見出せるのであれば、これを事態打開のきっかけとして、北朝鮮で長年囚われの身になっている同胞を救い出すための道筋につなげていきたいと考えています。

 

          同時に、日本政府は、日本人などの拉致被害者だけでなく、過酷な状況に置かれている多くの北朝鮮市民の尊厳がしっかり確保されるよう、国連や本日ここにお集まりの国々と緊密に連携を図って参ります。人類共通の価値が地球上のいかなる場所においても享受されるよう、ともに力を合わせようではありませんか。ご清聴ありがとうございました。

 

 

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