3月20日(水)、ニューヨークのジャパン・ソサエティーにおいて、日本政府代表部がブラジル政府代表部及び国際平和研究所(IPI: International Peace Institute、ニューヨークに所在する有力シンクタンクの一つ)との共催で「国連PKOの施設部隊の進化する役割:その課題と可能性」というテーマでPKOに関するセミナーを開催しました。
本セミナーでは、特に2010年1月の地震後のハイチPKO(MINUSTAH)及び過去の東ティーモールPKO(UNMISET)の経験を基にその初期の平和構築に対する貢献に着目し、国連PKOの施設部隊の進化する役割について検証しました。さらに、本セミナーは、このような新たな役割を担う上で直面する具体的な課題や特筆すべき進展の実例を明らかにし、世界中の他のPKOミッションの施設部隊の活動に対する教訓を抽出しました。 (会合の議題(英文)はこちら)。
本セミナーには各国政府代表部や国連事務局からの出席者を含め約100名に及ぶPKOの専門家が参加しました。本セミナーがPKOの目下のテーマである「多機能型ミッションの初期の平和構築の役割」に着目しつつ、「施設部隊の進化する役割」という斬新かつ非常に興味深い視点を導入したことは、多くの参加者を得る要因となったと言えます。
冒頭、主催者である西田恒夫大使に加え、ヴィオッティ・ブラジル大使、ホージ・IPI上級顧問が開会の挨拶を行いました。(西田大使の開会の挨拶(英文)はこちら)。
続いて、エリアソン国連副事務総長による基調講演が行われました。副事務総長は、施設部隊の活動は持続的な平和と発展に大きな利益をもたらすものである点を指摘しつつ、初期の平和構築の重要性及び多次元の課題に対する全体的・包括的アプローチの必要性を強調、その中で施設部隊の活動は平和・開発・人権といった各次元を繋ぐ架け橋となることができる点を指摘しました。
第1パネルでは「施設部隊の新たな役割:平和構築及びその他支援の可能性」と題し、特にUNMISETとMINUSTAHの二つのミッションの経験を検証しました。本パネルはPKOの施設部隊の性質は進化・多様化してきているとし、施設部隊はPKOの「最も目に見える要素の一つ」となっている点を指摘しました。さらに本パネルは施設部隊の提供する利益として①PKOミッションの活動支援、②道路・橋の整備といった現地社会への社会・経済的便益の提供、③PKOミッションと現地住民との間の信頼醸成、④現場で紛争の根絶に向け活動する他の国連機関・NGO等の活動の支援の4点を指摘しました。
第2パネルは教訓と課題を議論し、特に、その課題として、施設部隊とミッションの他の機能との連携、UNカントリーチーム、現地NGO、ホスト国政府を含む現場の他のアクターとの連携、現場における要求と課題に対する連続的な適応、施設プロジェクトの優先順位付け等が議論されました。さらに本パネルは、平和構築支援は、当事国の機能を代替するのではなく、補完的かつ当事国の能力構築を行うものなければならない点を強調しつつ、PKOにおける施設プロジェクトは理想的には当事国に持続的な利益をもたらす観点から、当該国の労働力、専門性、技術により維持されていくべき旨が指摘されました。
今回のセミナーにおける議論のより詳細なまとめ(英文)はこちら、セミナーの動画はこちら(冒頭~第1パネル/第2パネル~最後)を御覧下さい。
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ヴィオッティ・ブラジル大使,ホージIPI上級顧問と共に開催の挨拶を行う西田恒夫大使

基調講演を行うエリアソン国連副事務総長

第一パネル:左から、田邊・自衛隊陸将、ネトー・ブラジル陸軍准将、ハク・国連フィールド支援局長、ボルゲス・東ティモール大使(議長)

第二パネル:左から、齋藤・PWJ事業部次長、ミュレ・国連PKO局長、オグウ・ナイジェリア大使(議長)、ウィジャクソノ・インドネシア陸軍少将、スミス・IPI研究員

セミナーに参加した約100名のPKO専門家
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