(1)国連の活動
ア 2011年は国内的には3月11日の東日本大震災が発生し、国外ではエジプト,リビア等でいわゆる「アラブの春」が発現し、国際社会の構図を大きく変えた一年となった。また同年は,我が国が2010年末をもって安保理非常任理事国を外れて初めての年であったが,我が国は国連加盟国の一つとして引き続き安保理の各種議題に関与するとともに,節目節目で様々なイベントを企画、実施し,我が国の国際の平和と安定への貢献をアピールすることができた。
イ 東日本大震災に関しては,潘基文事務総長及び国連職員並びに常駐代表をはじめとする各国代表部から、多くの心温まる支援と励ましの言葉が寄せられた。我が国は、これらの支援と励ましに対し心より感謝を表明しつつ、被災地の復旧・復興に努め協力していくことを伝えることに努めた。その一環として国連においては、2011年9月の国連総会の機会に野田総理大臣主催レセプションを開催した。また,原子力安全に対する国際社会の関心の高まりに応えるために,潘基文国連事務総長が主導して開催した「原子力安全及び核セキュリティに関するハイレベル会合」には,野田総理大臣が出席して、演説を行い、国際社会に向けて、原子力安全を強化するための政治的な決意を発信した。
ウ 激動の中東・北アフリカ情勢に関しては,国際社会の動きと歩調を併せつつ,これら地域における民主化を歓迎し,支援するという我が国のメッセージを遅滞なく発出するとともに,弾圧を続ける国家への経済制裁等の措置を発動し,国内外に向け断固とした姿勢を示した。
エ また,2011年は安保理改革について様々な活発な動きが見られた。2月のG4外相会合を受け,3月初頭から,双方議席の拡大と作業方法の改善を柱とした「短い決議案」の働きかけを行い,80か国近くの書面での支持を獲得した。また同決議案の動きを契機にイタリアやメキシコでの会議開催やダイス前総会議長による積極的な動きなどが見られた。9月の一般討論演説では,多くの国が安保理改革の必要性を訴え,11月8日に国連総会における審議,同14日の東京対話,同28日の政府間交渉第8ラウンドと安保理改革に関する行事が続いた。
オ アフリカの平和と安定の貢献として,我が国が12月20日に国連PKO南スーダンミッション(UNMISS)への陸上自衛隊施設部隊の派遣を閣議決定したことは,我が国のアフリカの平和と安定への貢献を示すものとして高く評価された。さらに軍縮・不拡散分野については,北朝鮮の核問題をはじめとする,大量破壊兵器の不拡散に関する国連安保理決議の効果的な実施を確保するために,国連加盟国の積極的な関与を促すためのセミナーを5月及び12月の2回にわたり開催した。このセミナーは,国連及び各国関係者から,複雑な制裁実施の実務的な側面をわかりやすく紹介し,各国の関心を高める上で効果的であったと評価された。10月には国連第一委員会の機会を活用し,非核特使による被爆体験の証言を実施した。あわせて国連と「平和のための詩」コンテストを開催し,核軍縮に対する国連関係者及び世論の喚起に努めた。
カ 1月よりUN Womenが正式に活動を開始、我が国もメンバーである執行理事会が戦略計画と予算を承認し、UN Womenの本格的活動への基礎が作られた。3月、東日本大震災の機会に、国連人道支援問題部(OCHA)は国連災害アセスメント調整(UNDAC)チームを我が国に派遣し、我が国の被災状況の国際的な発信を行うなど、国際的な援助調整の観点からの貢献を行った。
キ 北朝鮮人権状況決議は、12月の総会で過去最多の賛成123票を得て、2005年以来7年連続で採択された。また同月、我が国が伯と共に提出したボランティア国際年10周年決議が総会にて全会一致で採択された。同年前半には、人権理事会の作業及び機能に関するレビューが総会で行われた。
ク 行財政分野では、PKO予算については要員の経費引き上げ、及び2012-2013年の2カ年通常予算が議論の焦点となった。PKO要員の経費については、5月及び6月に開催された第5委員会においてPKO要員派遣国が大幅な引き上げを求めたことが議論のきっかけとなり、最終的に一度限りの補足的支払いや本件を議論するためのシニア・アドバイザリー・グループの立ち上げ等を内容とした合意が加盟国間で成立した。10月から12月の第5委員会で議論された2カ年予算については、事務総長が予算案の策定に際して対前2カ年予算からの3%削減を提案し、審議の結果、対前2カ年予算(実績値)比で約5%の削減を実現した。なお、国連予算が対前2カ年予算比で減少するのは、1998-1999年以来14年ぶりのことである。我が国としても、審議当初から事務総長の予算削減イニシアティヴへの支持を表明し、米や欧州の主要財政貢献国と協調し一貫して財政規律の強化を主張し、予算案の削減を実現した。
ケ 重点分野において我が国としての影響力を確保するため、また引き続き国際社会に積極的に貢献していくため、以下の主要選挙に立候補して当選した。
・女子差別撤廃委員会選挙(6月)
・自由権規約委員会選挙(9月)
・UN Women執行理事国選挙(11月)
・国際司法裁判所(ICJ)裁判官選挙(11月)
・国連国際法委員会(ILC)委員選挙(11月)
コ 経済・開発分野では、5月にトルコで開催された第4回国連後発開発途上国会議(LDC IV)への貢献、我が国提唱によるMDGsコンタクト・グループの開始等を通じて、日本の貢献を印象づけた。9月、一般討論演説の時期に合わせ、MDGs関連閣僚級非公式会合等が開催された。10月、経社理理事国選挙で再選を果たした。
(2)我が国と国連との関係
第66回国連総会等への出席のため野田総理大臣、玄葉外務大臣が国連を来訪した。また、潘基文国連事務総長は8月に訪日し(外務省賓客)、被災地である福島市及び相馬市を訪問し、被災者に対して日本語で連帯の意志を示すなど心のこもった対応により被災者をはじめ多くの日本国民が勇気づけられた。ナスル国連総会議長は、11月に訪日し(外務省賓客)、玄葉外務大臣、藤村官房長官及び与野党の国会議員との意見交換を行った。これらを通じて防災、安保理改革を含むグローバルな課題に関して日本と国連の連携を一層強化していくことが確認された。
|