1.安保理改革の必要性
(1) 国連加盟国の構成の変化
1945 年に、国連は 51 カ国で発足しましたが、旧植民地の独立や冷戦終結後の国家分裂等により、加盟国数は大幅に増加し、 2007 年現在、加盟国は 192 ヶ国に上っています。しかし、今日の安保理の構成は、 1965 年に非常任理事国数が国連発足当初の 6 カ国から 10 カ国に増えたのみで、常任理事国の数は国連発足時の 5 ヶ国から変わっていません。国連発足後 60 年以上が経過し、その間に大きな変化を遂げた国際社会の現実を安保理に十分に反映させ、国連加盟国に対する安保理の代表性等を高める形で改革を行う必要があります。
(2) 安保理の活動範囲の拡大と新たな脅威への対処
冷戦の終結以降、安保理は、国際の平和と安全の維持のため( 1 )制裁措置の決定、( 2 )多国籍軍の承認、( 3 )平和維持活動( PKO )の設立、( 4 )テロ対策委員会、不拡散に関する委員会の設立等、様々な手段をとるようになっています。 PKO についても停戦監視等を中心とした伝統的な活動(ゴラン高原、エチオピア・エリトリア等)から、民主的統治、復興等の平和構築を含む活動(カンボジア、東ティモール等)までその任務を拡大しています。また、大量破壊兵器の拡散、テロリズム等の新たな脅威に有効に対処するために安保理の機能強化が求められています。このように活動範囲が拡大し、かつ新たな課題に直面する安保理が効果的に行動するためには、必要な能力を有する国が、安保理の決定に常時関与するように安保理の構成を改革すべきであり、国連首脳会合( 2005 年 9 月)の成果文書においても、早期の安保理改革は国連改革における不可欠な要素であると確認されています。
(3) 「代表性の向上」と「実効性の向上」
安保理に現在の国際社会の構造を反映させ、加盟国からの信頼を得る、という意味での「代表性の向上」、そして、安保理の決定が加盟国によって着実に実施されるという意味での安保理の「実効性の向上」、との 2 つの側面から、安保理を拡大して国連を強化することが今日の国際社会にとって急務となっています。
2.我が国の取組
(1) 第59 回国連総会( 2004 年 9 月)
我が国は、第 59 回国連総会 一般討論演説において小泉総理(当時)自らが安保理改革の早期実現を強く訴えるとともに、日本がこれまで国際の平和と安全のために果たしてきた役割は、常任理事国となるにふさわしい確固たる基盤となるものであると表明しました。また、有力な常任理事国候補国であるブラジル、ドイツ及びインドと常任理事国入りに向けて相互支持を確認しました。
2005 年 3 月、アナン事務総長(当時)は報告書「より大きな自由を求めて」を公表しました。この報告書の中で、事務総長は事務総長の諮問機関として設置された「ハイレベル委員会」の報告書で示されたモデル A (常任 6 議席、非常任 3 議席の拡大)、モデル B (再選可能な 4 年任期の非常任 8 議席、現行非常任 1 議席の拡大)、あるいはいずれかのモデルを基礎とするその他の提案を、加盟国に対して検討するよう勧告しました。
これを受けて、日本は同年 7 月に、ブラジル、ドイツ及びインドと共に、モデル A の考え方と同じ流れを汲む、具体的な改革決議案( G4 決議案)を国連総会に提出しました。しかし、採択に必要な全加盟国の 3 分の 2 の支持を獲得する見込みを得られず、決議案は採択に付されるには至りませんでした。他方で、こうした取組により、安保理改革に向けた機運はかつてなく高まりました。
(2) 第60回国連総会( 2005 年 9 月~)
第 60 回国連総会では、各国の首脳が早期の安保理改革を国連改革の不可欠の要素として支持することを首脳会合成果文書で示しました。
我が国は、首脳会合において小泉総理(当時)が、過去 60 年間の国際情勢の劇的な変化及び平和を愛する国家としての我が国の発展と国際貢献を踏まえ、安保理常任理事国としてより大きな役割を果たす用意があると改めて表明し、改革の早期実現に向けた行動を呼びかけました。
(3) 第61回国連総会( 2006 年 9 月~)
第 61 回国連総会における一般討論演説では、大島国連大使(当時)が、安保理の代表性、透明性及び実効力を高める改革の必要性は、現実的かつ緊急の要請であり、加盟国は創造的で説得力ある新たな提案を必要としている旨発言しました。
2006 年 12 月、ハリーファ第 61 回国連総会議長の提案により、安保理改革を 5 つのテーマに分けてそれぞれの調整者( facilitator )が議論をまとめる「調整者プロセス( Facilitator Process )」が開始され、日本はこのプロセスに貢献する考えを表明しました。
調整者から総会議長への報告書は 2007 年 4 月 20 日に提出され、同年 5 月、安保理改革に関する作業部会( OEWG : Open-ended Working Group )が開催されました。日本からは大島大使(当時)が、安保理改革なくして国連改革はあり得ないという点を確認・強調するとともに、安保理改革の一般的な議論の段階は終わり、今や交渉の段階に移行すべき、我が国はこれまでも加盟国から幅広い支持を得られる案を見出すよう努力してきており、柔軟性をもって協議・交渉に参加していくと表明しました。
その後、新たに 2 名の調整役が任命され、 6 月 26 日に総会議長に報告書を提出しました。同報告書は、安保理改革の早期実現の重要性を確認しつつ、「中間的アプローチ( intermediary approach )」の提示など、国連加盟国に対して今後の検討材料を提供しています。
2007 年 7 月 19 日、安保理改革に関する作業部会( OEWG )の非公式会合が開催され、日本からは大島国連大使(当時)が、我が国は常任・非常任双方の議席の拡大を通じての早期改革の実現を引き続き目指すことを表明し、国連加盟国は次期国連総会会期中に行動し成果を出すべき旨呼びかけを行いました。
(4) 第62回国連総会( 2007 年 9 月~)
2007 年 9 月、第 62 回国連総会会期が始まり、日本からは、高村外務大臣が一般討論演説を行い、今会期中に、政府間交渉を通じ、具体的な成果を達成できるよう、すべての加盟国が協働しなければならないと表明しました。 11 月には、安保理改革に関する総会審議が行われ、日本からは高須国連大使が、今会期中に安保理改革について具体的な成果を出すことが必要であると強調し、政府間交渉に積極的かつ柔軟性をもって参加していく考えを表明しました
同年12月には、ケリム第62回国連総会議長により、3名の常駐代表からなるタスクフォースが任命され、現在、加盟国間で様々な協議が行われています。我が国は、常任・非常任双方の議席の拡大を通じた安保理改革の早期実現及び我が国の常任理事国入りを目指して、このような議論に積極的に参加しています。
国連改革
国連改革に関する主要な演説
3.資料
パンフレット「国連安全保障理事会と日本」
4.関連リンク
事務総長報告書「より大きな自由を求めて」
ハイレベル委員会報告書 |