国連安保理公開討論「飢饉と紛争に起因するグローバルな食料不安」における山田外務副大臣ステートメント
令和5年8月3日
1 冒頭発言
議長、
議長声明の発出を歓迎すると共に、議長及び米国チームの不断の取組と各理事国の建設的な努力を賞賛します。安保理が、紛争起因の食料不安を解決するための決意を声を一つに発出することは大変重要です。
議長、皆様、
紛争や気候変動により飢餓など食料不安に直面する人口が高水準で推移している現状について、深刻に懸念します。食料は人々が尊厳をもって生きるための基盤を成すものであり(ベーシック・ヒューマン・ニーズ)、いかなる時も武器化されるべきではないものです。
2 ロシアのウクライナ侵略
我々は紛争に起因した食料不安について毎日聞いています。ロシアによるウクライナ侵略後、ウクライナからの穀物輸出を実現し、世界の食料安全保障に貢献してきた黒海穀物イニシアティブが終了したことについて、日本は、ロシアによる参加終了の決定は極めて遺憾であり、これを非難します。また、ロシアは、ウクライナ国内のオデーサやドナウ河沿いの穀物貯蔵施設や積み出し拠点を攻撃し、多くの穀物が無駄になりました。一方で、ロシアは、自国がウクライナに代わりアフリカ諸国への食料供給を代替できると表明しました。自らウクライナの穀物を無駄にしながら、自国の輸出を増加させることは、食料を武器化する試みであり認められないものです。ロシアに対し、世界の食料安全保障の確保のためにもウクライナからの穀物輸出が再開されるように、国連が関与する国際的な枠組みに復帰することを強く要求します。また、日本は、ウクライナから穀物輸出を実現する EU の連帯レーンを引き続き支持していきます。
3 飢饉及び紛争起因の食料不安
議長、皆様、
国連及び国連安保理は、その影響力・連帯力を発揮しながら役割を果たしていくべきです。飢饉や紛争起因の食料不安への対処にあたっては、緊急食料支援などの短期的取組に加え、食料システムのレジリエンス強化など人間の安全保障の理念に立脚した中長期的な観点からの取組も必要です。また、食料不安の根本原因たる紛争を予防する取組も重要であり、人道・開発・平和の連携(ネクサス)によるアプローチを通じて包括的に対処し、将来的なニーズを減少することが有益であると考えられます。加えて、紛争下の脆弱な人々、特に女性や子どもたちの命をつなぐための支援を実現するためには、紛争当事者が国際人道法を遵守することが必要です。
4 日本の取組
議長、皆様、
食料安全保障と人道支援は日本のトッププライオリティです。日本は、これまでも飢餓撲滅や紛争の影響を受けた人たちへの人道含む様々な支援や国際協力を実施してきました。また、ロシアによるウクライナ侵略直後よりウクライナからの穀物輸送のため黒海での人道的通行の提案を行いました。本年5月には、日本は世界各地を代表する国とともに「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」を発出しました。これは、喫緊の課題への対処と中長期的に強靱な農業・食料システムの構築に向けたの包括的な指針になりえるものです。
5 北朝鮮
スピーチを終える前に、東アジア及びこれを超える地域における飢餓及び食料安全保障の欠如の問題について言及します。北朝鮮では多くの人が深刻な飢餓に苦しんでいると報じられています。その一方で、北朝鮮は、膨大な犠牲の下で北朝鮮の人々から決定的に必要な資源を流用して、不法な核・ミサイル開発に莫大な資源を費やしています。そして現在も、累次の国連安保理決議に違反して弾道ミサイル発射を繰り返し、東アジアの平和と安定を脅かしています。
議長、皆様、
この問題について国連安保理が具体的行動をとれていないことは極めて遺憾です。安保理はその長い沈黙を破り、一致した声で意味のあるステップを取らねばなりません。皆様のご理解とご賛同を求めます。ありがとうございました。