中国の日本へのステートメントに対する日本の立場について

令和7年11月24日
(仮訳)
2025年11月24日
アントニオ・グテーレス閣下
国際連合事務総長
ニューヨーク
 
閣下、
 
先日、中国常駐代表が、日本に関する書簡を貴事務総長に送り、これが全国連加盟国代表部に回付されました。同書簡における中国の主張は、事実に反し、根拠に欠けるものであることから、反論の筆を執らざるを得ず、本国からの指示に基づき本書簡をお送りいたします。
 
貴事務総長がよくご存じのとおり、日本は、戦後一貫して国際社会の平和と繁栄に貢献してきました。日本は、国連憲章を始めとした国際法を遵守し、国際社会における法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に取り組み続けてきました。
 
一方、残念ながら現代の世界において、一部の国々は、不透明な軍事力の拡張を長年にわたって継続しています。また、周辺国の反対にもかかわらず、力や威圧による一方的な現状変更の試みを続けている国もあります。
 
日本はこうした動きに反対し、一線を画しています。その上で、日本政府の防衛の基本的な方針は、中国の主張とは全く異なり、専守防衛という受動的な防衛戦略の姿勢です。日本は、国連憲章上認められている集団的自衛権について、さらに国内法により、それが行使できる状況を限定的に定義しています。中国側が指摘する高市総理の発言も、こうした一貫した立場に立脚するものです。したがって、武力攻撃が発生していないにもかかわらず日本が自衛権を行使するかの如き中国の主張は誤っています。
 
台湾に関する日本政府の基本的立場は、1972年の「日中共同声明」にあるとおりです。また、台湾海峡の平和と安定は、我が国はもとより、国際社会全体の安定にとっても極めて重要です。台湾をめぐる問題が、対話により平和的に解決されることを期待するというのが、我が国の従来から一貫した立場であることを改めて表明します。
 
最近、中国は日本との政治レベルの対話に消極的な姿勢を示し、本件とは本来関係のない二国間の人的・経済的交流や水産品の貿易を萎縮させています。自らの意に沿わない他国の発言や政策に対して、威圧的な措置を加えるこのようなアプローチは、国際社会が反対すべきものです。日本としては、懸案と課題があるからこそ、それらを減らし、理解と協力を増やしていくべきと考えており、引き続き、対話を通じて冷静に対応していく方針です。
 
日本は、国連におけるものを含め、アジア、中東、アフリカ、中南米諸国の諸情勢など、国際社会の複雑な課題に積極的に取り組んできました。日本は、責任ある国連加盟国として、国際法を遵守しつつ、国際の平和、安定、繁栄に貢献するという揺るぎない決意を改めて表明します。
 
本書簡を、冒頭の中国常駐代表発文書に対する日本政府の立場を示した、議題120「国連決議の実施」に関する公式文書として適切に回覧いただくようお願いします。
 
 
敬具
 
(署名)
山﨑和之
特命全権大使
国際連合日本政府常駐代表
 
cc. アナレーナ・ベアボック閣下
第80回国際連合総会議長