2002年

 
 

国連子ども特別総会における遠山文部科学大臣演説(仮訳)

2002年5月10日

議長、

私は、日本政府を代表して、本日、この場において、私たちの子どもたちのために発言する機会を与えられたことに、まず感謝したいと思います。

私は、21世紀はじめの特別総会のテーマとして「子ども」を選んだことは極めて正しい選択であったと思います。この選択は、新たな世紀を子どもたちによりよい世界とするための礎作りからはじめようという国際社会の強い意志と願いを反映したものです。

大人たちが真に子どもたちの幸せを願い、そのような社会の構築に尽力していたならば、この世の中はよりよいものとなっていたことでしょう。しかし、現実には、子どもたちの幸せはしばしば奪われています。これは、政治の不安定や戦乱、貧困、あるいは大人たちの快楽追求の結果なのです。

それ故に、私たちはこの特別総会の機会を通して、世界の子どもたちのために何が出来るのかをつぶさに考察し、行動に移すべきなのです。子どもたちこそ、私たちの未来の担い手であり、子どもたちにとってよりふさわしい世界の構築は私たち自身の未来のためでもあるからです。

先進国であれ、途上国であれ、大人たちは子どもたちのため最善を尽くす道義的義務と政治的責任を持っています。特に、経済力を有する先進国は、このような取組に重要な役割を担っています。

議長、

我が国は、今回の特別総会の4つの主要分野、即ち、教育、保護、保健、エイズの分野で子どもたちの為に積極的な努力を行ってきました。

第一に、教育を受けることは子どもたちの権利です。教育は、子どもたちの潜在的な能力の開発を促し、自らの努力によって貧困や苦しみから脱却することを可能にします。また、教育は未来の地球市民の育成につながります。この際特に重要なのは、女児が男児と同様の教育を受けられるようにすることです。

我が国は、教育を国づくりと戦後の復興の基盤としてきました。この我が国の経験は、今まさに開発の道のりをたどっている各国の国づくりのために参考となり得るものと確信しています。我が国は、教育分野において、これまで蓄積してきた教育についての諸経験を活用し、一切の偏見や独断を排し、ひたすら善意に基づく「日本の心」が見える協力を進めていきたいと思います。

子どもたちへの教育は、紛争終結地域であっても、一日たりとも休むことのできないものです。私は、先月訪日されたアフガニスタン暫定政権のアミン教育大臣と、教育分野における支援の可能性について意見交換を行い、教育の再開と正常化が同国の真の復興と平和の維持に不可欠であることを改めて認識しました。

第二に、私がここで強調したいのは、子どもたちの搾取は人類自らの未来の搾取に等しいということです。

我が国は、昨年12月、UNICEF及び2つの国際NGOとの共催により、横浜において「第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」、いわゆる「横浜会議」、を開催しました。私は、同会議における「横浜グローバル・コミットメント2001」の採択により、児童の商業的性的搾取の根絶に向けた取組みを強化していくという国際社会の強い決意が示されたことを誇りに思います。私たちは、今、横浜でのこの決意を実行に移すべきです。

我が国としても、近年深刻な社会問題となっている児童虐待や児童買春の問題に真摯な取り組みを進めています。先ず、1999年11月に「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が施行されました。また、2000年11月に「児童虐待の防止等に関する法律」を施行し、児童虐待の予防、児童の保護など、総合的な対策を積極的に進めています。

更に、日本は児童の権利条約、就業の最低年齢に関するILO第138号条約、そして、最悪の形態の児童労働の撤廃に関するILO第182号条約を批准しています。これに加え、私は、本日、我が国が児童の権利に関する条約の2本の選択議定書へ署名したことをここでお伝えできることを喜ばしく思います。

第三に、議長、子どもが心身共に健康である為には、子どもに対して基礎的な保健サーヴィスを提供していくことが重要です。

この分野で日本は、早くから途上国に対する協力を進めてきました。2000年には「沖縄感染症対策イニシアティヴ」を打ち出し、5年間で30億ドルを目途として途上国におけるエイズ、結核、マラリアなどへの対策を支援しています。また、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の設立のために、我が国は2億ドルを拠出し、副議長に就任するなど主導的役割を果たしてゆく所存です。

更に、我が国はUNICEFとの協力の下、1993年以降、ポリオ根絶のため2億3千万ドル以上の協力も行っています。私は、2000年に西太平洋地域がポリオ根絶地域に宣言されたことを喜ばしく思います。

議長、

我が国は、この特総の成果を十分に踏まえ、政府、国際機関のみならず、NGO、企業、メディア等の市民社会と協力して、世界の子どもたちを引き続き支援していきたいと思います。韓国大統領夫人がそのステートメントで述べられたとおり、この特別総会の直後に、2002年世界ワールドカップ・サッカー大会が日韓両国で開催されます。この大会は世界のこどもたちの幸福に捧げられています。我が国では、政府開発援助において、草の根無償資金協力やNGO事業補助金により、基礎生活分野等で草の根レベルでの協力を行っているNGOや地方公共団体等に支援を行い、市民社会との協力を進めています。更に、我が国は、民間団体が行う子どもたちの体験活動や読書活動等を支援するため、昨年度に「子どもゆめ基金」を創設しました。

議長、

子どもたちは、この世界に生まれ出るとき、必ずしも同じ条件の下に生まれてくるわけではありません。私たちは、この世界を、私たちの夢と希望であり、国境を越えた人類共通の財産である子どもたちがそのもてる可能性をのびやかに発揮できるようなものにしなければなりません。

「未来への使者」であり、「未来の創造者」である子どもたちの幸福のため、私たちは共に考え、働こうではありませんか。

ご静聴有り難うございました。

   
td>

2002年

   

国連子ども特別総会における遠山文部科学大臣演説(仮訳)

2002年5月10日

議長、

私は、日本政府を代表して、本日、この場において、私たちの子どもたちのために発言する機会を与えられたことに、まず感謝したいと思います。

私は、21世紀はじめの特別総会のテーマとして「子ども」を選んだことは極めて正しい選択であったと思います。この選択は、新たな世紀を子どもたちによりよい世界とするための礎作りからはじめようという国際社会の強い意志と願いを反映したものです。

大人たちが真に子どもたちの幸せを願い、そのような社会の構築に尽力していたならば、この世の中はよりよいものとなっていたことでしょう。しかし、現実には、子どもたちの幸せはしばしば奪われています。これは、政治の不安定や戦乱、貧困、あるいは大人たちの快楽追求の結果なのです。

それ故に、私たちはこの特別総会の機会を通して、世界の子どもたちのために何が出来るのかをつぶさに考察し、行動に移すべきなのです。子どもたちこそ、私たちの未来の担い手であり、子どもたちにとってよりふさわしい世界の構築は私たち自身の未来のためでもあるからです。

先進国であれ、途上国であれ、大人たちは子どもたちのため最善を尽くす道義的義務と政治的責任を持っています。特に、経済力を有する先進国は、このような取組に重要な役割を担っています。

議長、

我が国は、今回の特別総会の4つの主要分野、即ち、教育、保護、保健、エイズの分野で子どもたちの為に積極的な努力を行ってきました。

第一に、教育を受けることは子どもたちの権利です。教育は、子どもたちの潜在的な能力の開発を促し、自らの努力によって貧困や苦しみから脱却することを可能にします。また、教育は未来の地球市民の育成につながります。この際特に重要なのは、女児が男児と同様の教育を受けられるようにすることです。

我が国は、教育を国づくりと戦後の復興の基盤としてきました。この我が国の経験は、今まさに開発の道のりをたどっている各国の国づくりのために参考となり得るものと確信しています。我が国は、教育分野において、これまで蓄積してきた教育についての諸経験を活用し、一切の偏見や独断を排し、ひたすら善意に基づく「日本の心」が見える協力を進めていきたいと思います。

子どもたちへの教育は、紛争終結地域であっても、一日たりとも休むことのできないものです。私は、先月訪日されたアフガニスタン暫定政権のアミン教育大臣と、教育分野における支援の可能性について意見交換を行い、教育の再開と正常化が同国の真の復興と平和の維持に不可欠であることを改めて認識しました。

第二に、私がここで強調したいのは、子どもたちの搾取は人類自らの未来の搾取に等しいということです。

我が国は、昨年12月、UNICEF及び2つの国際NGOとの共催により、横浜において「第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」、いわゆる「横浜会議」、を開催しました。私は、同会議における「横浜グローバル・コミットメント2001」の採択により、児童の商業的性的搾取の根絶に向けた取組みを強化していくという国際社会の強い決意が示されたことを誇りに思います。私たちは、今、横浜でのこの決意を実行に移すべきです。

我が国としても、近年深刻な社会問題となっている児童虐待や児童買春の問題に真摯な取り組みを進めています。先ず、1999年11月に「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」が施行されました。また、2000年11月に「児童虐待の防止等に関する法律」を施行し、児童虐待の予防、児童の保護など、総合的な対策を積極的に進めています。

更に、日本は児童の権利条約、就業の最低年齢に関するILO第138号条約、そして、最悪の形態の児童労働の撤廃に関するILO第182号条約を批准しています。これに加え、私は、本日、我が国が児童の権利に関する条約の2本の選択議定書へ署名したことをここでお伝えできることを喜ばしく思います。

第三に、議長、子どもが心身共に健康である為には、子どもに対して基礎的な保健サーヴィスを提供していくことが重要です。

この分野で日本は、早くから途上国に対する協力を進めてきました。2000年には「沖縄感染症対策イニシアティヴ」を打ち出し、5年間で30億ドルを目途として途上国におけるエイズ、結核、マラリアなどへの対策を支援しています。また、世界エイズ・結核・マラリア対策基金の設立のために、我が国は2億ドルを拠出し、副議長に就任するなど主導的役割を果たしてゆく所存です。

更に、我が国はUNICEFとの協力の下、1993年以降、ポリオ根絶のため2億3千万ドル以上の協力も行っています。私は、2000年に西太平洋地域がポリオ根絶地域に宣言されたことを喜ばしく思います。

議長、

我が国は、この特総の成果を十分に踏まえ、政府、国際機関のみならず、NGO、企業、メディア等の市民社会と協力して、世界の子どもたちを引き続き支援していきたいと思います。韓国大統領夫人がそのステートメントで述べられたとおり、この特別総会の直後に、2002年世界ワールドカップ・サッカー大会が日韓両国で開催されます。この大会は世界のこどもたちの幸福に捧げられています。我が国では、政府開発援助において、草の根無償資金協力やNGO事業補助金により、基礎生活分野等で草の根レベルでの協力を行っているNGOや地方公共団体等に支援を行い、市民社会との協力を進めています。更に、我が国は、民間団体が行う子どもたちの体験活動や読書活動等を支援するため、昨年度に「子どもゆめ基金」を創設しました。

議長、

子どもたちは、この世界に生まれ出るとき、必ずしも同じ条件の下に生まれてくるわけではありません。私たちは、この世界を、私たちの夢と希望であり、国境を越えた人類共通の財産である子どもたちがそのもてる可能性をのびやかに発揮できるようなものにしなければなりません。

「未来への使者」であり、「未来の創造者」である子どもたちの幸福のため、私たちは共に考え、働こうではありませんか。

ご静聴有り難うございました。