第38回人口開発委員会における須永公使ステートメント(仮訳)
2005年4月4日
国際連合日本政府代表部
議長、
この重要な委員会の議長への就任を祝福いたします。また、我々の討議のために優れた報告書を作成された事務局の方々に謝意を表します。
本年はミレニアム宣言及びミレニアム開発目標(MDGs)に対する国際社会のこれまでの取り組みをレビューし、それらの目標達成に向けた今後の道筋を決める年です。従って今、国際人口開発会議(ICPD)「行動計画」実施の進捗状況について討議を行うことは、誠に時宜を得たものです。
MDGsの8つの目標のうちの4つ、つまり、「普遍的初等教育の達成」、「乳幼児死亡率の低減」、「妊産婦の健康の改善」、「HIV/AIDS、結核、マラリア等の感染症の克服」は、ICPD「行動計画」と直接関連しています。MDGsの達成のために同「行動計画」の完全実施が不可欠であることは明白です。それらの目標達成のために、本委員会のメンバー国や、UNFPAをはじめとする国際機関は、あらゆる努力を続けていかねばなりません。
議長、
現在、HIV/AIDSは人類の生活と尊厳に対する最も深刻な脅威の1つです。事務総長報告が示すように、HIV/AIDSは全般的な経済社会発展にも、世界の死亡率、人口増加、孤児数にも深刻な悪影響を与えます。また、HIV/AIDSは労働力を弱体化させ、若者が経済社会活動に従事することを妨げます。今や、HIV/AIDSは世界全体の安全保障に対する脅威と言えます。
本年2月、我が国は新たなODA中期政策を発表しました。この中で、我々は「人間の安全保障」の概念を強調しつつ、「個人」に焦点をあてるとともに、HIV/AIDSと貧困の悪循環を打破するための分野横断的なアプローチの必要性を訴えました。
我が国が感染症対策に向けて取ってきたアプローチは、我が国自身の経験を踏まえたものです。我が国は、基礎的保健医療への普遍的アクセスから、水、公衆衛生までの幅広い取り組みを実施してきました。こうした取り組みが奏功し、現在我が国は世界一の長寿国となりました。
議長、
我が国は、HIV/AIDSとの闘いのために必要な以下の3点を強調したいと思います。
まず第1に、患者に対する治療と同時に、予防に取り組まなくてはなりません。主に若年層を対象とした情報提供と教育プログラム、自発的なカウンセリングと検査、母子感染の予防等といった包括的かつ現実的な対策が促進される必要があります。また、近年女性の新規感染者数が男性を上回りつつあることを踏まえれば、女性と少女のための予防対策が加速される必要があります。こうしたことから、HIV/AIDS及びその他性感染症の予防を含むリプロダクティブ・ヘルス・ケアの重要性は、より強調されて然るべきです。
第2に、HIV/AIDS患者及びその家族に対するケアとサポートが強化されることが必要です。エイズ遺児を含む弱い立場におかれた子供達の保護とケアは喫緊の課題です。また、HIV/AIDSによる偏見や社会的差別の解消も欠かせません。
第3に、開発途上国において、適切な基礎的保健医療システムの整備が必要です。
議長、
これら3点を踏まえ、我が国政府はHIV/AIDSを含む感染症を克服するため、開発途上国への資金面、技術面での援助を行ってきました。2000年のG8九州・沖縄サミットでは「沖縄感染症対策イニシアティブ」を発表し、5年間(2000年~2004年)で総額30億ドルを目処とする援助を行うことを約束しました。更に我が国は、新たな官民パートナーシップである「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」の設立を主導し、これまでに約3億2800万ドルを拠出しました。
また先月、開発途上国におけるジェンダーの平等と女性の能力強化の促進に向けた努力を強化するため、日本政府は新たに「ジェンダーと開発」イニシアティブを発表しました。このイニシアティブの下で、我々はHIV/AIDSの悪影響を特に強く受けやすい女性や少女特有のニーズを踏まえた取り組みを行い、HIV/AIDSに対する女性の脆弱性の解消のために努力していきます。
議長、
最後に、我が国はHIV/AIDS、人口、開発の問題に関連する持続可能な取り組みを追求していくとの姿勢を再確認します。我が国は、国際社会のパートナーとその経験や知見を分かち合い、持続可能かつ現実的なアプローチについての議論に積極的に貢献していくと共に、今後もこの深刻な危機に対する幅広い対策を実施するよう努力していく所存です。
ご清聴有り難うございました。(了)
|