第58回国連総会第四委員会PKO特別委員会における小澤大使ステートメント(仮訳)
2004年3月29日
議長、
PKOは、紛争解決に向けての有用な選択肢です。日本は、PKOに対し、これまで要員の提供、資金援助、物資協力などの直接的な形で積極的に協力を行うとともに、間接的な形においても、和平プロセスの推進や平和構築活動に従事することにより貢献を行ってきました。
いま、PKOはアフリカを中心に拡大を続けており、2004年には、要員数は6万名を越え、その経費も30数億ドルになると見込まれています。本日午前のジャンマリー・ゲエノ国連PKO局長の発言においては、あり得る要員数として7万名という数字が言及されています。これらの数字が示すように、PKOは過去最大規模の活動になりつつあります。
事務総長報告及びゲエノ局長の発言の双方とも、このPKOの拡大問題を取り上げています。事務総長報告は、「国連の強化された平和活動能力が試される」と指摘した上で、このようなPKOの拡大について、メンバー国が協力の用意があるかと問うています。我が国は、この質問の背景にある懸念を十分に理解いたします。また、我が国としては、我が国が意思決定に参加できないPKO新設に伴う予算の急増に重大な懸念があります。PKOに対する資源は無限ではなく、今後のPKOの拡大により、人的・資金的なリソースの手当てが大きな問題となってくると考えております。
議長、
昨年はリベリアで大型PKOが設立され、今年もコートジボアールで大規模なPKOがスタートすることとなっている他、ブルンジ、ハイチ及びスーダンにおいて新たなPKO設立の可能性があります。我が国として、PKOの重要性に係る認識、或いは活動への協力の姿勢に変わりはありませんが、活動の経費の約20%を負担する国として、新たなPKOが設立される場合には、その必要性、計画の適切性、出口戦略につき納得の行く説明を得ることが国民の理解を得る上で必要と考えています。また、各PKO設立後も、地域ミッションの相乗作用拡大による経費節減を含め、活動が効果的・効率的に行われるように恒常的な見直しが必要であり、各ミッションに与えられたマンデートの達成度合いに応じて活動の段階的な縮小が適切に行われる必要があります。この点に関しては、東チモールでの活動はモデルとすべきものであると考えます。
議長、
事務総長報告は、PKOが抱える諸問題を取り上げていますが、日本としては、特に2つの問題に関心を有しています。
まず、地域・準地域機関と国連の役割について取り上げたいと考えます。ブルンディ、コートジボワール、リベリアで平和に向けたAUやECOWASの努力が見られましたが、これは大いに賞賛されるべきことです。実際、これら地域・準地域機関が能力を向上させることを支援することは、これらの機関のみならず、域内の信頼醸成、国際社会の平和と安定に資するものです。
同時に、国連と地域・準地域機関との関係についてさらに議論が行われるべきかと考えます。地域・準地域機関の能力の一層の向上が図られる中で、国連が地域・準地域機関の活動を引き受けるあり方について、具体的な活動に則しつつ議論を行う必要があると思われます。
二番目の課題は、要員の安全確保についてであります。日本はこれまで安全問題を重視し、要員安全条約には率先して加入し、或いはこれをテーマとしたセミナーを開催するなど、問題の改善のために努力してきました。いわゆる9・11以降、特に昨年のバグダッドの国連本部爆破事件に象徴されるように、安全問題の本質が大きく変化してきています。日本としては、要員安全の向上のために引き続きPKO局や安全調整官と協力していく用意があります。同時に、安全確保に係る能力向上といった観点だけでなく、国連のPKOが、その普遍的な目的や規律の行き届いた行動により、受け入れ国のあらゆる人々からその存在を望まれ、また、尊敬され、その結果として攻撃の対象とならないようにするためには如何にすべきか、国連・加盟国双方が真剣に考えていく必要があると思います。
議長、
来年はブラヒミ報告後5年目にあたります。昨年のPKO特別委員会において、ブラヒミ報告の実施状況に関し独立したレビューを行い、来年の総会に報告するよう求めたところであります。我が国としても、ブラヒミ勧告がどのようにフォローアップされてきたかには強い関心を有しており、実施状況を注意して見守ってきました。ブラヒミ報告の主要な勧告につき、一連の事務総長報告などを基に実施状況をとりまとめたメモを委員会に提出しますので、今後行われるレビューの参考にしていただければ幸いです。また、ブラヒミ勧告のレビューを当委員会が取り上げる際には、PKOに対する資源のPKOを取り巻く最近の環境の変化も考慮に入れ、また、事務総長のハイレベル・パネルの問題意識・議論も参考にすべきと考えます。日本は、本件に関する議論に積極的に参加したいと考えます。
議長、
我が国は、平和維持という重要な問題を審議する本委員会を極めて重視しており、積極的に貢献する用意があることを改めて強調し、私の発言を終えたいと思います。有り難うございました。
|