2005年

 
 

第60回国連総会第5委員会における
議題67「児童の権利の保護と促進」
大谷美紀子政府代表代理によるステートメント(仮訳)


平成17年10月17日
国際連合日本政府代表部

議長、

我が国は、子どもたちにふさわしい世界を創ることは、2000年のミレニアム・サミットで誓った決意を達成する上での重要なステップであると認識しています。3年前の国連子ども特総で採択された行動計画が掲げる4つの目標分野-健康な生活の促進、質の高い教育の提供、虐待・搾取・暴力からの保護、 HIV/AIDS との闘い-は、子どもたちが平和・尊厳そして自由の下で生活することができる環境を作る上で重要です。

議長、

これらの各分野において多くの進展が見られる一方で、幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべき子どもたちが未だに暴力の犠牲者となっていることは胸が痛む事実です。このステートメントでは、児童のトラフィキング、紛争下の児童、自然災害に関する、児童の権利の促進と保護に関連した我々の取組を紹介したいと思います。これらの問題の全ては、子どもたちが受けている苦しみの直接的な原因となるものです。

子ども、特に女児に対する性的虐待や搾取及びトラフィキングは、子どもに対する暴力であるとともに、人権侵害でもあります。この分野における児童の権利条約の効果的な実施を保障するために、我が国は国内的・国際的な取組を行っています。まず、1999年には児童ポルノ禁止法が制定され、翌2000年には児童の商業的制的搾取に対する国内行動計画が策定されました。同年12月には、横浜で第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議を開催しました。さらに、2003年12月には出会い系サイト規制法が発効しました。右規正法は、インターネットを利用した児童買春の問題に取り組むためのものです。また、咋2004年には、児童虐待防止法及び児童福祉法改正が発効しました。これらは、性的搾取を含む児童の虐待に対する諸取組をより良く調整するよう改正されたものです。最後になりますが、我が国は本年1月に児童の売買等に関する児童の権利条約選択議定書を批准しました。

我が国の包括的なトラフィッキング対策の一環として、人身売買行為を犯罪化する刑法改正を含む一連の法・規制改正が国会前会期で承認されました。この分野における我が国の国際協力としては、フィリピン、ルーマニア及びコロンビアなど8カ国への政府代表団の訪問、宗教・信仰団体との協力、人間の安全保障基金を通じた予防・保護プログラムへの支援などがあります。後者で支援を行なっているプログラムとしては、ラオスにおける「女子トラフィッキング防止のための女子教育及びコミュニティ開発」、カンボジア及びベトナムにおける「児童及び女性のトラフィッキングのコミュニティ・レベルでの防止」、南アフリカにおける「思春期女子とトラフィッキングと HIV/AIDS に対する対応能力の強化」などがあります。

議長、

紛争に巻き込まれた児童は、暴力に対して特に脆弱です。子どもたちは保護が必要としており、我々はそれを提供する倫理的・法的な義務を負っています。従って、紛争下の児童に関する監視・報告メカニズムを設置することを決め、その早期実施を求めている安保理決議1612を歓迎します。また、2005年首脳会合成果文書でも再確認された本件に関する決意を実施するために、具体的な取組を行っていく必要があります。

ここで再び、我が国が強く支持している人間の安全保障の概念に言及したいと思います。我が国が考える人間の安全保障とは、個々人の保護と彼/彼女らのエンパワメントの促進です。児童の権利条約にも明記されているとおり、児童が社会において個人として生活するためには十分な準備が整えられなければなりません。それを可能とするためには、児童は保護と支援を必要としており、我々がそれを提供することによって子どもたちは自分の能力を完全に伸ばすことができるのです。

3月に発表されたアフリカにおける平和の定着緊急支援は、この考えに基づいています。我が国は、右支援の下で、被害を受けたコミュニティとそこに住む児童の基本的ニーズを満たすことを目的として、シエラレオネ及びルワンダにおけるコミュニティの復興支援及び北部ウガンダにおける国内避難民の支援を行なう UNICEF のプロジェクトに拠出金を提供しました。

また我が国は、スーダンにおける平和の定着を支援するために緊急無償を資金協力の実施を決定しました。このうち4分の1は UNICEF に提供され、同国南部において小学校100校、800教室を建設するとともに、教科書35万セットを供与するプロジェクトの実施に当てられています。また我が国は、児童の保護のためには家族の強化が不可欠であると信じます。従って、人間の安全保障基金を通じて、コンゴ民主共和国における「紛争・経済危機の被害を受けた家庭の支援体制作り」というプロジェクトへも支援を提供しています。

議長、

自然災害時には、児童はさらに脆弱です。スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害により深刻な被害を受けた若者たちを支援するために、我が国は、 NGO や他の関連の機関との調整の下で、人身売買対策措置を含む児童の保護、感染症対策を含む児童の生存に焦点を当てた「津波被災子ども支援プラン」を実施しています。我が国は、右目的のために提供した総額2億5千万ドルの緊急支援のうち8600万ドルを UNICEF 、 IOM 、 UN-HABITAT 及び WHO などの国際機関を通じた支援に当てました。さらに我が国は、最近パキスタンで発生した地震被害救済のために、2千万ドルの無償資金の提供を決定し、そのうち800万ドルについては国際機関を通じた支援に当てられることが検討されています。

議長、

最後に、子どもたちに相応しい世界を創ること、そして、子どもたちが平和・尊厳・自由の下で生きることができる環境を整えることに対する我が国の固い決意を繰り返し強調したいと思います。右を達成しなければ、子どもたちが、自分たち自身そして社会の福利に可能な限り貢献することができる健康な大人に成長する機会を得ることはできないと考えます。

ありがとうございました。