2005年

 
 

事務総長報告に関する総会公式審議における大島賢三大使ステートメント(仮訳)

2005年4月7日
国際連合日本政府代表部

議長、

 我々は、事務総長報告「より大きな自由を求めて」を受けて、9月の首脳会合への準備のために、貴議長が配慮に満ちた作業計画、協議メカニズムを加盟国に提示されたことに感謝します。国連創設から60年を経て、この9月に我々は、我々の国連が21世紀の諸問題により効果的に対処できるよう、またそのための体制を整えるよう、加盟国が国連を再活性化し、変革し、コミットメントを新たにし、能力強化するための重要な決断を迫られることでしょう。この歴史的に重要な任務を果たすに当たって、我が国は事務総長を全面的に支援し、また、貴議長及びファシリテーターと緊密に協力していきたいと考えます。

議長、

 我が国政府は、事務総長が、大胆で具体的な提案を示し、開発、平和と安全、法の支配と弱者の保護といった、核となる使命と目的を巡って国連の役割と機能とを強化することを目指していることを評価します。更に、機構改革、就中安保理の改革につき具体的な提案、構想を同様に示した事務総長の努力を評価します。幅広い統合されたパッケージとして我々の前に示されたこれらの提案について、大胆さと迅速さとをもって、団結して行動することは、今や加盟国にかかっています。我が国は国連に深くコミットしており、貴議長の賢明な指導の下、全加盟国が裨益するような合意を見出すために、全力を尽くしたいと考えます。

 開発、安全、人権は密接に連関しており、共に推進されなければならないとの考え方が事務総長報告の中心点であると理解しており、これを我々は強く支持します。この考え方は、まさに我が国が押し進めている「人間の安全保障」の精神・概念に当たるものです。「人間の安全保障」とは、個人の保護と能力強化を通じてこそ、尊厳を持って生きる自由を達成することが出来るという理念であります。

議長、

 本日の私の発言は、我が国政府が特に重視している点に限定することとします。同時に、今月後半のクラスター別会合における詳細な議論を楽しみにしています。

 第一に、「欠乏からの自由」クラスターの下での開発に関し、アフリカをはじめとする世界の多くの地域で何億人もの極貧状況にある人々が直面している問題ほど関心が求められているものはありません。国際社会の開発アジェンダはMDGsよりは広いものですが、最も切迫した優先課題はMDGsであるべきです。我が国は、MDGsの実現に強くコミットしており、国連の内外において関係国、他の二国間・多国間ドナー及び開発パートナーと協働していきます。

 MDGsへのアプローチにおいて、我々は事務総長報告とともに、モントレイの国際開発資金会議やヨハネルブルクの持続可能な開発に関する世界首脳会議をはじめとする様々な国際会議における議論や合意に導かれることになります。MDGs実現に向けた優先分野については、教育、水、保健、環境といった分野において我が国はリーディング・ドナーであり、今後もこうした分野で努力を継続していきます。

 また、我が国は、「国づくりは人づくりから始まる」との考えの下、特に教育、訓練等の分野でのキャパシティ・ビルディング支援を重視してきました。「人づくり」を進めることは健全な「オーナーシップ」を進めていく上で重要であり、MDGsの達成及び持続可能な開発には、この途上国自身の「オーナーシップ」が不可欠です。

 開発資金の問題は重要であり、資源の動員を効果的かつ持続可能な形で実現するには、ODAのみならず貿易・投資、裨益国における国内資金等あらゆるその他の資金を含まねばならないと我々は議論してきました。東アジアでは、ODA、貿易及び民間投資を上手く組み合わせることにより健全な経済成長と持続的開発を可能とする環境づくりが可能となり、この10年間で2億人以上の貧困人口の削減がもたらされた興味深い開発事例がみられます。

 我が国のODAを通じた開発援助・協力への強いコミットメントは変わりません。こうしたコミットメントに支えられ、この10年間、我が国は全世界のODAの約5分の1を供与してきました。インド洋津波被害時のような人道支援からMDGs、更にはMDGsに含まれない取組にわたって、我が国は世界の主要ドナーであるために努力していきます。我が国としては、事務総長報告における諸提言を真剣に受け止め、MDGs達成のためのODAの増加に努力します。

 国際開発及びMDGsを促進する上で、ブレトン・ウッズ諸機関やWTOといった国連外の機関との協力も重要です。今年のG8サミットはアフリカに焦点を当てており、我が国も開発資金や債務問題等についてG8諸国と緊密に協力していきます。また、今月後半には、1955年の歴史的なバンドン会議の50周年を記念してアジア・アフリカ首脳会議が開催されることにも言及したいと思います。我が国は南南協力を含む両地域間の協力強化に関する方針を明らかにしたいと考えます。

議長、

 自然災害によってもたらされる人類への脅威に関しては、事務総長報告が防災及び早期警戒措置の重要性を強調していることを評価します。開発途上地域をはじめ多くの国にとり重大な懸念であるこの問題に、国連を通じて国際社会が有効に対処する必要があると考えます。

議長、

 「恐怖からの自由」の下で述べられている平和と安全に係る事項に関し、我々は、事務総長が、軍縮及び不拡散のための多数国間の枠組みの更なる強化のために具体的な提言を行ったことを評価します。我が国政府は、この分野において各国と緊密に協力しつつ、多くのイニシアティブをとってきています。我々は、軍縮・不拡散やテロ防止関連条約及び規範の普遍化、強化並びに完全な履行を支持しています。先週、核テロ防止条約が採択される運びとなりましたが、このような早期の合意は、事務総長報告により促進されたことは言うまでもないでしょう。

 核軍縮・核不拡散については、来月にはNPT運用検討会議が開催されますが、NPT体制が重大な挑戦を受けている現在、この会議は非常に重要です。この会議及びその他のイニシアティブを通じ、我が国政府は、アジア・太平洋地域及び国際の安全保障関係を改善したいとの熱意から、引き続き核軍縮及び核不拡散の促進のために積極的なイニシアティブをとっていく考えです。

議長、

 我々は、「平和構築委員会」の構想を支持しており、平和構築委員会が9月首脳会合の重要な成果の1つとなることを希望します。我が国は、従来より、「平和の定着」、「人間の安全保障」を提唱するなど、平和構築の重要性を強く認識しており、「平和構築委員会」は、このような平和構築活動を具体化する構想としても評価しています。我々は、事務総長による安保理、経社理から同数の参加メンバーを得るとの平和構築委員会の構成や機能についての提案の主旨を支持します。また、平和構築支援オフィスも含めた平和構築委員会についての具体的提案についての事務総長ノートに期待しています。

 第3に、「尊厳を持って生きる自由」、すなわち弱者の保護及び法の支配に関しては、我々は、事務総長報告において、法の支配、人権、民主主義が開発、平和と安全に並んで国連の重要な柱と位置づけられたことを歓迎します。冷戦終了以後の10数年の経験に立てば、国際社会が「保護する責任」の問題を真剣に検討する場面に直面しているとの事務総長の認識を我が国としても共有します。他方、最終的に軍事手段による介入を排除しないとしても、まず、軍事手段に至らない段階での努力を国際社会として傾注すべきであり、このことは更に検討される必要があります。紛争予防と紛争後の平和定着を導く基本原則として個人の保護と能力強化に主たる重点を置くとの人間の安全保障の概念は、既に述べたことですが、ここで改めて、再度強調したいと思います。

 我々は、世界各地での人権状況の向上のために国連の活動をより活発化させるとの観点から、事務総長報告が人権に重点を置いていることに賛成し、その観点から、活発な議論が行われることを期待します。「人権理事会」提案に関しては、その背景にある主要な問題意識を共有すると同時に、詳細については更なる議論が必要と考えます。

議長、

 機構改革に関し、事務総長は、全ての加盟国が慎重かつ好意的に検討すべき多くの重要な提案を提示しました。それには、総会、経社理、安保理そして事務局の改革についての提案が含まれています。我々は、これらの具体的かつ大胆な提案を歓迎します。

 安保理改革は、既に10年以上議論されてきており、今や行動のための時期は熟しつつあります。事務総長が「安保理改革なくして国連改革は完成せず」という確信を再確認した上で、加盟国に対し「9月の首脳会合前に」安保理改革に関する決定を行うことに合意するよう要請しました。また事務総長は、そのためにはコンセンサスは好ましいが、「コンセンサスが達せられないことが行動を遅らせる言い訳となってはならない」と述べましたが、この事務総長の考え方を我々は完全に支持します。歴史は我々に対して、重要な進展はコンセンサスを通じては滅多に達成されず、大胆な決定を通じて行われることを物語っています。1963年に非常任理事国について行った決定は、投票によって行ったものであることは想起されるべきでしょう。

 我々は、従来より、安保理の代表性を強化し、現在及び将来の課題により有効に対処するために常任・非常任議席双方を拡大すべきとの立場を主張してきました。このような立場は、国連総会における演説が示すように多くの国により支持されました。このようなアプローチは、モデルAに反映されています。我々は、途上国が常任議席も含め、拡大された安保理においてより代表されるべきであると考えています。我々は、AUが常任・非常任双方拡大をベースとしたポジションに最近合意したことを歓迎し、アフリカより2ヶ国が新常任理事国となることを支持します。このような動きを背景に、我が国は、安保理拡大を実現するための決定を行うために夏までに枠組み決議案を、更にその後の必要な行動も含めて、他の関心国と共に進めていく考えです。

 このプロセスにおいて、我々は、解決の時期がおとずれて久しいこの問題について出来る限り広い合意が達成されるように、貴議長及びファシリテーターとの間で緊密に協働していくつもりであることは勿論です。

 安保理を拡大する中で、既に長期にわたり加盟国の重要関心事項であり、またいわゆる「刈り取り」の用意のある安保理の作業方法改善についても対処する必要があります。この問題についても、他の全ての関心国と緊密に協議しつつ進めていく考えです。

 経社理の改革については、この重要な機関が真に緊急性・必要性の高いテーマについて集中的に議論し得るものへと改革されるべきと考えます。こうした改革が達成されれば、経社理は経済・社会分野における国連の活動にとって有益な指針をもたらすことが可能となるでしょう。

 事務局改革に関し、我々は、事務局内の改革のための様々なアイディア、特に既存の資源の再配分に貢献するであろう提案を歓迎します。既存の資源の再配分は、国連が新たな任務や課題に対応するに当たって、無限ではない資源を最も良い方法で活用するために、事務局内におけるいかなる見直しにおいても指針として尊重されるべきです。時間が経過したマンデートの見直しに係る提案も歓迎します。

 事務局職員問題に関し、「今日の必要性に応えるべく職員を刷新し再編成する」必要性は、十分に正当な理由のあるものです。我々としては、こうした職員の再配分を基本的に既存の資源内で進める方法について、事務局との対話を続けていきたいと考えます。

 また我々は、改革遂行に係る事務総長の指導力強化、及び事務局の活動に係る透明性向上と説明責任強化に関連する取り組み措置を支持しています。我々は、この点について、建設的に議論に参加していきたいと考えます。

議長、

 本日の総会審議を皮切りに、9月の首脳会合にむけての具体的準備プロセスが本格的に始動します。私のステートメントを締めくくるに当たり、小泉総理大臣が昨年9月の一般討論演説において述べられた言葉を引用します。

「今こそ、国連、特に安保理を改革するとの歴史的決断を行う時です。時間は限られています。我々の将来、すなわち国連の将来がかかっています。私は、各国を代表する御列席の方々に対し、『国連新時代』の構築に向けて共に協力し、大胆な一歩を踏み出すことを訴えます。」

 この言葉どおり、我が国政府は、「国連新時代」の構築に向け、他の加盟国と協力しつつ、全力を尽くす所存です。

ありがとうございました。

(了)

   
など、平和構築の重要性を強く認識しており、「平和構築委員会」は、このような平和構築活動を具体化する構想としても評価しています。我々は、事務総長による安保理、経社理から同数の参加メンバーを得るとの平和構築委員会の構成や機能についての提案の主旨を支持します。また、平和構築支援オフィスも含めた平和構築委員会についての具体的提案についての事務総長ノートに期待しています。

 第3に、「尊厳を持って生きる自由」、すなわち弱者の保護及び法の支配に関しては、我々は、事務総長報告において、法の支配、人権、民主主義が開発、平和と安全に並んで国連の重要な柱と位置づけられたことを歓迎します。冷戦終了以後の10数年の経験に立てば、国際社会が「保護する責任」の問題を真剣に検討する場面に直面しているとの事務総長の認識を我が国としても共有します。他方、最終的に軍事手段による介入を排除しないとしても、まず、軍事手段に至らない段階での努力を国際社会として傾注すべきであり、このことは更に検討される必要があります。紛争予防と紛争後の平和定着を導く基本原則として個人の保護と能力強化に主たる重点を置くとの人間の安全保障の概念は、既に述べたことですが、ここで改めて、再度強調したいと思います。

 我々は、世界各地での人権状況の向上のために国連の活動をより活発化させるとの観点から、事務総長報告が人権に重点を置いていることに賛成し、その観点から、活発な議論が行われることを期待します。「人権理事会」提案に関しては、その背景にある主要な問題意識を共有すると同時に、詳細については更なる議論が必要と考えます。

議長、

 機構改革に関し、事務総長は、全ての加盟国が慎重かつ好意的に検討すべき多くの重要な提案を提示しました。それには、総会、経社理、安保理そして事務局の改革についての提案が含まれています。我々は、これらの具体的かつ大胆な提案を歓迎します。

 安保理改革は、既に10年以上議論されてきており、今や行動のための時期は熟しつつあります。事務総長が「安保理改革なくして国連改革は完成せず」という確信を再確認した上で、加盟国に対し「9月の首脳会合前に」安保理改革に関する決定を行うことに合意するよう要請しました。また事務総長は、そのためにはコンセンサスは好ましいが、「コンセンサスが達せられないことが行動を遅らせる言い訳となってはならない」と述べましたが、この事務総長の考え方を我々は完全に支持します。歴史は我々に対して、重要な進展はコンセンサスを通じては滅多に達成されず、大胆な決定を通じて行われることを物語っています。1963年に非常任理事国について行った決定は、投票によって行ったものであることは想起されるべきでしょう。

 我々は、従来より、安保理の代表性を強化し、現在及び将来の課題により有効に対処するために常任・非常任議席双方を拡大すべきとの立場を主張してきました。このような立場は、国連総会における演説が示すように多くの国により支持されました。このようなアプローチは、モデルAに反映されています。我々は、途上国が常任議席も含め、拡大された安保理においてより代表されるべきであると考えています。我々は、AUが常任・非常任双方拡大をベースとしたポジションに最近合意したことを歓迎し、アフリカより2ヶ国が新常任理事国となることを支持します。このような動きを背景に、我が国は、安保理拡大を実現するための決定を行うために夏までに枠組み決議案を、更にその後の必要な行動も含めて、他の関心国と共に進めていく考えです。

 このプロセスにおいて、我々は、解決の時期がおとずれて久しいこの問題について出来る限り広い合意が達成されるように、貴議長及びファシリテーターとの間で緊密に協働していくつもりであることは勿論です。

 安保理を拡大する中で、既に長期にわたり加盟国の重要関心事項であり、またいわゆる「刈り取り」の用意のある安保理の作業方法改善についても対処する必要があります。この問題についても、他の全ての関心国と緊密に協議しつつ進めていく考えです。

 経社理の改革については、この重要な機関が真に緊急性・必要性の高いテーマについて集中的に議論し得るものへと改革されるべきと考えます。こうした改革が達成されれば、経社理は経済・社会分野における国連の活動にとって有益な指針をもたらすことが可能となるでしょう。

 事務局改革に関し、我々は、事務局内の改革のための様々なアイディア、特に既存の資源の再配分に貢献するであろう提案を歓迎します。既存の資源の再配分は、国連が新たな任務や課題に対応するに当たって、無限ではない資源を最も良い方法で活用するために、事務局内におけるいかなる見直しにおいても指針として尊重されるべきです。時間が経過したマンデートの見直しに係る提案も歓迎します。

 事務局職員問題に関し、「今日の必要性に応えるべく職員を刷新し再編成する」必要性は、十分に正当な理由のあるものです。我々としては、こうした職員の再配分を基本的に既存の資源内で進める方法について、事務局との対話を続けていきたいと考えます。

 また我々は、改革遂行に係る事務総長の指導力強化、及び事務局の活動に係る透明性向上と説明責任強化に関連する取り組み措置を支持しています。我々は、この点について、建設的に議論に参加していきたいと考えます。

議長、

 本日の総会審議を皮切りに、9月の首脳会合にむけての具体的準備プロセスが本格的に始動します。私のステートメントを締めくくるに当たり、小泉総理大臣が昨年9月の一般討論演説において述べられた言葉を引用します。

「今こそ、国連、特に安保理を改革するとの歴史的決断を行う時です。時間は限られています。我々の将来、すなわち国連の将来がかかっています。私は、各国を代表する御列席の方々に対し、『国連新時代』の構築に向けて共に協力し、大胆な一歩を踏み出すことを訴えます。」

 この言葉どおり、我が国政府は、「国連新時代」の構築に向け、他の加盟国と協力しつつ、全力を尽くす所存です。

ありがとうございました。

(了)