クラスターⅡ(恐怖からの自由)に関する非公式審議における
大島常駐代表ステートメント(仮訳)
平成17年2月22日 国際連合日本政府代表部
議長、
事務総長報告で明確にされているように、今日のグローバル化した世界においては、人類に対する様々な脅威がますます相互に連関し不可分となっていることから、クラスターⅡ(恐怖からの自由)の下にまとめられた事項は、全ての国家及び個人の関心と利益に関連しています。いかなる国も、このような脅威の影響から自国を完全に保護することはできません。国連が究極的な保証人である国際的集団安全保障体制は、このような今日の脅威に実効的に対処するよう改訂されなければなりません。本日の私のステートメントでは、9月の首脳会合に向けて、然るべく対処されるべきであると我々が考える4つの事項につき述べたいと思います。
議長、
第一に、テロリズムについて、我々は、事務総長が、事務総長報告の中で提示した包括的戦略の「5つのD(注)」と呼ばれる5つの柱を高く評価するとともに、9月の首脳会合ではこれらが確認されるべきであると考えます。また我が国は、核テロ防止条約が、先週国連総会本会議で採択されたことを歓迎します。更に我が国は、事務総長が、包括テロ防止条約について総会第60会期末までに妥結を図ることを要請していることを支持し、9月首脳会合において、加盟国がそのための政治的な決意を新たにすべきであると考えます。また、加盟国は、既存の13のテロ関連諸条約への加入とその履行のための努力を継続すべきと考えます。
議長、
第二に、現在のNPTを基盤とする核不拡散体制は、今日、重大な挑戦に直面しています。しかし、同時に、NPTが今後も核不拡散体制の維持のための柱であり続ける必要があります。このため、我々はNPT体制の抜け穴をふさぎ、核不拡散体制の実効性を強化しなければなりません。例えば、事務総長は、追加議定書の普遍化を提言しましたが、これは核不拡散体制強化のための最も現実的かつ効果的な方途です。それ故に、我々は、追加議定書未加入国に対し、既に個別に加入を働きかけてきたところです。これまでに90ヶ国が追加議定書に署名し、この内、65ヶ国については発効しました。我々としては、全ての関係国によるコミットメントを強化することによりこの数字が増えることを期待します。
同時に、核軍縮は、核不拡散と並んでNPT上のもう一つの主要な義務であるので、核軍縮についても積極的に追求される必要があります。事務総長は、CTBTの早期発効、カットオフ条約の早期交渉開始を呼びかけましたが、我が国はこれらをかねてより支持してきており、これらの早期実現を希望します。
原子力の平和的利用の権利と核不拡散の要請のバランスを如何にとるかは、重要かつ機微な問題です。「核に関する多国間アプローチ」がNPT上の義務を誠実に履行し、高い透明性をもって国際社会の信頼を得て、原子力の平和的利用を行っている国の活動を不当に影響しないかどうかにつき検討することが重要です。
5月にニューヨークで予定されているNPT運用検討会議は、NPT体制への信頼を維持・強化するための重要な機会です。9月の首脳会合に向けて、核軍縮・不拡散分野で国際枠組みの機能を強化し、その権威と信頼性を高めることが国際社会全体の利益になることを、我々は再確認すべきです。テロ防止のための努力のような他の分野での努力とともに、これが国際の平和と安全の促進に大きく資することになるでしょう。
議長、
第三に、平和構築委員会(PBC)については、1月以来の総会での審議を通じ、PBCの設置に関する幅広い合意が形成されてきており、9月の首脳会合では、平和構築委員会の設置に関する何らかの決定が行われるべきと考えます。しかしながら、設置場所、任務、報告ライン、構成、関連常設基金、PBC支援オフィス等の具体的事項については、更なる検討が必要です。それ故に、我々は、PBCに関する事務総長注釈ノートが発出されたことを歓迎します。右ノートは、具体的事項に関する加盟国間の議論を促進することとなるでしょう。今後の念入りな検討に資することを希望しつつ、以下に、右ノートに関するとりあえずのコメントを述べます。
PBCの設置場所に関し、事務総長は加盟国のコメントを考慮し、経社理に適切な役割を与え、ハイレベル・パネルがそもそもPBCを安保理の補助機関として設置するとしていた提案を修正しました。PBCの設置場所に関していくつかあるオプションの1つとして、平和構築活動が、安保理及び経社理のそれぞれの任務に関係するとともに、平和構築活動における連続性の中で、経済社会分野のその他の国連諸機関の任務とも関係することから、1つの特定の機関の下に設置するのではなく、安保理・経社理から構成される「合同フォーラム」とする考え方もあります。
更に、我々は、 PBCが基本的には紛争後の段階に焦点を置くとの事務総長の考えに同意します。また、PBCは一義的には協議・諮問機関であるべきとの考えを共有します。PBCの報告ラインについては、事務総長は、復旧の状況に応じ、安保理及び経社理に順次に報告することを提案しました。そして、どの段階で安保理から経社理へ移行されるべきかについては両機関が協議するとされています。この点については、更に明確化が必要です。PBCの実効的な機能を確保するため、安保理及び経社理の議長、また必要に応じ、総会議長及び事務総長又はその代理によるトップレベルの調整も検討に値するかもしれません。
PBCの構成について、我々は、PBCのコアメンバーとして、安保理メンバー、それと類似の数の経社理メンバー、更には主要部隊派遣国、平和構築のための常設基金の主要ドナーとするとの事務総長の考え方を支持します。我々はまた、PBCの規模はほどよく小規模とするとの事務総長提案を歓迎します。
平和構築活動支援のための常設基金設置提案については、我が国としては前向きに検討する考えです。
我々は、PBCの活動を実効的かつ効率的に支援する小規模でも質の高い平和構築サポートオフィスを設置するとの事務総長の提案を歓迎します。我々はまた、PBCとフィールドにおける活動との調整が非常に重要であることから、サポートオフィスが国連のフィールドオフィスと協働すべきであるとの点を歓迎し、支持します。
議長、
第四に、武力の行使に関し、事務総長は、5つの基準を1つの考え方として示し、それらが安保理決議により確認されることを提案しました。 国連憲章第7章下における武力の行使の正当性という極めて重要な問題に関し、 我々は、事務総長がこのような5つの基準という考え方を示したことを評価します。他方、このような基準を確立することが具体的な安保理の審議においていかなる影響を及ぼすかについては十分に検討すべきと考えます。本件については、引き続き加盟国との間で協議していきたいと考えています。
議長、
最後に、本日の協議は「恐怖からの自由」という重要な問題に関する具体的な協議の始まりであることを強調したいと思います。我が国は、各国との対話を通じ、9月の首脳会合で最も質の高い最終成果物が得られるよう、他の加盟国の見解に対して引き続きオープンでありたいと考えています。
ありがとうございました。
(注)5つのD
1. Dissuade :テロを選択したり支援することを思い止まらせる。
2. Deny :テロリストに資金や物資へのアクセスを与えない。
3. Deter :国家がテロリストを支援することを阻止する。
4. Develop :テロを阻止するための国家の対処能力を向上させる。
5. Defend :(テロとの闘いにおいて)人権を擁護する。 (了) |