2005年

 
 

第61回国連人権委員会ハイレベル・セグメント 小野寺政務官ステートメント(仮訳)

 

2005年3月16日
於:ジュネーブ

議長、人権高等弁務官、ご列席の皆様、

 我が国政府を代表して、この第61回人権委員会でスピーチを行うことは、私の喜びとするところです。
  まず、傑出した人物であり、また経験豊かなインドネシア大使であるマカリム・ウィビソノ博士の議長就任を心よりお祝い申し上げます。日本は、アジアのメンバー国として議長を全面的に支持し、今次人権委員会を成功に導くため議長と協力していく所存です。
  また、アルブール人権高等弁務官が国際的な人権擁護促進に対し、リーダーシップを発揮し尽力されていることを称賛申し上げます。我々は昨年11月にアルブール高等弁務官を日本に迎え、建設的な議論を行えたことをうれしく思っています。

 議長、
  国連加盟国の間では、国連の人権分野における作業の改革の必要性が広く認識されています。本年は、国連改革にあたって、進展のための特別な機会が提供されています。国連改革のため、脅威、挑戦及び変化に関するハイレベル委員会はその報告において人権委員会改革を含む提言を示しました。報告書は、本件に関する議論を活性化し、人権委員会と国連総会の作業分担に関する提言を含め数多くの興味深いアイデアが提示されてきております。我が国は、様々な提案を注意深く検討しつつ、具体的改革方法について立場を固めて参ります。しかし、我々の検討の基本原則は明確です。いかなる改革であれ、全世界において効果的に人権を保護促進する機能を高めるとの目的に資するものでなければなりません。我々は、実際の人権状況には殆ど影響しないような、実益のない文言交渉に時間を費やすことを避けるよう最大限努力すべきです。また、国際機関の機構においても、国連事務局においても、重複の問題を避けなければなりません。我が国はこれらの原則にたって具体的な見解を作り上げてゆくとともに議論に積極的に参加してゆきたいと思います。

 議長、
  我が国は、人権が普遍的価値を有することを強く確信しています。「良い統治(グッドガバナンス)」、「差別禁止」、「法の支配」、そして「民主主義」の概念は全世界で認められています。人権委員会はこの点に関する全世界の認識を高める機関となっています。しかし、この普遍的な認識と、国際社会並びに人権高等弁務官事務所の努力にもかかわらず、重大な人権侵害が世界各地で発生しています。
  日本は、国際社会が真の進展を求める際に、その国の歴史、文化、宗教及び伝統に対する適切な理解が重要であることを認識しています。この確信に立ち、我が国は真摯に最善を尽くす国については、対話と協力そして有用な場合には支援を通じてそれぞれ国の状況に応じたアプローチを模索してきました。
  しかしながら、当該政府が国際社会の善意を無視し、改善に向けたわずかな努力さえも行わない場合において、国際社会は傍観している訳にはいきません。

 議長、
  我が国は、過去2年間に人権委員会決議という形で明確に示された北朝鮮の人権状況に関する深い懸念を共有します。それらの決議は、拷問や強制労働を含む組織的で広範かつ深刻な人権侵害を指摘しました。
  ここで昨年の決議が北朝鮮に対し、特に、日本人を含む外国人の拉致に関する問題を解決するよう求めていることに触れたいと思います。こうした外国人の拉致は、国際社会が一致して解決を求めるべき、人間の尊厳、人権及び基本的自由に対する重大かつ明白な侵害ですが、北朝鮮は、我が国の問題解決に向けた累次の要求に対し、不誠実で納得のいかない対応をしてきています。我が国として、北朝鮮がこのような対応に終始する場合には、我が国として厳しい対応をとらざると得ないことを北朝鮮にも伝えてきています。我が国は、北朝鮮に対し、生存する被害者の即時帰国と真相の究明を通じ、拉致問題の早急の解決を図り、人権状況を改善するよう北朝鮮の対応を強く求めます。
  また、北朝鮮は、一貫して北朝鮮の人権状況特別報告者のマンデートを認めず、訪問のための協力を行っていません。このように北朝鮮が関係国際機関との協力に前向きに対処してこなかったことにつき、深い憂慮の意を表すとともに、国際社会の求めに応じ、強制的失踪作業部会、人権高等弁務官事務所を含めた関係国際機関に対し、全面的かつ無条件に協力することを求めます。
  我が国は本年の国連人権委員会が北朝鮮の人権状況決議を採択することを希望し、そのための国際社会の協力を求めます。

 議長、
  21世紀にグローバリゼーションが加速するにつれ、内戦の国際化、テロ、エイズなどの感染症、自然災害など、人々の十分な人権享受を侵害し又は悪影響を与える脅威が増大しており、これらの脅威には従来の制度の枠組みでは十分に対処しきれておりません。そのため、我が国は人間一人一人の保護と能力強化、つまり、人権を含む人の生命、生活、尊厳に対する脅威のあらゆる側面を包含する「人間の安全保障」の推進を重視しているのです。

 議長
  私はこの機会に、日本政府を代表して再度先に発生した津波による被災者の方々に心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。
  この深刻な人道的脅威に際し、我が国は財政面での最大5億ドルの無償資金協力と知識面及び人材面の3つの側面から最大限の支援を行っております。また、特に児童売買の防止及び感染症対策を含む子供の保護・救援のため、日本は「津波被害子ども支援プラン」を実施しています。

 議長、
  日本政府は児童の権利の保護・促進の意義を認識し、児童の権利条約の2つの選択議定書に批准しました。私どもは、これら2つの選択議定書を履行して参る所存であり、また今般の批准により児童の権利の重要性に対する一般社会の意識が向上することを希望しています。
  我が国は、女性の権利促進も重視しています。本年3月上旬、第4回世界女性会議北京会合10周年を記念する第49回婦人の地位委員会において、我が国は「ジェンダーと開発(GAD)イニシアチブ」を発表しました。
  同時に、日本政府は昨年12月人身取引対策のための包括的な行動計画を策定しました。我が国は、国内的にも国際的にも人身取引対策のため最大限の努力を継続してゆく所存です。

 議長、
  日本は障害者の権利の保護・促進の重要性を認識し、国際社会で幅広く支持され、効果的に実施されてゆく、強く効果的な条約策定のための作業に引き続き協力して参ります。

 議長、
  我々は、すべての人々が寛容と他者の尊重を学ぶ人権教育は、全ての人々の人権が当然に尊重される、堅実で平和で豊かな社会を築く上で大変重要であると確信しております。従って、我々は、本年1月「人権教育のための世界計画」が開始されたことを歓迎し、人権教育を推進する取組を引き続き行っていく所存です。

 議長、
  人権の保護と促進は、継続的な挑戦であり続け、たゆまざる警戒と不断の努力を要します。我々が真に責務の遂行を成功させることができるか否かは、新たな挑戦に対応し、柔軟で、ダイナミックな努力を実現してゆく我々の能力にかかっています。そして、何よりもまず必要とされるのは団結と協力であります。我々の子供たちと将来の世代のため、共にこの世界をよりよいものにしていきましょう。ご静聴ありがとうございました。

   

  まず、傑出した人物であり、また経験豊かなインドネシア大使であるマカリム・ウィビソノ博士の議長就任を心よりお祝い申し上げます。日本は、アジアのメンバー国として議長を全面的に支持し、今次人権委員会を成功に導くため議長と協力していく所存です。
  また、アルブール人権高等弁務官が国際的な人権擁護促進に対し、リーダーシップを発揮し尽力されていることを称賛申し上げます。我々は昨年11月にアルブール高等弁務官を日本に迎え、建設的な議論を行えたことをうれしく思っています。

 議長、
  国連加盟国の間では、国連の人権分野における作業の改革の必要性が広く認識されています。本年は、国連改革にあたって、進展のための特別な機会が提供されています。国連改革のため、脅威、挑戦及び変化に関するハイレベル委員会はその報告において人権委員会改革を含む提言を示しました。報告書は、本件に関する議論を活性化し、人権委員会と国連総会の作業分担に関する提言を含め数多くの興味深いアイデアが提示されてきております。我が国は、様々な提案を注意深く検討しつつ、具体的改革方法について立場を固めて参ります。しかし、我々の検討の基本原則は明確です。いかなる改革であれ、全世界において効果的に人権を保護促進する機能を高めるとの目的に資するものでなければなりません。我々は、実際の人権状況には殆ど影響しないような、実益のない文言交渉に時間を費やすことを避けるよう最大限努力すべきです。また、国際機関の機構においても、国連事務局においても、重複の問題を避けなければなりません。我が国はこれらの原則にたって具体的な見解を作り上げてゆくとともに議論に積極的に参加してゆきたいと思います。

 議長、
  我が国は、人権が普遍的価値を有することを強く確信しています。「良い統治(グッドガバナンス)」、「差別禁止」、「法の支配」、そして「民主主義」の概念は全世界で認められています。人権委員会はこの点に関する全世界の認識を高める機関となっています。しかし、この普遍的な認識と、国際社会並びに人権高等弁務官事務所の努力にもかかわらず、重大な人権侵害が世界各地で発生しています。
  日本は、国際社会が真の進展を求める際に、その国の歴史、文化、宗教及び伝統に対する適切な理解が重要であることを認識しています。この確信に立ち、我が国は真摯に最善を尽くす国については、対話と協力そして有用な場合には支援を通じてそれぞれ国の状況に応じたアプローチを模索してきました。
  しかしながら、当該政府が国際社会の善意を無視し、改善に向けたわずかな努力さえも行わない場合において、国際社会は傍観している訳にはいきません。

 議長、
  我が国は、過去2年間に人権委員会決議という形で明確に示された北朝鮮の人権状況に関する深い懸念を共有します。それらの決議は、拷問や強制労働を含む組織的で広範かつ深刻な人権侵害を指摘しました。
  ここで昨年の決議が北朝鮮に対し、特に、日本人を含む外国人の拉致に関する問題を解決するよう求めていることに触れたいと思います。こうした外国人の拉致は、国際社会が一致して解決を求めるべき、人間の尊厳、人権及び基本的自由に対する重大かつ明白な侵害ですが、北朝鮮は、我が国の問題解決に向けた累次の要求に対し、不誠実で納得のいかない対応をしてきています。我が国として、北朝鮮がこのような対応に終始する場合には、我が国として厳しい対応をとらざると得ないことを北朝鮮にも伝えてきています。我が国は、北朝鮮に対し、生存する被害者の即時帰国と真相の究明を通じ、拉致問題の早急の解決を図り、人権状況を改善するよう北朝鮮の対応を強く求めます。
  また、北朝鮮は、一貫して北朝鮮の人権状況特別報告者のマンデートを認めず、訪問のための協力を行っていません。このように北朝鮮が関係国際機関との協力に前向きに対処してこなかったことにつき、深い憂慮の意を表すとともに、国際社会の求めに応じ、強制的失踪作業部会、人権高等弁務官事務所を含めた関係国際機関に対し、全面的かつ無条件に協力することを求めます。
  我が国は本年の国連人権委員会が北朝鮮の人権状況決議を採択することを希望し、そのための国際社会の協力を求めます。

 議長、
  21世紀にグローバリゼーションが加速するにつれ、内戦の国際化、テロ、エイズなどの感染症、自然災害など、人々の十分な人権享受を侵害し又は悪影響を与える脅威が増大しており、これらの脅威には従来の制度の枠組みでは十分に対処しきれておりません。そのため、我が国は人間一人一人の保護と能力強化、つまり、人権を含む人の生命、生活、尊厳に対する脅威のあらゆる側面を包含する「人間の安全保障」の推進を重視しているのです。

 議長
  私はこの機会に、日本政府を代表して再度先に発生した津波による被災者の方々に心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。
  この深刻な人道的脅威に際し、我が国は財政面での最大5億ドルの無償資金協力と知識面及び人材面の3つの側面から最大限の支援を行っております。また、特に児童売買の防止及び感染症対策を含む子供の保護・救援のため、日本は「津波被害子ども支援プラン」を実施しています。

 議長、
  日本政府は児童の権利の保護・促進の意義を認識し、児童の権利条約の2つの選択議定書に批准しました。私どもは、これら2つの選択議定書を履行して参る所存であり、また今般の批准により児童の権利の重要性に対する一般社会の意識が向上することを希望しています。
  我が国は、女性の権利促進も重視しています。本年3月上旬、第4回世界女性会議北京会合10周年を記念する第49回婦人の地位委員会において、我が国は「ジェンダーと開発(GAD)イニシアチブ」を発表しました。
  同時に、日本政府は昨年12月人身取引対策のための包括的な行動計画を策定しました。我が国は、国内的にも国際的にも人身取引対策のため最大限の努力を継続してゆく所存です。

 議長、
  日本は障害者の権利の保護・促進の重要性を認識し、国際社会で幅広く支持され、効果的に実施されてゆく、強く効果的な条約策定のための作業に引き続き協力して参ります。

 議長、
  我々は、すべての人々が寛容と他者の尊重を学ぶ人権教育は、全ての人々の人権が当然に尊重される、堅実で平和で豊かな社会を築く上で大変重要であると確信しております。従って、我々は、本年1月「人権教育のための世界計画」が開始されたことを歓迎し、人権教育を推進する取組を引き続き行っていく所存です。

 議長、
  人権の保護と促進は、継続的な挑戦であり続け、たゆまざる警戒と不断の努力を要します。我々が真に責務の遂行を成功させることができるか否かは、新たな挑戦に対応し、柔軟で、ダイナミックな努力を実現してゆく我々の能力にかかっています。そして、何よりもまず必要とされるのは団結と協力であります。我々の子供たちと将来の世代のため、共にこの世界をよりよいものにしていきましょう。ご静聴ありがとうございました。