(はじめに)
このパネル・ディスカッションの開会にあたり、日本政府を代表して一言ご挨拶申し上げます。このイベントの準備に当たったファイロウ(懐柔)委員会と国連開発計画(UNDP)に感謝いたします。
国際機関、市民社会団体及び各国政府の指導的な地位にある多くの女性に参加いただいき、大変うれしく思います。日本の女性も、ここにいる女子差別撤廃委員会の林陽子委員や日本のNGOメンバーの方々のように、ジェンダー平等を推進するための国際的な努力に一層活発に貢献してきています。
(2010年とジェンダー)
2010年は、ジェンダー平等を推進する上で重要な節目の年です。この第54回国連婦人の地位委員会(「北京+15」)に始まり、6月の経済社会理事会のテーマも「ジェンダー平等と女性の地位向上」です。9月の国連ハイレベル総会では、MDG3を含むミレニアム開発目標の進捗が議論されます。
これに加え、国連加盟国は、新たなジェンダー複合機関に関する合意を目指して活発な議論を行っているところです。日本政府は、あらゆる国連活動において、ジェンダー配慮を主流化させる能力を持つ、効果的、効率的かつ無駄のない機関の設立に向け、この交渉に建設的に参加する考えです。
(人間の安全保障)
昨年、鳩山総理大臣は国連総会において、我が国として、「ミレニアム開発目標の達成と人間の安全保障の推進に向け、努力を倍加したい」と述べました。人間の安全保障は、日本外交の中心にあります。人間の安全保障は、個人やコミュニティーの保護と能力強化に焦点を当て、もって人々の生命、生活、尊厳を守り、それぞれが持つ豊かな潜在力を存分に発揮できるようにするものです。
我が国は人間の安全保障に関わる課題として、常にジェンダー平等と女性の地位向上を重視してきました。1995年、日本がUNDPと共に、北京行動綱領をフォローアップするために「日本WID基金」を立ち上げたのも、そのためです。我が国は、この基金を通じ、これまでに計約2千万ドルに上る84のプロジェクトを支援してきました。会場に配布したパンフレットに、この基金の成果がまとめられていますのでご覧ください。
(アフリカにおける家庭介護者の役割)
日本政府は、アフリカのコミュニティーで、HIV感染者を抱える家族への支援活動を行っている女性を中心とした家庭介護者の役割に着目し、その実態解明を試みたファイロウ委員会メンバーを高く評価します。その報告書は、次の2つの事実を浮き彫りにしています。
- これらの介護者は、コミュニティーの最も脆弱な構成員を保護し、エンパワーする重要な役割を担っていること、
- これらの介護者が地域の保健システムの基礎として、この重要な役割を担い続けるためには、彼女ら自身がエンパワーされる必要があること。
この関連で、2008年に開催された第4回アフリカ開発会議(TICADⅣ)では、MDGsの保健関連目標を達成する上で、「保健システムの強化」が喫緊の課題であるとされました。日本政府はTICADⅣにおいて、向こう5年間で10万人の保健・医療人材を育成することを表明しています。
この研究プロジェクトで明らかになった事実により、家庭介護者が置かれた困難な状況について、アフリカの地方及び中央の政府当局者、更にはドナーの理解が深まることを心から期待します。また、この認知を出発点として、現場の保健システム強化のために具体的行動がとられることを強く期待します。
各パネリストからの発表を通じ、家庭介護者が日々の活動において何を必要としているのか、また、彼女らの地位を向上させ、その声を我々の開発努力に反映させるにはどうしたら良いかが明らかになることを期待しています。
ありがとうございました。
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