国連「北京+10」世界閣僚級会合
(第49回国連婦人の地位委員会)
西銘日本政府代表演説(仮訳)
平成17年3月2日 於米国・ニューヨーク、国連 本部
議長,
私は,日本政府を代表して,この歴史的に重要な会議の 要職に就かれた議長に心か
ら祝意を表します。また、ジ ェンダー問題と女性の地位向上に関する事務総長特別
顧 問に就任されたラチェル・マヤンジャ女史に祝意を表す るとともに、女性の地位
向上部と会議の準備に献身的な 努力をされた全ての関係者に心からの謝意と敬意を
表し ます。
議長,
私は,我が国の国内本部機構(ナショナル・マシーナリ ー)の中核である内閣府の
大臣政務官として,関連施策 を推進しております。
男女共同参画社会は,男性が女性と共に真剣に取組んで 初めて実現するもの,と私
は確信しております。この意 味からも,男性の私が,北京から十年の記念すべき年
に 開催されるこのような会議に出席できることを,大変誇 りに思っております。
議長,
第1回世界女性会議以来30年,国際社会は国連を中心に ,女性の地位向上に向けた
取組を続け,成果を達成して 参りました。しかし,国際社会が抱える様々な課題,
障 害は,依然として大きなものがあります。
私たちは今次会議において,10年前,北京で互いに熱 く語った決意,希望,協
力,連帯を想起しながら,平和 で繁栄した国際社会への道標,すなわち北京行動綱
領の 更なる実施に向け,行動とイニシアティブを明確にせね ばなりません。
議長,
我が国は,北京会議以降の10年,北京行動綱領におい て示された道標、さらに女
性の人権とジェンダー平等を 実現するのに有効であると認識されている「女子に対
す るあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(CEDAW)」に 従い,女性の地位向上
のための具体的行動に全力を尽く して参りました。本日は,国内本部機構(ナショナ
ル・マ シーナリー)の強化,法的・行政的措置に関する取組の進 展,国際協力の3
つの観点から,我々の行動を振り返り ます。
1. 国内本部機構(ナショナル・マシーナリー)の強化
第一に,我が国における国内本部機構の強化について報 告します。
我が国は,2001年,男女共同参画担当大臣である内閣官 房長官を議長とし,閣僚と
民間有識者がその知恵と経験 を互いに持ち寄り,広範な議論を行う男女共同参画会
議 を,新たに内閣府に創設しました。同会議は,政府の施 策の実施状況を監視する
機能や,政府の施策が及ぼす影 響の調査機能を持ち,我が国のジェンダー主流化の
要を 担っております。
また,同時に,政府全体を通じた男女共同参画施策の企 画立案と総合調整を任務と
する男女共同参画局を,内閣 府に設置しました。これらの強化により,内閣府の強
力 なリーダーシップの下で,施策を推進しております。
2. 法的、行政的措置に関する取組の進展
次に,法制度や行政的措置に関連し,我が国における 取組の進展を報告します。
2-1. 男女共同参画社会基本法の制定
我が国は,国,地方公共団体,国民による男女共同参画 社会の実現に向けた取組
を,総合的かつ計画的に推進す るために,1999年に男女共同参画社会基本法を制定
しま した。
また,同法に基づき,2000年に策定された男女共同参画 基本計画には,女性2000年
会議の成果を取り込みながら ,広範な分野を網羅した重点目標を掲げています。
2-2. 権力及び意思決定における女性
我が国では,政策・方針決定過程への女性の参画の拡大 に向けた取組が進められつ
つあります。小泉政権では, 2001年の発足以来,登用された女性閣僚は既に8名に
及 び,地方においても,現在4人の女性知事が活躍しており ます。これは,女性の
政治的エンパワメントの明らかな 証左であります。
さらに,2003年には,「2020年までに,社会のあらゆる 分野において,指導的地位
に占める女性の割合を少なく とも30%程度になるよう期待する」という目標を設定し
た ところです。
2-3. 雇用均等,次世代育成支援
引き続き,男女雇用機会均等確保対策や,仕事と家庭の 両立を支援するための取組
について報告します。
我が国は,1997年に男女雇用機会均等法を改正し,募集 ・採用から退職にいたる雇
用管理の全ての段階における 女性への差別的取扱いを禁止しました。そして、残さ
れ た事実上の格差を解消するため,企業におけるポジティ ブ・アクションの推進に
力を入れています。
また,仕事と家庭の両立を支援するために,保育所受 け入れ児童の拡大などを進
めており,特に、2002年から は,小泉総理の強力なイニシアティブのもと,保育所
等 への受け入れ児童数を毎年5万人以上拡大してまいりま した。
さらに,政府は,新たな次世代育成支援総合計画に基づ き,男性の育児参加の促
進,子育て支援サービスの拡充 等に取組んでおります。また,地方自治体,企業
は,今 年4月から,子育て支援,働き方の見直しなどに関する 行動計画を策定し,
その実施に取組むこととしておりま す。
2-4. 配偶者の暴力
我が国は,女性に対する暴力撤廃に向けた取組にも,力 を入れております。2001年
4月には,配偶者からの暴力 の問題に対する取組を総合的に規定した法律を制定し
ま した。そして,2004年12月に,政府は同法を大幅に強化 した改正法を施行し,改
正法に基づいて基本方針を策定 しました。
2-5. 人身取引
また,人身取引についても,重大な人権侵害であるとの 認識の下,我が国政府は,
昨年12月に行動計画を策定し ,人身取引の防止・撲滅と被害者の保護・救済に積極
的 に取組んでおります。
さらに,現在開催中の国会では,国連における国際組織 犯罪防止条約・補足人身取
引議定書を締結すること,刑 法に人身売買罪等を新設することや,人身取引被害者
の 保護のため,出入国管理及び難民認定法の,退去強制事 由及び在留特別許可事由
を改正することについて,審議 が行われております。
3. 国際協力
次に、3番目の観点、国際協力に関する我が国の取組を報 告します。
我が国は,10年前,北京において,「途上国の女性支援 (WID: Women in
Development)イニシアティブ」を発表 しました。以来,ODAを通じ,女性の教育,
健康,経済社 会活動への参加,という3分野を中心に,ジェンダー関 連課題解決の
ための支援に取組んでまいりました。
そして,このたび,途上国の女性を取り巻く状況の変化 や,開発におけるジェン
ダー主流化の重要性を踏まえ, 我が国は,「ジェンダーと開発(GAD: Gender and
Development)イニシアティブ」を新たに策定いたしまし た。今後我が国は、新しい
イニシアティブに基づき,途 上国のジェンダー平等と女性のエンパワメントを目指
す 取組に対する支援を一層強化していく所存です。
議長,
我が国は,ODAなどの資金面でも,国連平和維持活動 などの人的貢献の面でも,
世界の平和と繁栄に積極的な 役割を果たしてきました。
我が国は,これからも国際機関やNGOを含む市民社会との 緊密なパートナーシップを
通じ,国内及び国際社会にお ける男女共同参画社会の形成を更に飛躍させるため
に, 施策の一層の充実に努めてまいります。
ありがとうございました。
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