2004年

 
 

第58回国連総会第5委員会公式会合 議題131「ルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)予算案」及び議題132「旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)予算案」に関する本村芳行国際連合日本政府代表部大使演説(仮訳)

2004年11月24日

議長、

ハルバックス財務官よりのルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)及び旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)予算案説明に感謝します。また行財政諮問委員会(ACABQ)のムゼレ委員長よりの同委員会報告書の説明に感謝申し上げます。

議長、

私は、ルワンダ国際刑事裁判所について焦点を当て以下を申し述べます。

我が国は、近年の両国際刑事裁判所予算の拡大傾向に警鐘を鳴らすとともに、両裁判所が裁判プロセスの迅速化を目指しつつも、加盟国の負担能力に配慮して、現行の予算水準を上限とすべき旨主張してきました。しかるに今回、本裁判所予算案は、大幅な(23%)膨張を示しており、我が国としてこれをそのまま受け入れることはできません。

国際社会が取り組むべき広範な課題の中で、国連が一層効果的にかつ効率的に機能していくためには、何が優先課題であるかについての議論が強く求められています。そうした議論のないまま、本裁判所のコントロールを失った予算拡大を許容することが妥当なことでありましょうか。我が国国内でも、既に年間2000万ドル近い分担金支払いの貢献を行うことが正当化できるのかと問う納税者の懐疑論が高まっています。最早今回提案されている予算膨張について我が国の納税者への説明責任を全うすることは不可能と言わざるを得ません。

議長、

もとより、これは大湖地域の国内融和プロセスを推進し、平和を回復する重要性を否定するものではありません。本裁判所が、出口戦略を遵守し、裁判プロセスの迅速化を目指しつつも、一層透明性、効率性を向上させ、戦略に沿って資源の重点配分をシフトさせていくことによって、予算膨張を回避することは決して不可能ではないと考えます。

更に、ルワンダ国際刑事裁判所は、1000人もの人員を正当化できるのでしょうか。1994年の設立以来10年近くを経過していますが、見るべき成果を上げたとは承知していません。即ち、そのあり方が根本から見直されてしかるべき時期にさしかかっていると認識しており、この機会に、国際社会及び安保理に対して、周辺関係国の評価をも踏まえ、マンデートを含めそのあり方の見直しを促したいと考えます。本裁判所のあり方につき改めて加盟国による評価(Evaluation)が必要です。その際には、シエラレオネ及びカンボジアにおける裁判が任拠出金で運営されているないしは予定であることが想起されるべきです。また、域内の関連法令の整備状況を見極めつつも、旧ユーゴにおいて重大事件を除く事件については国内裁判所への移管が進められようとしていることも十分に参考とされるべきであります。

議長、

以上のような問題意識に関して、安保理ではいかなる議論が行われたのでしょうか、責任ある説明すら受けたことがありません。これはきわめて遺憾であります。「代表なくして課税なし。」とは、この国連本部がおかれている米国の独立運動のきっかけとなったスローガンです。国連財政の5分の1を支える日本の納税者をきちっと評価しない時代はとうの昔に終了したことを明確に申し上げます。

なお、本裁判所のあり方の見直しにあたっては、国際社会に対して十分な説明責任を果たすことが緊要であります。この観点から、我が国は平和維持活動予算措置について安保理と主要財政貢献国との間での何らかの対話メカニズムの設立の必要性につき先般のステートメントで言及しましたが、国際刑事裁判所にかかる予算措置に関しても、かかる対話のメカニズムの対象に組み入れることが適当であります。透明性と説明責任を一層高めていくことは、主要財政貢献国が納税者の理解を得て貢献を続けていくために極めて重要と考えます。

議長、

ルワンダ国際刑事裁判所の2004/2005年度予算案は初めて結果重視型予算の構成を踏まえたものになっており、更にこれを奨励します。同予算案では、初めて完了戦略が示された点で前進が見られ、我が国としては、第5委員会非公式協議においてその内容につき精査する用意があります。

安保理決議1512に基づく5名の訴訟裁判官及び45名の臨時ポストについては、事務総長より12,239,600ドルの追加支出が要求されていますが(A/58/550)、右要求の根拠につき説明を求めます。右は、昨年の安保理決議1431に基づき4名の訴訟裁判官及び42の臨時ポストに対し、ACABQ勧告を踏まえ、4,657,600ドルが認められた(A/RES/57/289)こととの対比において、極めて大きな要求額であり、受け入れることはできません。安保理決議1503に基づく検察官の設置に伴う予算増加についても、事務局より責任のある説明を求めます。

5名の追加的な訴訟裁判官により、判決プロセスが迅速に進み、その結果として早期に裁判が完了するとともに、一定の予算節約が得られるとの事務総長の説明には合理性が認められますが、そのために、加盟国の負担を急激に増加させることには同意できません。資源配分についても、ポスト増を当然視するのではなく、既存の人員を機動的に再配置することで、予算圧縮の努力がまずなされるべきです。/p>

マンデート見直しを含めた本裁判所のあり方を検討し、予算の合理化及び予算執行の効率性を追及する方途を探るため、メンバー国の代表からなる評価チームを現地に派遣することを提案します。

議長、

以上申し上げたように、我が国としては、アカウンタビリティーなくして国連活動は納税者の支持を得られるものではないとの強い懸念を表明します。.

有り難うございました。

   
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Tel: 212-223-4300

2004年

 
 

第58回国連総会第5委員会公式会合 議題131「ルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)予算案」及び議題132「旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)予算案」に関する本村芳行国際連合日本政府代表部大使演説(仮訳)

2004年11月24日

議長、

ハルバックス財務官よりのルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)及び旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)予算案説明に感謝します。また行財政諮問委員会(ACABQ)のムゼレ委員長よりの同委員会報告書の説明に感謝申し上げます。

議長、

私は、ルワンダ国際刑事裁判所について焦点を当て以下を申し述べます。

我が国は、近年の両国際刑事裁判所予算の拡大傾向に警鐘を鳴らすとともに、両裁判所が裁判プロセスの迅速化を目指しつつも、加盟国の負担能力に配慮して、現行の予算水準を上限とすべき旨主張してきました。しかるに今回、本裁判所予算案は、大幅な(23%)膨張を示しており、我が国としてこれをそのまま受け入れることはできません。

国際社会が取り組むべき広範な課題の中で、国連が一層効果的にかつ効率的に機能していくためには、何が優先課題であるかについての議論が強く求められています。そうした議論のないまま、本裁判所のコントロールを失った予算拡大を許容することが妥当なことでありましょうか。我が国国内でも、既に年間2000万ドル近い分担金支払いの貢献を行うことが正当化できるのかと問う納税者の懐疑論が高まっています。最早今回提案されている予算膨張について我が国の納税者への説明責任を全うすることは不可能と言わざるを得ません。

議長、

もとより、これは大湖地域の国内融和プロセスを推進し、平和を回復する重要性を否定するものではありません。本裁判所が、出口戦略を遵守し、裁判プロセスの迅速化を目指しつつも、一層透明性、効率性を向上させ、戦略に沿って資源の重点配分をシフトさせていくことによって、予算膨張を回避することは決して不可能ではないと考えます。

更に、ルワンダ国際刑事裁判所は、1000人もの人員を正当化できるのでしょうか。1994年の設立以来10年近くを経過していますが、見るべき成果を上げたとは承知していません。即ち、そのあり方が根本から見直されてしかるべき時期にさしかかっていると認識しており、この機会に、国際社会及び安保理に対して、周辺関係国の評価をも踏まえ、マンデートを含めそのあり方の見直しを促したいと考えます。本裁判所のあり方につき改めて加盟国による評価(Evaluation)が必要です。その際には、シエラレオネ及びカンボジアにおける裁判が任拠出金で運営されているないしは予定であることが想起されるべきです。また、域内の関連法令の整備状況を見極めつつも、旧ユーゴにおいて重大事件を除く事件については国内裁判所への移管が進められようとしていることも十分に参考とされるべきであります。

議長、

以上のような問題意識に関して、安保理ではいかなる議論が行われたのでしょうか、責任ある説明すら受けたことがありません。これはきわめて遺憾であります。「代表なくして課税なし。」とは、この国連本部がおかれている米国の独立運動のきっかけとなったスローガンです。国連財政の5分の1を支える日本の納税者をきちっと評価しない時代はとうの昔に終了したことを明確に申し上げます。

なお、本裁判所のあり方の見直しにあたっては、国際社会に対して十分な説明責任を果たすことが緊要であります。この観点から、我が国は平和維持活動予算措置について安保理と主要財政貢献国との間での何らかの対話メカニズムの設立の必要性につき先般のステートメントで言及しましたが、国際刑事裁判所にかかる予算措置に関しても、かかる対話のメカニズムの対象に組み入れることが適当であります。透明性と説明責任を一層高めていくことは、主要財政貢献国が納税者の理解を得て貢献を続けていくために極めて重要と考えます。

議長、

ルワンダ国際刑事裁判所の2004/2005年度予算案は初めて結果重視型予算の構成を踏まえたものになっており、更にこれを奨励します。同予算案では、初めて完了戦略が示された点で前進が見られ、我が国としては、第5委員会非公式協議においてその内容につき精査する用意があります。

安保理決議1512に基づく5名の訴訟裁判官及び45名の臨時ポストについては、事務総長より12,239,600ドルの追加支出が要求されていますが(A/58/550)、右要求の根拠につき説明を求めます。右は、昨年の安保理決議1431に基づき4名の訴訟裁判官及び42の臨時ポストに対し、ACABQ勧告を踏まえ、4,657,600ドルが認められた(A/RES/57/289)こととの対比において、極めて大きな要求額であり、受け入れることはできません。安保理決議1503に基づく検察官の設置に伴う予算増加についても、事務局より責任のある説明を求めます。

5名の追加的な訴訟裁判官により、判決プロセスが迅速に進み、その結果として早期に裁判が完了するとともに、一定の予算節約が得られるとの事務総長の説明には合理性が認められますが、そのために、加盟国の負担を急激に増加させることには同意できません。資源配分についても、ポスト増を当然視するのではなく、既存の人員を機動的に再配置することで、予算圧縮の努力がまずなされるべきです。/p>

マンデート見直しを含めた本裁判所のあり方を検討し、予算の合理化及び予算執行の効率性を追及する方途を探るため、メンバー国の代表からなる評価チームを現地に派遣することを提案します。

議長、

以上申し上げたように、我が国としては、アカウンタビリティーなくして国連活動は納税者の支持を得られるものではないとの強い懸念を表明します。.

有り難うございました。