総会の再活性化(議題55)、国連改革(議題57)、経済・社会関連分野での国連再構築・再活性化(議題58)、国連システムの強化(議題59)に関する総会討議における本村芳行国連代表部大使演説(仮訳)
2003年10月27日
議長、
今日の国際社会の変化は恒常的であり、ダイナミックさを益々増しています。我々は日日新たで多様な課題に直面しています。グローバル化の進展により、世界は一層の相互依存関係にあり、これらの課題解決において多国間の枠組みが有効であることを認識せざるを得ません。我々は、国連が現在の国際社会が持てる最善の枠組みであると信じています。
一方国際社会にとって、国連の妥当性は、現実の世界に対し有効にメッセージを発することができるかにかかっています。このことが特に当てはまるのは、全加盟国から構成され、国連で最も代表制の高い機関である国連総会です。また国際社会が行動をとるに当たり、正統性ある意思決定行う上でも、国連総会は鍵となる役割を果たすものです。総会が憲章上の地位、ミレニアム宣言に銘記された役割を回復するための方途を真剣に探ることの重要性を私が強調するのは、このような背景によるものです。
更に国連は、変化する優先課題への対応能力をも向上させなければなりません。限りある資源で最大限の成果をあげるため、我々加盟国は時間、エネルギー、リソースを最優先課題に振り向けているか、不断に評価しなければなりません。
議長、
まず最初に、我々が特別に関心を払っている総会の再活性化に関連した問題に触れたいと思います。本件については、90年第45回総会以来、様々な観点から議論を積み重ねてきました。今やこれらの議論を整理し、より包括的なアプローチを取るときであると考えます。この点につき、議長の取られているイニシアティヴに敬意を表します。
本日我々は、4議題につき討議するためにここに集まりました。これは、関連する議題をクラスター化することにより、我々の作業の効率性を上げようという試みにおいて、象徴的なステップです。この点についても、議長のご努力を評価申し上げます。
総会の権威と役割を強化するための措置については、まず我々は議長室の強化を支持します。円滑な引き継ぎを確実にし、組織として共有すべき記憶を構築するため、事務局は既存の人員の中から1-2名を議長室に配置すべきです。我々は、総会の実質的事項や先例についての確かな知識を持った専門家が配置されることが望ましいと考えます。
本年我々は6月に議長を選出しましたが、これは目立った進捗でした。しかし、3ヶ月という期間は、議長という重要な職責への準備期間としては依然短く、1年という任期は多くの実質的な仕事をなすには依然短いでしょう。したがって我々は、議長の再任の可能性や、前年の副議長経験者からの議長選出等の可能性も探ることを提案します。また、議長は主要機関の代表者、すなわち主要委員会、安保理、経社理、事務総長、地域グループとの連携を、更に強化すべきと考えます。
また総会は、安保理とも対話の推進を通じて協力を強化する方途を探るべきです。一方、これを実現するためには、総会における議論そのものをインタラクティヴで、より焦点の定まったものにする必要があるでしょう。ここで我々は、総会の作業方法の改善措置に関心を向けなければなりません。
総会、主要委員会の双方において議題を更に合理化する必要性については、これまで議論の中で繰り返し強調されてきました。議題を合併整理し合理化を進められるようルールを導入することを、真剣に考慮すべきでしょう。例えば、数年にわたり議論が延期されているような議題については削除されるべきです。また、議題の各委員会への割り振りについても真剣に見直すべきでしょう。この点大いに合理化の余地があるはずです。
議題の改革については、決議57/270Bに基づき第58会期末までに結論を出すことになっている第2委員会の作業に特に注目しています。私は既に、10月6日第2委員会において行ったステートメントの中で、同委員会の停滞した作業について言及しました。
第2委員会の役割はますます重要になってきています。社会、経済及び関連分野においては、グループ間の対立の中でしばしば議論が立ち往生し、優先事項についてすら、参加者が共通の理解に到らないこともあります。具体的で前向きな成果を得るためには、全ての参加国が立場を調和させ、協力するため一層努力しなければなりません。
決議57/301は、総会通常会期を9月第3週に開始することを定めましたが、これにより委員会審議の時間が相当圧縮される結果となりました。例えば、第3委員会は、約80もの決議案を、例年より1週間短い7週間で審議しなければなりません。私は各国に対し、このような状況を見直し、かつての慣行に戻ることを呼びかけます。また、シンガポール常駐代表が提案したように、10月-12月に集中する各委員会の会期を、ずらして分散することも検討事項です。我々はこの案を支持します。
議長、
ここで私は、国連の改革と強化に関連する問題に移りたいと考えます。
決議57/300の採択以来、同決議に記された行動が、事務総長報告58/351のとおり、着実に履行されつつあることをうれしく思います。
2004-05年度計画予算案において、事務総長は資金の再配置に特に注意を払い、912のアウトプット停止を提案しています。事務総長の努力を評価する一方、我々は、限られた財政的資金の中で最大限の成果を得るよう、活動を一層厳格に優先順位付けすること、時代遅れの活動からは更に資金を再配置することを通じて、予算規模を更に縮小し、一層合理化することを求めます。
我々はまた、広報局再編と、戦略コミュニケーションサービスの推進を含む同局の効率性向上のために昨年取られた具体的なイニシアティヴを評価します。私は、広報に関して既に採択された関連決議や決定に基づき、事務総長がこうした改革を継続することを慫慂したいと考えます。
改革の一つの側面は、具体的な運営上の諸措置の積み重ねです。時にそれは、我々の常日頃の行動にも関わるものです。我々代表団のメンバーも、責任がないとは言えません。我々は先ず何より、貴重な資源の無駄遣いをしてはなりません。例えば、会合が予定時刻よりも遅れて始まるとすると、その間通訳者達は無駄に過ごすしかありませんが、それでも我々は彼らに相当額のお金を払っています。1時間あたりの6カ国語通訳及び支援業務の経費は、1,875ドルであり、20分の遅れによって625ドルが無駄になります。午前に10の会合、午後にも10の会合があったとすると、我々は1日で12,500ドルを失います。ひと月に労働日が22日あるとすれば、無駄は275,000ドルになります。このようなことを4ヶ月も続ければ、我々はたやすく100万ドルを無駄遣いすることになってしまうのです。これは仮説的な計算ではありましょうが、我々が更なる改革推進のために財政的な責任を負う能力を示したいならば、時間に正確であることが決定的に重要で、切迫した必要のあることをはっきりと示しています。
改革のもう一つの側面は、より長期的な、戦略的観点を考慮に入れなければなりません。つまり、国際社会の現実の問題に対処するために、我々がいかに長続きする多国間の枠組みを構築し、運営しうるか、という問題です。
第1に、安保理改革の問題です。10年前総会によって設立された作業部会の議論において、何ら見るべき進展がなく、また停滞状況からの出口が見えないことは遺憾です。
事務総長は、2005年までに国連の変革に関し合意すべきであると提案しています。日本はこの提案を真剣に受けとめており、川口外務大臣が一般討論において提案したように、そうした機会に各国の首脳レベルが集まり、安保理改革をはじめとする国連改革に関し政治的意思決定をすべきであると考えます。
日本は、有識者によるハイレベルパネルの設立という事務総長のイニシアティブをも支持するとともに、大きな関心を持ってその進展をフォローします。日本はこのイニシアティブに対し可能な限りの貢献を行う所存です。
安保理の正統性と有効性を向上させるためには、グローバルな責任を担う意思と能力をともに持った国を、新たな常任理事国として加える必要があります。日本は引き続き安保理改革の実現のために積極的に取り組み、改革された安保理の中で、常任理事国としてより大きな責任を担いたい考えです。
真の国連改革については、国連がどの国もが正統かつ公平と感じ得る世界統治システムになるべきというのが、我々の強固な信念です。加盟国の間に公平感が広く共有されなければ、我々は国連の円滑な運営を望み得ません。我が国は、加盟国間で適切かつ衡平な負担分配を実現することが焦点とならなければならないと信じています。
この観点から、我々は分担率について、適切なタイミングにて、各国の経済実勢や、国連における地位・責任をも反映した、より均衡のとれた公平なものとしていく必要があると考えています。また、加盟国間における、国連事務局職員数の衡平な地理的配分も、とうに達成されているべき課題です。深刻な過小代表は、優先事項として、是正されなければなりません。
PKOは、それぞれのケースにおいて状況に応じ展開されるべきものではありますが、我々はPKOを支える財政的負担についても、加盟国にとり充分納得できるものである必要があると考えています。PKOの設置、改編について予算措置を伴う意思決定が行われる際には、特に主要な財政貢献国に対して透明性が充分確保されなければなりません。こうした財政的貢献については、何らかの対話メカニズムを設けるべきです。
議長、
今や有名となったマブバニ・シンガポール大使の4クライテリアは、安保理についてのみならず、総会、国連全体についてもあてはまるものです。我々は、自らの活動について、諸案件の対処に成功しているか、手続き事項や作業方法を改善しているか、透明でオープンであるか、国際社会に対する信頼と威信を強化しているか、不断に評価しなければなりません。改革は、我々の専心と不断の努力を必要とする継続プロセスです。日本もこのために最大限の努力と貢献をなす用意があります。
ありがとうございました。
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