2003年

 
 

内陸開発途上国閣僚会議における本村国連代表部大使スピーチ(仮訳)

於:カザフスタン共和国アルマティ市
2003年8月28日

議長、
各国代表各位、
国際機関代表各位、
並びにご列席の皆様、

日本政府を代表して、通過輸送に関する内陸開発途上国閣僚会議に出席できることは、私の大きな喜びとするところです。

まず始めに、この機会を利用して、内陸国が直面する通過輸送問題に取り組む初めてのハイ・レヴェル会議開催に向けてイニシアティヴをとられた内陸開発途上国グループ議長国のラオス人民民主共和国に対し、敬意を表します。また会議開催の準備に尽力された事務局、とりわけチョードリー後発開発途上国・内陸開発途上国・小島嶼開発途上国担当上級代表(国連事務次長)に感謝いたします。さらに、今次会議を主催したカザフスタン共和国政府に深甚なる謝意を表明します。

議長、

日本は、経済成長の達成を通じ貧困削減を実現することが必要不可欠であるとの基本理念のもと、世界有数の援助供与国として途上国の直面する開発問題に取り組んできています。なかでも、最も脆弱な経済をもつ国々に対し、特別の関心を払ってきました。例えば、後発開発途上国の大多数が集中しているアフリカ諸国を対象としたアフリカ開発に関する東京国際会議(TICAD)や、小島嶼開発途上国を対象とした太平洋島サミットの開催がその証左です。

海からの隔絶という地理的制約からくる不利益を抱える内陸開発途上国についても、我が国は、脆弱な途上国グループのひとつとして重視しています。今次会議の開催にいたる前の専門家会合では、佐藤前日本国連常駐代表が二度にわたり議長をつとめました。

議長、

中央アジア諸国は、広大なユーラシア大陸の中心に位置し、内陸国の典型です。この地域は、ロシア、中国、南西アジアおよび中東に囲まれ、古くからこれら諸文明の交易・交流の結節点として栄え、シルク・ロードを繋ぐ中心的な役割を担ってきました。世界経済の統合が進む現在、この地域は世界と如何に貿易を行っていくかという課題に直面しています。同諸国の中には、海へ到達するまでに二度も国境を越えなければならない国もあります。

このように内陸開発途上国は地理的制約から国際貿易において高い輸送コストに苦しんでおり、その結果、経済開発において非常に不利な立場に置かれています。高い通過輸送コストの問題に対処していくためには、内陸開発途上国と通過開発途上国およびドナー国がインフラ開発、貿易円滑化、および地域協力の分野において協力を強化することが必要不可欠です。アルマティ行動計画で指摘されているように、内陸開発途上国および通過開発途上国の双方を含む地域経済全体が活性化し、経済規模が拡大することにより、両者とも裨益することができます。このような状況下、内陸開発途上国の主体性と、内陸開発途上国、通過開発途上国およびドナー間の協力関係が不可欠であることは言うまでもありません。このような考えのもと、日本国政府は、経済インフラの強化、円滑で効率的な越境を可能とするソフト面の整備及び地域協力の促進の3点を柱として支援を行っています。

一点目の経済インフラに関しては、日本は従来より内陸開発途上国及び通過開発途上国の双方における運輸インフラの強化に力を入れてきています。例えば、カザフスタンにおいては、鉄道輸送力の向上、道路補修、橋梁建設、アスタナ空港改修等のプロジェクトに対し累計5.6億米ドルに上る援助を行ってきました。我が国はまた、道路・空路輸送システムに関する開発調査も実施しています。各国に対する日本の援助の詳細については、パンフレットをご参照下さい。我が国は、今後も、環境や地域の文化に十分配慮しながら、輸送・通信網などのインフラの強化、維持に対し援助を継続していきます。

第二に、内陸開発途上国にとり、円滑で効率的な越境を可能とする税関手続等、貿易手続面の整備が重要です。このような簡素化、標準化は、内陸開発途上国のみならず、通過開発途上国にも便益をもたらすものです。貿易円滑化の成功のためには国際的なルールの存在が重要な鍵となりますが、日本はWTOの場におけるルール策定過程において各国・国際機関と協力しつつ積極的な役割を果たしていきます。本日ここにお集まりの各国及び国際機関の方々に対しても、WTOルールの策定へ向けた交渉開始への支持を求めたいと思います。また、人造りが国造りの中心であると考える我が国は、貿易円滑化に資する人材育成支援にも力を入れています。例えば、近年、ボツワナ、レソト、マラウイ、ラオス等を対象に、税関手続電算化に関する研修を行ったほか、エチオピア、ウガンダ及びカザフスタン等に対しては、税関行政に関する研修を行っています。また、アゼルバイジャンでは、日本とUNDPの支援によって開発された国家IT戦略を基に、関税システムの電算化が行われました。その結果、一年間で関税収入が倍増し、他のCIS諸国のモデルケースとなっています。我が国は、このような研修やワークショップ等を活用し、貿易関連実務に携わる人材育成を支援していきます。

第三の地域協力についてですが、通過輸送問題を解消するためには隣接する通過開発途上国を含めた地域全体の取り組みが必要です。この観点から、日本がアジア開発銀行と協力して行ってきているメコン地域開発の一例を紹介したいと思います。このプロジェクトは、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、ラオス、中国雲南省を対象とし、国をまたいで広域的に開発するもので、具体的には、地域内を結ぶ基幹交通網の整備を一つの目標としています。例えば、ラオスを通ってベトナムとミャンマーを結ぶ東西回廊は、完成を目前に控えた第二メコン国際橋をもって東と西が一本の道で繋がります。今後、この回廊を有効に活用することにより、周辺の産業振興や観光開発に繋げていくことが重要です。関係諸国が主体性を発揮し、この経済回廊を作り上げていくことを強く希望します。日本としても引き続き、地域協力を支援していく考えです。

議長、

今回初めて、世界規模で開催された今次閣僚会議を契機に、内陸開発途上国、通過開発途上国及びドナー間の協力がさらに深まり、そうした協力によって各地域の経済が活性化され、欧州でみられるように共存共栄していくことを希望します。

私は、今次会議で通過輸送問題を解決するための実際的で有効な指針となる行動計画を採択されることを確信しています。しかし、採択は単なる始まりであります。重要なのは内陸開発途上国、通過開発途上国、ドナー、国際機関及び他の全ての関係者による本行動計画の着実な実施であることは言うまでもありません。日本は開発パートナーとして、この行動計画の実施のために最大限協力していく所存です。

ご清聴ありがとうございました。

   
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内陸開発途上国閣僚会議における本村国連代表部大使スピーチ(仮訳)

於:カザフスタン共和国アルマティ市
2003年8月28日

議長、
各国代表各位、
国際機関代表各位、
並びにご列席の皆様、

日本政府を代表して、通過輸送に関する内陸開発途上国閣僚会議に出席できることは、私の大きな喜びとするところです。

まず始めに、この機会を利用して、内陸国が直面する通過輸送問題に取り組む初めてのハイ・レヴェル会議開催に向けてイニシアティヴをとられた内陸開発途上国グループ議長国のラオス人民民主共和国に対し、敬意を表します。また会議開催の準備に尽力された事務局、とりわけチョードリー後発開発途上国・内陸開発途上国・小島嶼開発途上国担当上級代表(国連事務次長)に感謝いたします。さらに、今次会議を主催したカザフスタン共和国政府に深甚なる謝意を表明します。

議長、

日本は、経済成長の達成を通じ貧困削減を実現することが必要不可欠であるとの基本理念のもと、世界有数の援助供与国として途上国の直面する開発問題に取り組んできています。なかでも、最も脆弱な経済をもつ国々に対し、特別の関心を払ってきました。例えば、後発開発途上国の大多数が集中しているアフリカ諸国を対象としたアフリカ開発に関する東京国際会議(TICAD)や、小島嶼開発途上国を対象とした太平洋島サミットの開催がその証左です。

海からの隔絶という地理的制約からくる不利益を抱える内陸開発途上国についても、我が国は、脆弱な途上国グループのひとつとして重視しています。今次会議の開催にいたる前の専門家会合では、佐藤前日本国連常駐代表が二度にわたり議長をつとめました。

議長、

中央アジア諸国は、広大なユーラシア大陸の中心に位置し、内陸国の典型です。この地域は、ロシア、中国、南西アジアおよび中東に囲まれ、古くからこれら諸文明の交易・交流の結節点として栄え、シルク・ロードを繋ぐ中心的な役割を担ってきました。世界経済の統合が進む現在、この地域は世界と如何に貿易を行っていくかという課題に直面しています。同諸国の中には、海へ到達するまでに二度も国境を越えなければならない国もあります。

このように内陸開発途上国は地理的制約から国際貿易において高い輸送コストに苦しんでおり、その結果、経済開発において非常に不利な立場に置かれています。高い通過輸送コストの問題に対処していくためには、内陸開発途上国と通過開発途上国およびドナー国がインフラ開発、貿易円滑化、および地域協力の分野において協力を強化することが必要不可欠です。アルマティ行動計画で指摘されているように、内陸開発途上国および通過開発途上国の双方を含む地域経済全体が活性化し、経済規模が拡大することにより、両者とも裨益することができます。このような状況下、内陸開発途上国の主体性と、内陸開発途上国、通過開発途上国およびドナー間の協力関係が不可欠であることは言うまでもありません。このような考えのもと、日本国政府は、経済インフラの強化、円滑で効率的な越境を可能とするソフト面の整備及び地域協力の促進の3点を柱として支援を行っています。

一点目の経済インフラに関しては、日本は従来より内陸開発途上国及び通過開発途上国の双方における運輸インフラの強化に力を入れてきています。例えば、カザフスタンにおいては、鉄道輸送力の向上、道路補修、橋梁建設、アスタナ空港改修等のプロジェクトに対し累計5.6億米ドルに上る援助を行ってきました。我が国はまた、道路・空路輸送システムに関する開発調査も実施しています。各国に対する日本の援助の詳細については、パンフレットをご参照下さい。我が国は、今後も、環境や地域の文化に十分配慮しながら、輸送・通信網などのインフラの強化、維持に対し援助を継続していきます。

第二に、内陸開発途上国にとり、円滑で効率的な越境を可能とする税関手続等、貿易手続面の整備が重要です。このような簡素化、標準化は、内陸開発途上国のみならず、通過開発途上国にも便益をもたらすものです。貿易円滑化の成功のためには国際的なルールの存在が重要な鍵となりますが、日本はWTOの場におけるルール策定過程において各国・国際機関と協力しつつ積極的な役割を果たしていきます。本日ここにお集まりの各国及び国際機関の方々に対しても、WTOルールの策定へ向けた交渉開始への支持を求めたいと思います。また、人造りが国造りの中心であると考える我が国は、貿易円滑化に資する人材育成支援にも力を入れています。例えば、近年、ボツワナ、レソト、マラウイ、ラオス等を対象に、税関手続電算化に関する研修を行ったほか、エチオピア、ウガンダ及びカザフスタン等に対しては、税関行政に関する研修を行っています。また、アゼルバイジャンでは、日本とUNDPの支援によって開発された国家IT戦略を基に、関税システムの電算化が行われました。その結果、一年間で関税収入が倍増し、他のCIS諸国のモデルケースとなっています。我が国は、このような研修やワークショップ等を活用し、貿易関連実務に携わる人材育成を支援していきます。

第三の地域協力についてですが、通過輸送問題を解消するためには隣接する通過開発途上国を含めた地域全体の取り組みが必要です。この観点から、日本がアジア開発銀行と協力して行ってきているメコン地域開発の一例を紹介したいと思います。このプロジェクトは、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー、ラオス、中国雲南省を対象とし、国をまたいで広域的に開発するもので、具体的には、地域内を結ぶ基幹交通網の整備を一つの目標としています。例えば、ラオスを通ってベトナムとミャンマーを結ぶ東西回廊は、完成を目前に控えた第二メコン国際橋をもって東と西が一本の道で繋がります。今後、この回廊を有効に活用することにより、周辺の産業振興や観光開発に繋げていくことが重要です。関係諸国が主体性を発揮し、この経済回廊を作り上げていくことを強く希望します。日本としても引き続き、地域協力を支援していく考えです。

議長、

今回初めて、世界規模で開催された今次閣僚会議を契機に、内陸開発途上国、通過開発途上国及びドナー間の協力がさらに深まり、そうした協力によって各地域の経済が活性化され、欧州でみられるように共存共栄していくことを希望します。

私は、今次会議で通過輸送問題を解決するための実際的で有効な指針となる行動計画を採択されることを確信しています。しかし、採択は単なる始まりであります。重要なのは内陸開発途上国、通過開発途上国、ドナー、国際機関及び他の全ての関係者による本行動計画の着実な実施であることは言うまでもありません。日本は開発パートナーとして、この行動計画の実施のために最大限協力していく所存です。

ご清聴ありがとうございました。