2012年

(和文要旨)


「開発に対する脅威としての薬物・犯罪問題」テーマ別討論
2012年6月26日
兒玉大使ステートメント

 


   各パネリストの発言に感謝します。3点述べたいと思います。


   第1に,世界的な薬物問題として,アヘン及びヘロインの流通,高濃度大麻の世界的普及,アフリカを中継地とするコカイン不正取引,先進国における合成薬物の製造・濫用などがあります。世界の不法取引の総額は1兆3000億ドルと見積もられており,これは世界のODA総額の10倍近くにも相当し,世界の軍事費総額にも近い数字です。このことから見ても,生産国,消費国,流通国全てのステークホルダーが,協力してこれらの犯罪と戦っていく必要があります。そのために,国際的な薬物統制条約の枠組みを堅持すべきであり,薬物取引の非犯罪化に対しては慎重であるべきと考えます。


   第2に,薬物取引と組織犯罪は,腐敗を助長し,持続可能な経済成長を阻害します。また,人間の安全保障の観点からは,開発とは個人の保護とエンパワーメントを促進することで達成されるものです。しかしながら,薬物取引・組織犯罪は,個人の安全を脅かすのみならず,社会全体が正当な生計手段を確保することを阻害します。ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた薬物・犯罪問題の主流化に際しては,我々は,英知を結集して生産国における代替作物の特定・マーケティング支援を含む包括的アプローチをとることが不可欠と考えます。また,市民のエンパワーメントに加え,警察や税関等の法執行職員のエンパワーメントが喫緊の課題であり,これら職員のキャパシティ・ビルディングと腐敗防止が必要です。


   最後に,この観点から,UNODCの地域プログラムがキャパシティ・ビルディングや代替開発に貢献していることを高く評価しています。我が国は,UNODCを通じて,東南アジア,並びにアフガニスタン及び近隣諸国における地域プログラムを実施しています。その一つとして,今年から,UNODC及びロシアと共同で,アフガニスタン警察職員に対する麻薬取締訓練プログラムが実施されることになっており,我が国からの専門家の派遣も行う予定です。


   薬物取引・組織犯罪への対策には,国内的・地域的・国際的レベルにおける全てのステークホルダーの協力が重要であり,我が国は今後も国際的な協力を続けていきます。