経済社会理事会人道セグメントにおける北岡伸一大使ステートメント
(仮訳)
平成17年7月15日
国際連合日本政府代表部
副議長、
かつてなく高い関心を集めている本年の経社理人道セグメントの議長を務められていることに祝意を表します。エグランド人道支援調整担当次長が何度か指摘したとおり、インド洋津波のつらい経験から生じた前向きな動きは、連帯感をもって国際協力を行う必要性についての認識が高まったことと、そのような認識に基づく国際社会の連携の取れた対応がとられたことです。人道危機における相互協力という新たな時代に向かっていく中で、この前向きな動きは最大限活用されるべきです。経社理人道セグメントは、この分野における国際社会の努力を強化するために重要な役割を有しています。このような観点から、一方において地方レベル、国レベル、地域機関レベル、国際社会レベルのあらゆる側面における対応能力の強化と、他方において国際協力を進める重要性に焦点を当てた事務総長報告を歓迎します。双方の目標について、簡潔に述べたいと思います。
第一に、人道対応能力についてですが、最も前線の対応は地方及び国レベルです。しかし、地方や国の当局が危機の規模に圧倒されているときには、国際社会が連帯と人間の安全保障の観点を踏まえて支援を行うべきです。そのような支援にあたって国連は中心的役割を果たすべきですが、脆弱な人々の支援と保護に関するニーズに効果的に応えるためには、国連自体の能力も強化される必要があります。専門性やリーダーシップの欠如が効果的な支援の妨げになりますが、国内避難民への支援や保護のときに見られるように、明確にマンデートが定義されていないことも障害になります。総会が国内避難民支援のための最もよい機構は何かを含め、国内避難民の問題に取り組むことを期待します。
第二に、既存の資産を有効活用するためには、多くの国に散らばっている技術的専門性を特定し、危機が起こった場合には迅速に動員できる体制を構築する努力を強めるべきです。国連と加盟国ないし地域機関とのスタンド・バイ・アレンジメントは、そのような専門性を提供する上で大いに価値があるでしょう。このようなアレンジメントは、政治的意志の欠如、オペレーションの互換性のなさ、資金不足によって妨げられることもあります。資金不足を克服する最も適当な方法も含め、関係者間の議論を促進することに我が国としても貢献します。さらに、国際的な人道支援活動を調整するにあたって、人道調整官の能力と権限を強化すべきです。人道調整官は重複を排除するのみならず、戦略的計画作りも行うべきです。
資金メカニズムの向上については、人道危機の初期段階で効果的な対応を可能にするために必要となる資金を迅速に手に入れる方法として、中央緊急回転基金を改革することを支持します。基金の規模、対象となるプロジェクト、説明責任に関するメカニズムについて更に議論することを期待します。ただし、資金貢献が十分に得られていない危機に関する問題に取り組むためには、更なる努力が必要です。新たな資金メカニズムの創設が国際協力に使える全体の資金量を必ずしも増やすわけではないことを我々は経験から知っています。
ここでも、津波支援は重要な教訓となります。津波支援において新たに人道支援に貢献した国の数や、民間部門からの貢献の大きさは前例を見ないものでした。人道危機における相互協力を進めるためのパートナーシップに取り組む努力を倍増すべきです。これは単に貢献を求めるだけでは達成されず、国際的な人道支援に関するオーナーシップを多くの国々に持ってもらう必要があります。このためには、これまでドナーになってこなかった国々との政策対話や、人道支援の実施にあたっての協力強化、国連人道機関の人道要員を地理的に広い範囲から雇用すること等が必要です。我が国はパートナーシップ拡大に向け対話の促進に努めてきましたが、今後とも努力を継続していきます。民間部門からの資金の潜在的可能性も十分に検討されるべきです。
最後に、このセグメントの範囲は越えてしまうかもしれませんが、防災に取り組む重要性を強調したいと思います。インド洋の津波被害は、被害の軽減策が図られていない場合に自然災害が如何に大きな被害をもたらすかを今一度想起させました。自然災害は人命を奪うだけではなく、経済的・社会的インフラストラクチャーを破壊し、経済発展を後退させます。自然災害の影響は被災民の心にも長く残り、トラウマから回復するためには特別のケアが必要です。国の開発計画に防災と被害の軽減を含めることによって、自然災害に強い社会の創設に向けた努力を倍増すべきです。国連世界防災会議で採択された兵庫行動枠組みは着実に実施される必要があります。防災について総会で更に議論されることを期待します。
我が国は今年の人道セグメントの明確な焦点を強く支持します。経社理と総会の役割分担を踏まえ、人道支援の実施に関する事項が経社理の焦点になることが適当と考えます。そのような焦点は経社理による国連人道支援活動に関する政策的ガイダンスを強化すると考えます。
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