2004年

 
 

北岡伸一日本政府国連代表部次席大使による演説(仮訳)
議題105(b)人権及び基本的自由の効果的な行使の改善ための選択的方法を含む人権問題
議題105(c) 人権状況及び特別報告者・代表の報告

2004年10月26日

議長、

基本的人権が普遍的な価値であることは、国際社会で共有された認識であり、人権は世界の全ての地域において推進され、擁護されなければなりません。ウィーン人権宣言及び行動計画に規定されているとおり、全ての人権の推進と擁護は、国際社会の正当な関心事項となっています。いかなる国家といえども、人権を促進し擁護するという、基本的責務から逃れることはできません。同時に、我が国は、国際社会が、当該国の歴史、文化、伝統といった人権問題に影響を与えている特定の状況を考慮に入れつつ、当該国の人権状況改善努力を慫慂していくことが重要と考えています。

このような観点から、いくつかの国の人権状況について申し述べたいと思います。

議長、

本年の人権委員会で再び採択された北朝鮮の人権状況決議において、拉致問題を含む人権状況に対する懸念が表明されたことを想起し、日本は、その決議に基づき、ウィティト・ムンタボーン教授が北朝鮮の人権状況に関する特別報告者に任命されたことを歓迎します。決議で表明された人権侵害の懸念に対処するため、ムンタボーン特別報告者がその任務を遂行するにあたって、日本としても最大限の協力を行います。この決議に表明された人権侵害の懸念が解明されるとともに、平壌宣言に表明されたすべてのコミットメントが着実に履行されていくことは、日本の真摯な望みであります。

ミャンマーにおいては、本年5月より8年ぶりに国民会議が再開され、政府との和平に応じた少数民族グループもこれに参加しました。日本は、このような動きは、同国の民主化に向けた重要な一歩となり得るものとして注目しています。今月19日には首相交代等の動きもありましたが、我が国は、ミャンマーにおける民主化プロセスが遅れることはないと信じます。このために、我が国は、全ての関係者が関与した形での国民和解と民主化が進展するよう、同国の前向きな動きを引き出すべく、今後もねばり強く働きかけを続けていく考えです。また、我が国は、ミャンマーにおける国民和解及び民主化を推進する上で重要な役割を果たすラザリ事務総長特使の努力を全面的に支持しており、ラザリ特使、そしてピネイロ特別報告者がミャンマーを再訪できるようミャンマー政府に早期の受け入れを求めます。

日本は昨年8月にスーダン政府と共催で、UNICEFとともに、女性性器切除に反対するシンポジウムを、スーダンのハルツームにおいて開催しました。このように共同で人権状況の改善に向けた取り組みを行った経験があるからこそ、ダルフール地域の住民が直面している深刻な人権状況と、国際社会の期待を満たしていないスーダン政府による取り組みの遅れを深く懸念しています。このような立場から、我が国総理と外務大臣は、スーダン外相が9月に訪日した際、それぞれ会談の機会をとらえて、自国民の人権と自由を保障することの責務を十分に自覚して、スーダン政府がダルフールに於ける危機の解決打開のため、早急に国際社会が要請する具体的行動を取ることを求めました。日本は、スーダン政府がアフリカ連合監視団の人数と義務の拡大を決定したことを歓迎し、スーダン政府と反政府側との間で現在行われている交渉が、早期に危機の平和的解決に向けた和解に至ることを期待します。

日本は、カンボジアが、クメール・ルージュ(KR)裁判に関する国連との合意文書を批准したことを歓迎します。カンボジアにおいて、KR元指導者たちの犯罪を公正な審判に付すことは、カンボジアにおける法の支配を強化し、不処罰の文化との決別、良き統治を進展させていく上で極めて重要です。我が国は、KR裁判の実現に向けたカンボジアの努力への支援に中心的な役割を果たしており、加盟国に対して、早期の裁判のために積極的な貢献を行うことを求めます。

議長、

人権の推進・擁護のためには、各国がこれに不断に取り組んでいくことが求められます。我が国も例外ではなく、例えば、被害者の人権を著しく侵害するトラフィッキングに関しては、被害者の保護及び法執行の強化に焦点をあてつつ、制度を改善し、政府を上げてこの問題の解決に取り組んでいます。また、送出国、経由国、目的国における包括的な国際的アプローチが必要とされるとの観点から、近隣諸国との協力を進めています。

また、人権の擁護・促進には、例えば教育のような長期の取組が重要であり、この関連で、本年人権委員会で決定された「人権教育世界プログラム」を歓迎します。さらに、特に紛争下のような緊急時に最も負の影響を受ける社会的弱者を力づけることが重要であることも忘れてはなりません。日本は、このような長期的視野に立った取組にも引き続き国際社会と協力していきます。

人権の推進・擁護のためには、先ず、各国が自国の状況の改善に常に取り組むことが求められます。我が国は、人権状況の改善を自らの問題として取り組むと共に、国際社会の共通の問題として、国際社会、特に国連と協力しつつ、人権状況の改善に取り組んで行く所存です。

ありがとうございました。

以上

   
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(c) Permanent Mission of Japan to the United Nations
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Tel: 212-223-4300

2004年

 
 

北岡伸一日本政府国連代表部次席大使による演説(仮訳)
議題105(b)人権及び基本的自由の効果的な行使の改善ための選択的方法を含む人権問題
議題105(c) 人権状況及び特別報告者・代表の報告

2004年10月26日

議長、

基本的人権が普遍的な価値であることは、国際社会で共有された認識であり、人権は世界の全ての地域において推進され、擁護されなければなりません。ウィーン人権宣言及び行動計画に規定されているとおり、全ての人権の推進と擁護は、国際社会の正当な関心事項となっています。いかなる国家といえども、人権を促進し擁護するという、基本的責務から逃れることはできません。同時に、我が国は、国際社会が、当該国の歴史、文化、伝統といった人権問題に影響を与えている特定の状況を考慮に入れつつ、当該国の人権状況改善努力を慫慂していくことが重要と考えています。

このような観点から、いくつかの国の人権状況について申し述べたいと思います。

議長、

本年の人権委員会で再び採択された北朝鮮の人権状況決議において、拉致問題を含む人権状況に対する懸念が表明されたことを想起し、日本は、その決議に基づき、ウィティト・ムンタボーン教授が北朝鮮の人権状況に関する特別報告者に任命されたことを歓迎します。決議で表明された人権侵害の懸念に対処するため、ムンタボーン特別報告者がその任務を遂行するにあたって、日本としても最大限の協力を行います。この決議に表明された人権侵害の懸念が解明されるとともに、平壌宣言に表明されたすべてのコミットメントが着実に履行されていくことは、日本の真摯な望みであります。

ミャンマーにおいては、本年5月より8年ぶりに国民会議が再開され、政府との和平に応じた少数民族グループもこれに参加しました。日本は、このような動きは、同国の民主化に向けた重要な一歩となり得るものとして注目しています。今月19日には首相交代等の動きもありましたが、我が国は、ミャンマーにおける民主化プロセスが遅れることはないと信じます。このために、我が国は、全ての関係者が関与した形での国民和解と民主化が進展するよう、同国の前向きな動きを引き出すべく、今後もねばり強く働きかけを続けていく考えです。また、我が国は、ミャンマーにおける国民和解及び民主化を推進する上で重要な役割を果たすラザリ事務総長特使の努力を全面的に支持しており、ラザリ特使、そしてピネイロ特別報告者がミャンマーを再訪できるようミャンマー政府に早期の受け入れを求めます。

日本は昨年8月にスーダン政府と共催で、UNICEFとともに、女性性器切除に反対するシンポジウムを、スーダンのハルツームにおいて開催しました。このように共同で人権状況の改善に向けた取り組みを行った経験があるからこそ、ダルフール地域の住民が直面している深刻な人権状況と、国際社会の期待を満たしていないスーダン政府による取り組みの遅れを深く懸念しています。このような立場から、我が国総理と外務大臣は、スーダン外相が9月に訪日した際、それぞれ会談の機会をとらえて、自国民の人権と自由を保障することの責務を十分に自覚して、スーダン政府がダルフールに於ける危機の解決打開のため、早急に国際社会が要請する具体的行動を取ることを求めました。日本は、スーダン政府がアフリカ連合監視団の人数と義務の拡大を決定したことを歓迎し、スーダン政府と反政府側との間で現在行われている交渉が、早期に危機の平和的解決に向けた和解に至ることを期待します。

日本は、カンボジアが、クメール・ルージュ(KR)裁判に関する国連との合意文書を批准したことを歓迎します。カンボジアにおいて、KR元指導者たちの犯罪を公正な審判に付すことは、カンボジアにおける法の支配を強化し、不処罰の文化との決別、良き統治を進展させていく上で極めて重要です。我が国は、KR裁判の実現に向けたカンボジアの努力への支援に中心的な役割を果たしており、加盟国に対して、早期の裁判のために積極的な貢献を行うことを求めます。

議長、

人権の推進・擁護のためには、各国がこれに不断に取り組んでいくことが求められます。我が国も例外ではなく、例えば、被害者の人権を著しく侵害するトラフィッキングに関しては、被害者の保護及び法執行の強化に焦点をあてつつ、制度を改善し、政府を上げてこの問題の解決に取り組んでいます。また、送出国、経由国、目的国における包括的な国際的アプローチが必要とされるとの観点から、近隣諸国との協力を進めています。

また、人権の擁護・促進には、例えば教育のような長期の取組が重要であり、この関連で、本年人権委員会で決定された「人権教育世界プログラム」を歓迎します。さらに、特に紛争下のような緊急時に最も負の影響を受ける社会的弱者を力づけることが重要であることも忘れてはなりません。日本は、このような長期的視野に立った取組にも引き続き国際社会と協力していきます。

人権の推進・擁護のためには、先ず、各国が自国の状況の改善に常に取り組むことが求められます。我が国は、人権状況の改善を自らの問題として取り組むと共に、国際社会の共通の問題として、国際社会、特に国連と協力しつつ、人権状況の改善に取り組んで行く所存です。

ありがとうございました。

以上