第59回国連総会第4委員会議題77:「全ての側面における平和維持活動の問題全体の包括的レビュー」における北岡国連大使ステートメント(仮訳)
2004年10月26日
議長、
PKOは、紛争解決に向けての有用な選択肢です。日本は、PKOに対し、PKO分担金の負担に加え、これまで要員の提供、任意拠出金の供与、物資協力などの直接的な形で積極的に協力を行うとともに、和平プロセスの推進や平和構築活動に従事することにより貢献を行ってきました。
いま、PKOはアフリカを中心に拡大を続けています。このようなPKOの拡大は、部隊貢献国のみならず、財政的負担国を含めた加盟国の一層の協力なくしては成り立たないものであります。我が国としても、国際社会の責任ある一員として応分の責任を果たしていく所存であります。
他方で、各国の提供できる資源は無限ではなく、PKOの拡大により、人的・資金的なリソースの手当が大きな問題となっております。我が国はかねてからPKOの効果的・効率的な運用の必要性を指摘してきました。この観点から、同一地域に展開するミッション間の資源の融通の可能性を更に追求すべきであり、また、活動の定期的な見直し、特にマンデートの達成度合いに応じた活動の縮小は着実に実施されるべきであると考えます。
更に、今日PKOが平和構築への貢献を通じて国際社会に果たす役割の大きさに鑑みれば、その質と規律について、国連は従来よりも一層重い責任を負っていることを認識する必要があります。その観点から、PKO活動の評価はより広い視野で客観的に行われるべきであり、その文脈では、効率性や活動の質の観点からの評価も必要です。
議長、
国際社会は、全ての平和維持活動ミッションが所期の成果を達成しているわけではないことは認めなければなりません。特に、平和構築などを含む複合的なミッションの活動の難しさを直視する必要があります。いわゆる「破綻国家」や紛争後の不安定な段階にある国を助けることに困難が伴うことは当然でありましょう。平和構築を含む複合的なミッションに関する政策に関して包括的な見直しを行い、国際社会としてこのような困難なタスクに挑戦していく戦略・方針を策定すべきであると考えます。
これに関し、我が国としては、ownershipとpartnershipが効果的にかみ合うことの重要性を指摘したいと思います。即ち国際社会による支援は、紛争地域の政府・国民の自助努力に基づき、これを支援する形で行われることが最も望ましいと考えます。アフリカ諸国は、開発の分野ではNEPADという形で自らのイニシアティブを前提にした国際支援との連携を目指しており、我が国もTICADプロセスにおいてこれを積極的に支援しています。人間の安全保障を含む平和と安全の分野においても、紛争地域の政府や住民が問題解決に向けて自らのownershipを打ち出していくことが何より重要であると考えます。たとえ「破綻国家」であっても地域のコミュニティは一定のガナバンスを確保している場合もあり、彼らのownershipを高めていくような国際支援の在り方が追求されなければならないと考えます。
また、このような地域のownership尊重の観点から、地域機関の活用は極めて適切なことと考えます。我が国はECOWASが西アフリカの紛争において示したイニシアティブや、AUのブルンジ和平プロセスへの貢献及びダルフールにおいて示しているコミットメントを高く評価いたします。また、このようなアフリカ諸国の平和維持活動能力を高めるために、装備品や訓練の提供が行われた例があります。このように、各国が装備品や訓練を提供することも極めて適切であると考えます。
なお、平和構築的な活動においては、現地のカントリー・チームやブレトンウッズ機関との連携をより強化していく必要があります。スーダンの南北問題に関する事務総長報告において、平和構築分野においてはカントリーチームが計画造りを主導しており、また、世銀とUNDPによる合同の評価チームが派遣されたと報告されていますが、このような協力こそが必要であると考えます。また、将来は、紛争後の地域において産業振興を含め、持続可能な発展につながるビジネスを生み出すことの重要性に鑑み、民間部門の知見をより活用していくことも検討すべきであると考えます。
議長、
このような平和活動の機能の変化や様々な機関との連携の重要性に鑑み、日本としても、今、世界でどのような国際協力が必要とされ、それに携わる人材の何が求められるのかを議論するセミナーを近々開催する予定です。人材の育成なくして効果的な平和活動はなしえないと考えます。
議長、
最後に、平和維持活動局の職員の採用に言及したいと思います。我が国は、同局の最近の改善努力を認めつつも、依然として存在する地理的バランスの不均衡に懸念を表明し、職員数が過小または全く在籍していない国の代表制を改善するための措置を直ちにとることを事務総長に求めた総会決議56/293の履行の必要性を強調したいと思います。
ありがとうございました。 |