経社理人道セグメントにおける北岡大使ステートメント(仮訳)
2004年7月12日
議長、
エグランド人道調整担当次長による人道支援を巡る現状と課題に関する説明を多とします。エグランド次長も指摘していた通り、人道支援活動に対して一部の現地社会の認識や受け入れ方に変化が見られます。このような変化は、現地社会に大きな影響をもたらすようになった人道活動の規模の拡大や、支援活動における軍の関与の増大が特に原因となっています。このような観点から、人道支援活動と現地社会との関係や人道支援活動における軍の関与についての考えを述べます。
議長、
人道支援関係者が現地社会に受け入れられるためには、困難に直面している人々が主役であることを肝に銘じることが重要と考えます。人道支援関係者は現地の人々が問題に対処する努力を手伝うことによって、あくまで脇役となるべきです。言い換えれば、現地社会の人々が自分たちの生活状況を向上する過程においてオーナーシップを有するべきです。人道支援が必要とされる混乱した状況の中でも、できるだけ早い段階で現地の人々が固有の社会的・文化的長所を生かすべきです。
現地の人々のオーナーシップを確保する上で有用なアプローチがいくつかあります。第一に、人道支援関係者は現地の伝統や文化を尊重し、現地社会との対話に努めることが重要です。難民キャンプは長老に対する尊敬などの現地の習慣を尊重して運営されるべきですし、現地のNGOが存在するときには最大限その役割が活用されるべきです。第二に、地域機関は隣人として重要な役割を果たすことができ、これも広い意味でのオーナーシップといえます。我が国には支援を必要としている人々を保護し支援するための措置を地域機関が益々取るようになっていることを歓迎します。第三に、人道支援が必要とされる早い段階から、現地の能力向上を通じて、自立を模索する道を支援すべきです。このような観点から、従来人道支援機関が役目を終えてから展開していた国連の開発機関が、人道機関が活動している段階から現地にプレゼンスを確保し、人道支援から開発への円滑な移行に努めていることを歓迎します。これはまた人間の安全保障における重要な側面でもあります。
人道支援活動への軍の関与は最近よく議論される問題の一つです。人道支援関係者は一般に、人道支援に対する認識を変化させるとして、軍による人道支援活動への関与に慎重と理解しています。一方で、イラクに関する安保理決議1546ではイラクの人々のニーズが満たされるよう、人道・復興支援活動のために軍も含めた多国籍軍への貢献を要請しています。
このように人道支援活動の実施にあたって軍の関与が不可欠な事例もあると思います。軍の関与については、現地社会による認識のみならず、支援を必要とする人々に支援を届けるためには何をすべきかとの視点から議論される必要があります。人道支援の本来の目的に鑑みて、軍の活用に関する困難な決断が避けられないこともあるでしょう。個々の事例によって状況は異なるため、一般的な基準作りには自ずと限界があり、ケース・バイ・ケースの検討が必要とされると思います。そのような観点から、アフガニスタンのPRT等をケース・スタディとして、軍の関与が人道支援に与えた影響を研究する国連のアプローチを我が国は支持します。
最後に、自然災害に触れたいと思います。日本も自然災害に多く見舞われ、1995年の阪神・淡路大震災では6433名が犠牲となりました。この震災では、災害管理意識と絆の強いコミュニティにおいて被害が軽減されたとの事例が認められています。平時から、災害時にどのような行動をするのかがよく認知され、お互いに助け合える体制を整えていくことが重要であるとの教訓を学びました。国のレベルから個々人のレベルまで、あらゆるレベルの関係者がオーナーシップをもつことが重要です。
自然災害は安全や国の持続的な発展にとって大きな障害です。したがって、自然災害を予防し、備えによって被害を軽減し、迅速に対処する体制の構築が重要です。明年1月に神戸で開催される国連世界防災会議においては、防災の必要性や災害に強い社会の創造に関する認識が高まることを期待しています。さらに、コミュニティに強さを与える防災に関する知識や経験が共有され、国の開発において防災を意識する潮流が作り上げられることを期待しています。今回の会議が充実した成果を生むよう、加盟各国の積極的な参加を呼びかけたいと思います。
議長、
世界各地で危険を顧みずに活動している人道支援関係者に心から敬意を表します。彼らの献身的努力にもかかわらず、人道支援を巡る環境には課題が山積しています。我々の直面する課題に加盟国が一致して取り組むにあたって、人道支援の議論に集中する唯一の国連の枠組みである経済社会理事会人道セグメントが貢献することを期待します。 |