2011年

第55回国連婦人の地位委員会における橋本ヒロ子日本代表ステートメント
(平成23年2月24日)
(仮訳)

 

議長,

日本国政府を代表して,議長をはじめとするビューローメンバーとこの会合の準備に献身的な努力をされたすべての関係者に心から謝意と敬意を表します。

 

議長,

我が国は,バチェレ事務局長の強力なリーダーシップのもと,本年1月にUN Womenが正式に活動を開始したことを心より歓迎します。

昨年は,3月に「北京+15」が開催されたのに続き,7月にはUN Women設立が決定され,また10月には,女性・平和・安全に関する安保理決議第1325号採択後10周年を記念する安保理閣僚級公開討論が開催されるなど,ジェンダー分野に関する関心が国際的に非常に高まった年であったと言えます。
本年もUN Womenの活動開始を契機に,ジェンダー分野に対する国際的な機運が更に高まり,この分野での取組が着実かつ具体的に進展することを期待しています。

 

議長,

昨年の記念会合において,我が国は,第3次男女共同参画基本計画を2010年中に策定し,男女共同参画社会の実現に取り組んでいくとの力強い意志を表明しました。そのコミットメントどおり,昨年12月に閣議決定された同基本計画では,我が国が目指すべき社会像を描いています。我が国は,①固定的性別役割分担意識をなくした男女平等の社会,②男女の人権が尊重され,尊厳を持って個人が生きることのできる社会,③男女が個性と能力を発揮することによる,多様性に富んだ活力ある社会,④男女共同参画に関して国際的な評価を得られる社会に向けて邁進してまいります。

 

また,この基本計画において,「科学技術・学術分野における男女共同参画」や「男女共同参画を推進し多様な選択を可能にする教育・学習の充実」を重点分野として掲げています。「科学技術・学術分野における男女共同参画」においては,女性研究者の登用及び活躍の促進を加速するため,女性研究者の出産・子育て等と研究との両立のための環境作りや,女子学生・生徒の理工系分野の進路選択の支援を図ることとしています。日本学術会議を初めとする我が国の学術諸団体も、今回のメインテーマに関して積極的に活動を行っています。

 

現在、日本では、約6割の女性が第一子出産前後に労働市場から退出しており、日本の女性の労働力率は,30歳代を谷とし,20歳代後半と40歳代後半が山になるいわゆるM字カーブを描いているのが現状です。また,長期的には改善傾向にあるものの,先進諸外国と比較すると依然として男女間の平均賃金に格差が存在しています。


女性の活躍が、我が国経済社会の活性化のカギである-こうした認識が広がっています。新しい男女共同参画基本計画でも,この視点を強調し,女性の就業率等について具体的な数値目標を定め,女性の能力発揮促進のための支援や女性の継続就業等に対する支援などに引き続き積極的に取り組むこととしております。また、男性に対しても,長時間労働の抑制などの働き方の見直しや,固定的性別役割分担意識の解消,家事・育児への参加促進などの取組を進めていきます。

 

さらに,第3次男女共同参画基本計画に基づく取組については,関係閣僚と有識者からなる男女共同参画会議とその下に設置する専門調査会において,定期的にフォローアップを行い,取組を促していくこととしています。

 

議長,
我が国は,APEC議長として,昨年9月にAPEC女性リーダーズネットワーク会合,男女共同参画担当者ネットワーク会合,10月に女性起業家サミット等を開催しました。これらの会合は,女性の経済的エンパワーメントを促進し,女性リーダーのネットワークを深める契機となりました。

完全雇用とディセントワークへの女性の平等なアクセスを確保するためには,基礎教育における男女の就学格差の解消が重要です。女子の就学を妨げる要因の一つとして,十分に教育を受けた女性教員やカリキュラムにおけるジェンダー配慮,安全な女子トイレなどの適切な学習環境が整っていないことが挙げられます。我が国は昨年9月のMDGs国連首脳会合の機会に菅総理が発表した「スクール・フォー・オール」モデルの下,女子を含むすべての子どもと若者が質の高い教育を受けることができるよう,学習環境の包括的な改善に資する支援を推進していきます。


また,女性・平和・安全のアジェンダの推進に関し,昨年10月の安保理閣僚級公開討論会に出席した菊田外務大臣政務官が述べたとおり,我が国は,UN Womenが安保理決議1325履行指標の機能化及び平和構築への女性の参画の促進において,国連システムにおける主導的役割を果たすことを期待しています。その観点から,我が国はアフガニスタンの平和の定着強化を目指し,女性に対する暴力撤廃のためのアフガニスタン政府委員会に対するUN Womenによる支援事業に,450万ドルを拠出しました。我が国は,UN Women初代執行理事国として,同機関の活動に積極的に貢献していく考えです。

 

議長,
現在,我が国は,女子差別撤廃委員会からの最終見解に対するフォローアップに政府一丸となって取り組んでおります。我が国の女性の地位向上は、国連など国際的な動きと連動しながら、女性団体などの力強い運動にも支えられ、進展してきたところであり,引き続き,国際社会,国際機関,そしてNGOを含む市民社会との協力を密にしていく所存でございます。

 

ありがとうございました。