原口幸市日本政府国連代表部常駐代表による演説(仮訳)
第59回国連総会本会議
議題105 (b) 人権問題
国連人権教育の10年
2004年12月10日 於:ニューヨーク
議長、
すべての国家が、人権と基本的自由の擁護と促進のために実効的な措置を講じる責任を負うことは、我々の共通の認識です。そして、すべての人々の人権が尊重される社会を実現するために、社会の個々のメンバーが、他の人々の人権を尊重しなければならないことを理解することを確保することが不可欠です。
この点で、我々は、すべての人々が寛容と他者の尊重を学ぶ人権教育は、きちんとした社会を築く上で大変重要であると確信します。もちろん、このような人権教育が、実効的であるためには、長期的観点から、生涯を通じて行われることが必要です。長い目で見れば、これによって国際平和と協力が促進されると考えます。
議長、
この機会に、まもなく終了する人権教育の10年の下での我が国の取り組みと進捗について申し述べたいと思います。
1995年12月、日本政府は、「10年」の実施と促進を図るべく、内閣総理大臣を本部長とする推進本部を設立しました。1997年7月、推進本部は、「10年」に関する国内行動計画を策定し公表しました。これは全国連加盟国の中でも3番目に早く、我が国がこの問題に取り組む真剣さを明確に示すものです。我が国の行動計画は、同年11月、国連人権高等弁務官事務所に提出されました。
我が国の国内行動計画は、利用可能なあらゆる場と手段を通じて人権教育が推進されなければならないという考えに基づいており、学校教育、地域社会における教育、企業その他ビジネスにおける教育そして人権問題に特に注意を要する特定の職業における職業訓練に関し、それぞれガイドラインやアドバイスが行動計画の中で提供されています。同行動計画は、女性、子ども、高齢者、障害者の問題に留意しており、また、少数民族、外国人、HIV等感染者、刑を終えて出所した人等に対する差別や偏見の問題に関しても考慮しています。
推進本部は、1998年以降定期的に行動計画実施状況のレビューとフォローアップを行い、様々な分野、レベルにおける達成状況とさらなる挑戦について取りまとめてきました。我が国の各都道府県は、「10年」に対応するための本部をそれぞれ設置しました。こうした取り組み、そして、草の根レベルを含めた社会のあらゆるレベルからの積極的な関与を通じて、行動計画は、実効的にまた着実に実施されてきています。
議長、
我々は、「10年」が、人権教育の重要性に関する関心を高める上で大きな役割を果たし、国内及び国際的な取り組みを慫慂し、成果を収めて終了することを嬉しく思います。しかし、先述しましたとおり、人権教育は長期的なプロセスであり、実施のために必要なことがまだまだたくさんあります。ですから、我々は、「10年」の重要なフォローアップとして、「人権教育のための世界プログラム」の開始を歓迎し、これが各セクターにおける人権教育プログラムの実施の維持・発展に寄与するものと信じます。実際、我が国は、同世界プログラムに関する決議案の共同提案国に加わりました。この決議案がコンセンサスで採択され、本「人権の日」に、同世界プログラムを宣言することができることを心より希望します。この関連で、我々は、人権高等弁務官事務所とユネスコが、初等中等教育における人権教育に関する世界プログラム第一フェーズの計画案を作成したことを高く評価します。同世界プログラムのフォローアップのため、人権高等弁務官事務所とユネスコ他の国連機関で構成される調整委員会が設立される由であることも前向きな動きであり、関連の活動の国際的なコーディネーションがさらに促進されることと思います。
議長、
我が国は、すべての人が、いかなる差別も分け隔てもなく、じゅうぶんに尊重される社会をめざし、国際社会、特に国連とその関連機関と協力しつつ、人権教育の促進にあたっての努力を継続していく決意を再確認したいと思います。
ありがとうございました。 |