2004年

 
 

第59回国連総会本会議における原口幸市国連大使演説(仮訳) (議題45)主要国連会議及びサミットの成果の実施とフォローアップ及び (議題55)ミレニアム・サミットのフォローアップ

2004年11月22日

議長

今日の国際社会に出現している新たな脅威と挑戦に直面し、国連はその妥当性と有効性を維持するため、早急な改革と強化を必要としています。本年9月の一般討論演説において小泉総理大臣は、「国連新時代」を築く必要を強調しました。様々な表現ではありながら、国連内のそのような変化の必要性を、多くの国の指導者が強調しました。

現在我々は、国連を新たな現実に対応する上でより効果的なものするための歴史的機会を与えられている、と私は信じています。「脅威、課題と変革に関するハイレベル委員会」は、12月初めに事務総長に報告書を提出することとなっています。我々はこの報告書が、多国間の枠組みを強化するための多くのアイディアを示してくれることを期待しています。1月には、国連ミレニアム・プロジェクトの報告書も事務総長に提出されます。これら2つの報告書と加盟国のコメントを考慮に入れ、事務総長は来年3月ミレニアム宣言に関する報告書を提出します。これらの重要な文書を得て、我々は明年のハイレベル会合の準備に着手します。我々は協力し、会合を成功裏に終えるための準備が行えるよう、今次総会において最大限努力しなければなりません。

議長

首脳会合の準備に関連した問題に移る前に、ミレニアム宣言の履行に関する事務総長報告A/59/282に関し、いくつかの点に簡単に触れたいと思います。

第1に、この報告は国連平和維持活動に対する需要の急増を指摘し、加盟国を含む全てのパートナーにより大きなコミットメントを呼びかけています。この点に関し、日本は自らの役割を確かに果たしていきます。一方、各国が平和維持活動に供給することのできるリソースが無限ではないことを念頭に置けば、平和維持活動が効果的・効率的に管理されることが極めて重要であると考えます。また、紛争の生じた国において、結局自国の将来は自国自身のものである、とのオーナーシップに基づいた努力が、平和維持活動の成功のために極めて重要であると考えます。

第2に、本年の報告書は国際犯罪との闘いに特に関心を当てています。日本はこの問題に対し、グローバルに協調して対処することを完全に支持し、国際犯罪の防遏のための国際社会の努力に積極的に関与してきました。必要な国内法が整備され次第、日本は国連国際組織犯罪防止条約を批准します。また、同条約付属議定書の締結の準備も行っています。国連腐敗防止条約も重要な条約であり、日本は交渉に積極的に参加し、昨年12月に署名を行いました。

第3に、弱者の保護は日本の外交政策における優先事項の一つです。我々は人間の安全保障の重要性を常に強調しつつ、紛争から平和への移行期にある人々の保護と能力強化に特に関心を払っています。武力紛争は社会を貧困にし、悲惨な状況に置きます。人間の安全保障を推進することで、人々や地域社会は平和と国家再建へと移行することができます。日本は今後とも、国連人間の安全保障基金等を通じ、人々の保護と能力強化を推進していきます。

議長

ハイレベル会合の態様、形式、組織に関する事務総長報告を評価します。この機会に、前会期のジュリアン・ハント議長、2名のファシリテータの作業に敬意を表します。ハイレベル会合の中身に関する議論により多くの時間を割けるよう、会合の組織事項に関しできるだけ早期に合意に達することが重要です。

日本は報告書に示唆された会合の時期を支持します。会合において全体会合と4つの円卓会議を開催するとの構成についても、日本は支持します。円卓会議に割り当てる議題については、異なるテーマをそれぞれ割り当てるより、ミレニアム・サミットの際と同様、各国首脳が共通テーマについて議論することがより適当と考えます。これにより、我々が対処する各課題の相互連関につき、考え、議論する時間を取ることが可能になります。

開発資金に関するハイレベル対話の開催時期については、日本の立場は柔軟です。事務総長が示唆している6月末から7月初に、経社理実質会期ハイレベル・セグメントの直前にジュネーヴで開催するとの案が支持されるならば、我々は反対しません。

議長

ミレニアム宣言は、開発、国際の平和と安全、国連改革等幅広い問題を扱っており、そのレビューも多くの問題を扱う作業です。ハイレベル会合への準備は非常に重要であり、日本はこれら全ての分野で進展が見られるよう、積極的に貢献していきます。

来年9月が近づくにつれ、我々が行う決定は、その本質において多様なものです。あるものは憲章改正を含む法的決定であり、他のものは加盟国が一定の行動をとることのコミットメントであります。いくつか問題は、新たに提起され、更なる検討を要するものですが、他には既に10年以上もの期間にわたり徹底的に議論されてきているものもあります。

ハイレベル会合の機会を最大限に生かすため、準備プロセスを可能な限り効果的に進める必要があります。会合の成功は、どのように決定を行い、それぞれの決定をどのように成果としてまとめ上げていくか、にかかっています。

議長

これらのことを念頭に置き、首脳会合への準備プロセスにおいて極めて重要と考える以下の点について、注意を喚起したいと考えます。

第1に、報告書によって産み出されるモメンタムを維持し、首脳会合までの期間にできるだけ多くのことを達成できるよう、時間を効果的かつ効率的に使う必要があります。

第2に、首脳会合のスコープは広範囲な問題を包括的に扱うものではありますが、「包括的」は必ずしも「同時」を意味しません。来年9月が全ての問題について結論を導く唯一の機会であると考えると、我々の努力は成功しないでしょう。首脳会合に至る時期の間に、それぞれの問題について結論を導き、首脳会合が全体として成功するよう、それらを積み上げるよう努めるべきです。

第3に、多様なテーマを取り扱うための最善のメカニズムを考案すべきです。「ハイレベル委員会」報告書、ミレニアム・プロジェクト報告書が発出された後、それぞれの執筆者を招き、議長が非公式協議を招集することを提案します。これは、加盟国と執筆者の間で直接意見交換を行う絶好の機会となるでしょう。その後我々は、テーマ別の議論に移るべきです。準備プロセスにおいては、それぞれのテーマにつき焦点を絞った深い検討を行うことが必要です。このためには、特定テーマについての円卓会議を開くこともよい案でしょう。もちろん、そのような会議は全ての加盟国に開かれたものでなければなりません。

第4に、コンセンサスをつくる努力は評価すべきものですが、憲章に定められた手続きに従って決定を行わなければならないケースも確かにあります。これは完全に適法かつ民主的な方法です。同時に、コンセンサスにあまり力点を置きすぎることは、場合により国連が必要とする改善策を立ち往生させる危険があることを認識すべきです。

最後に重要な点として、慎重であることはしばしば美徳ではありますが、臆病さのカモフラージュや、必要なことを行わない言い訳として使われる場合もあるということです。勇気を持って行動しなければならない場合もあることを、我々は皆知っています。そして、今は必要な決定を行うべき時であると信じています。我々は、「国連新時代」を築く歴史的な機会をつかむため、ともに努力しなければなりません。

ありがとうございました。

   
する上でより効果的なものするための歴史的機会を与えられている、と私は信じています。「脅威、課題と変革に関するハイレベル委員会」は、12月初めに事務総長に報告書を提出することとなっています。我々はこの報告書が、多国間の枠組みを強化するための多くのアイディアを示してくれることを期待しています。1月には、国連ミレニアム・プロジェクトの報告書も事務総長に提出されます。これら2つの報告書と加盟国のコメントを考慮に入れ、事務総長は来年3月ミレニアム宣言に関する報告書を提出します。これらの重要な文書を得て、我々は明年のハイレベル会合の準備に着手します。我々は協力し、会合を成功裏に終えるための準備が行えるよう、今次総会において最大限努力しなければなりません。

議長

首脳会合の準備に関連した問題に移る前に、ミレニアム宣言の履行に関する事務総長報告A/59/282に関し、いくつかの点に簡単に触れたいと思います。

第1に、この報告は国連平和維持活動に対する需要の急増を指摘し、加盟国を含む全てのパートナーにより大きなコミットメントを呼びかけています。この点に関し、日本は自らの役割を確かに果たしていきます。一方、各国が平和維持活動に供給することのできるリソースが無限ではないことを念頭に置けば、平和維持活動が効果的・効率的に管理されることが極めて重要であると考えます。また、紛争の生じた国において、結局自国の将来は自国自身のものである、とのオーナーシップに基づいた努力が、平和維持活動の成功のために極めて重要であると考えます。

第2に、本年の報告書は国際犯罪との闘いに特に関心を当てています。日本はこの問題に対し、グローバルに協調して対処することを完全に支持し、国際犯罪の防遏のための国際社会の努力に積極的に関与してきました。必要な国内法が整備され次第、日本は国連国際組織犯罪防止条約を批准します。また、同条約付属議定書の締結の準備も行っています。国連腐敗防止条約も重要な条約であり、日本は交渉に積極的に参加し、昨年12月に署名を行いました。

第3に、弱者の保護は日本の外交政策における優先事項の一つです。我々は人間の安全保障の重要性を常に強調しつつ、紛争から平和への移行期にある人々の保護と能力強化に特に関心を払っています。武力紛争は社会を貧困にし、悲惨な状況に置きます。人間の安全保障を推進することで、人々や地域社会は平和と国家再建へと移行することができます。日本は今後とも、国連人間の安全保障基金等を通じ、人々の保護と能力強化を推進していきます。

議長

ハイレベル会合の態様、形式、組織に関する事務総長報告を評価します。この機会に、前会期のジュリアン・ハント議長、2名のファシリテータの作業に敬意を表します。ハイレベル会合の中身に関する議論により多くの時間を割けるよう、会合の組織事項に関しできるだけ早期に合意に達することが重要です。

日本は報告書に示唆された会合の時期を支持します。会合において全体会合と4つの円卓会議を開催するとの構成についても、日本は支持します。円卓会議に割り当てる議題については、異なるテーマをそれぞれ割り当てるより、ミレニアム・サミットの際と同様、各国首脳が共通テーマについて議論することがより適当と考えます。これにより、我々が対処する各課題の相互連関につき、考え、議論する時間を取ることが可能になります。

開発資金に関するハイレベル対話の開催時期については、日本の立場は柔軟です。事務総長が示唆している6月末から7月初に、経社理実質会期ハイレベル・セグメントの直前にジュネーヴで開催するとの案が支持されるならば、我々は反対しません。

議長

ミレニアム宣言は、開発、国際の平和と安全、国連改革等幅広い問題を扱っており、そのレビューも多くの問題を扱う作業です。ハイレベル会合への準備は非常に重要であり、日本はこれら全ての分野で進展が見られるよう、積極的に貢献していきます。

来年9月が近づくにつれ、我々が行う決定は、その本質において多様なものです。あるものは憲章改正を含む法的決定であり、他のものは加盟国が一定の行動をとることのコミットメントであります。いくつか問題は、新たに提起され、更なる検討を要するものですが、他には既に10年以上もの期間にわたり徹底的に議論されてきているものもあります。

ハイレベル会合の機会を最大限に生かすため、準備プロセスを可能な限り効果的に進める必要があります。会合の成功は、どのように決定を行い、それぞれの決定をどのように成果としてまとめ上げていくか、にかかっています。

議長

これらのことを念頭に置き、首脳会合への準備プロセスにおいて極めて重要と考える以下の点について、注意を喚起したいと考えます。

第1に、報告書によって産み出されるモメンタムを維持し、首脳会合までの期間にできるだけ多くのことを達成できるよう、時間を効果的かつ効率的に使う必要があります。

第2に、首脳会合のスコープは広範囲な問題を包括的に扱うものではありますが、「包括的」は必ずしも「同時」を意味しません。来年9月が全ての問題について結論を導く唯一の機会であると考えると、我々の努力は成功しないでしょう。首脳会合に至る時期の間に、それぞれの問題について結論を導き、首脳会合が全体として成功するよう、それらを積み上げるよう努めるべきです。

第3に、多様なテーマを取り扱うための最善のメカニズムを考案すべきです。「ハイレベル委員会」報告書、ミレニアム・プロジェクト報告書が発出された後、それぞれの執筆者を招き、議長が非公式協議を招集することを提案します。これは、加盟国と執筆者の間で直接意見交換を行う絶好の機会となるでしょう。その後我々は、テーマ別の議論に移るべきです。準備プロセスにおいては、それぞれのテーマにつき焦点を絞った深い検討を行うことが必要です。このためには、特定テーマについての円卓会議を開くこともよい案でしょう。もちろん、そのような会議は全ての加盟国に開かれたものでなければなりません。

第4に、コンセンサスをつくる努力は評価すべきものですが、憲章に定められた手続きに従って決定を行わなければならないケースも確かにあります。これは完全に適法かつ民主的な方法です。同時に、コンセンサスにあまり力点を置きすぎることは、場合により国連が必要とする改善策を立ち往生させる危険があることを認識すべきです。

最後に重要な点として、慎重であることはしばしば美徳ではありますが、臆病さのカモフラージュや、必要なことを行わない言い訳として使われる場合もあるということです。勇気を持って行動しなければならない場合もあることを、我々は皆知っています。そして、今は必要な決定を行うべき時であると信じています。我々は、「国連新時代」を築く歴史的な機会をつかむため、ともに努力しなければなりません。

ありがとうございました。