2004年

 
 

第59回国連総会本会議 議題39(a)及び(c)「特別な経済支援を含む国連の人道及び災害救済支援の調整強化」に関する原口国連常駐代表演説(仮訳)

2004年11月11日

議長、

人道支援の分野で多くの難民の帰還等の前向きな進展がある一方で、深刻な人道危機や自然災害は依然として存在し、時には世界各地で増加さえしています。これらの場所で、勇敢で優しい人道支援関係者が人道支援活動を行っていることは感動的です。しかしながら、人道関係者が益々危険にさらされる危険度の高い地域において、どのように人道支援活動を維持していくのかとの問いに対する効果的な答えを見つけることが益々急務になっています。このような状況下で、人道支援の基本目的を再検討してみるべきと考えます。人道支援には大きなニーズがある一方で、使える財源は限られていることを踏まえれば、人道支援の基本目的が苦しんでいる人々に必要な支援を永久に供与し続けることと考えては、人道支援を持続できないと思います。人道支援は、人々が支援なくして生活できるような状況を創設することを目指すべきと考えます。この点について、少し述べたいと思います。

支援を必要とする人々のオーナーシップと、外部からのパートナーシップの適切な結合が、人道支援が最終的に必要なくなる状況を実現するための鍵と考えます。自分の生活や尊厳、将来を決めるのは自分自身であるとのオーナーシップと、困難な状況にあっても懸命に自助努力を行う人々を手伝うのが義務であるとのパートナーシップが重要です。人道支援は、ドナーから受け手に向かう慈善という一方通行になってはいけません。ドナーと受け手が同等のパートナーとして、ともに取り組むべきです。私たちは、経験から、受け手が人道支援の計画や実施に積極的に参画することによって、支援がより効果的になることを学びました。例えば、難民自身の提案に基づき、伝統的な指導者に難民キャンプの運営にあたって中心的な役割を担ってもらったことがありました。これは大変な成功を収めました。これは日本が促進している人間の安全保障の理念とも軌を一にするものです。人間の安全保障は、苦しんでいる人々を保護し、自分たちの将来に対するオーナーシップの感覚を育て、パートナーシップを通じて能力向上を図ることを目指します。もちろん、このようなアプローチを取る上で、関係国政府との緊密な連携が促進される必要があります。

議長、

このようなアプローチを成功させる上で、何点か重要と思うことがあります。

第一に、パートナーシップの基盤を広げることです。共有された人道的配慮に基づいて人道支援に参加する関係者は、できる限り増やされるべきです。人道支援を先進国が独占する必要もなく、かつするべきでもありません。南南協力が探求されるべきです。このような観点から、日本はエグランド次長による、特にアジア諸国とのパートナーシップを広げる努力を積極的に支持しています。

第二に、現場を第一に考える必要性です。人道支援を効果的に行うためには、偏見を持たずに、現場の人々の具体的なニーズに常に注意を払う必要があります。支援を必要とする人々との率直な対話を重視するのは、このような理由によるものです。そうすることによって、苦しんでいる人々の本当の具体的ニーズを理解でき、オーナーシップを育むこともできます。例えば、WFPの学校給食プログラムに日本が貢献したのも、そのような率直な対話を通じてです。このプログラムは、現地から農産物を調達し、子どもに学校での給食を与えるとともに、家で食べる食事をもう一回与えるという意味で、現地社会を3度にわたって裨益し、実際のニーズにとても良く合致したものでした。

第三に、復興、開発、そして人道危機の持続する解決に結びつくような支援を提供するためには、紛争予防や平和構築、開発に携わる関係者との緊密な連携に基づく、総合的なアプローチが必要です。緊急支援と復興のいわゆるギャップを克服することが極めて重要です。このような認識に立って、例えば日本はアフガニスタンで緒方イニシアティブといわれる包括的な地域開発プログラムを行っています。このプログラムの下で、緊急支援から開発への継ぎ目ない移行に努めています。このような総合的なアプローチを採用するにあたっては、国連カントリー・チームの経験とノウハウが十分に尊重されることが重要です。PKO活動と人道・復興努力との間での緊密な調整が不可欠で、そのような調整においては、費用対効果に然るべく配慮しつつ、常駐調整官や人道調整官の下でのカントリー・チームの活動が最大限活用されるべきです。

議長、

これまで、私は人間が原因を作った悲惨な状況の被害者に対する支援について議論してきました。しかし、洪水、地震、火山の噴火、干ばつ、台風、ハリケーン、サイクロンといった自然災害も忘れるべきではありません。時には何十万という人々が生命や生活基盤を失います。自然災害による被害を軽減するための備えも必要です。日本は、来年一月に神戸で国連防災世界会議をホストします。この会議では、災害に強い国や共同体の構築を目指して各国の経験やノウハウを共有し、参加国、国際機関その他の関係者の間でパートナーシップを育てるために、望ましい方法について議論したいと考えています。

議長、

国連の人道関係者に適切なガイダンスを与えるために、人道支援に関する原則を積極的に議論する必要があると考えます。他方で、総会と経済社会理事会で同じ議論を繰り返しても意味がありません。例えば、経済社会理事会では国連機関が人道支援を行う上でのガイダンスを提供し、総会は人道支援で共有すべき価値について議論するといったように、焦点を変えるのも一つのアイディアです。人道支援の分野での取り組みを再活性化させるための斬新なアイディアを歓迎するとともに、一層効果的な人道支援を達成するため、議論を進化させることを望みます。

ありがとうございました。

   
"../../image/space.gif" width="5" height="20"> (c) Permanent Mission of Japan to the United Nations
866 United Nations Plaza, New York, NY 10017
Tel: 212-223-4300

2004年

 
 

第59回国連総会本会議 議題39(a)及び(c)「特別な経済支援を含む国連の人道及び災害救済支援の調整強化」に関する原口国連常駐代表演説(仮訳)

2004年11月11日

議長、

人道支援の分野で多くの難民の帰還等の前向きな進展がある一方で、深刻な人道危機や自然災害は依然として存在し、時には世界各地で増加さえしています。これらの場所で、勇敢で優しい人道支援関係者が人道支援活動を行っていることは感動的です。しかしながら、人道関係者が益々危険にさらされる危険度の高い地域において、どのように人道支援活動を維持していくのかとの問いに対する効果的な答えを見つけることが益々急務になっています。このような状況下で、人道支援の基本目的を再検討してみるべきと考えます。人道支援には大きなニーズがある一方で、使える財源は限られていることを踏まえれば、人道支援の基本目的が苦しんでいる人々に必要な支援を永久に供与し続けることと考えては、人道支援を持続できないと思います。人道支援は、人々が支援なくして生活できるような状況を創設することを目指すべきと考えます。この点について、少し述べたいと思います。

支援を必要とする人々のオーナーシップと、外部からのパートナーシップの適切な結合が、人道支援が最終的に必要なくなる状況を実現するための鍵と考えます。自分の生活や尊厳、将来を決めるのは自分自身であるとのオーナーシップと、困難な状況にあっても懸命に自助努力を行う人々を手伝うのが義務であるとのパートナーシップが重要です。人道支援は、ドナーから受け手に向かう慈善という一方通行になってはいけません。ドナーと受け手が同等のパートナーとして、ともに取り組むべきです。私たちは、経験から、受け手が人道支援の計画や実施に積極的に参画することによって、支援がより効果的になることを学びました。例えば、難民自身の提案に基づき、伝統的な指導者に難民キャンプの運営にあたって中心的な役割を担ってもらったことがありました。これは大変な成功を収めました。これは日本が促進している人間の安全保障の理念とも軌を一にするものです。人間の安全保障は、苦しんでいる人々を保護し、自分たちの将来に対するオーナーシップの感覚を育て、パートナーシップを通じて能力向上を図ることを目指します。もちろん、このようなアプローチを取る上で、関係国政府との緊密な連携が促進される必要があります。

議長、

このようなアプローチを成功させる上で、何点か重要と思うことがあります。

第一に、パートナーシップの基盤を広げることです。共有された人道的配慮に基づいて人道支援に参加する関係者は、できる限り増やされるべきです。人道支援を先進国が独占する必要もなく、かつするべきでもありません。南南協力が探求されるべきです。このような観点から、日本はエグランド次長による、特にアジア諸国とのパートナーシップを広げる努力を積極的に支持しています。

第二に、現場を第一に考える必要性です。人道支援を効果的に行うためには、偏見を持たずに、現場の人々の具体的なニーズに常に注意を払う必要があります。支援を必要とする人々との率直な対話を重視するのは、このような理由によるものです。そうすることによって、苦しんでいる人々の本当の具体的ニーズを理解でき、オーナーシップを育むこともできます。例えば、WFPの学校給食プログラムに日本が貢献したのも、そのような率直な対話を通じてです。このプログラムは、現地から農産物を調達し、子どもに学校での給食を与えるとともに、家で食べる食事をもう一回与えるという意味で、現地社会を3度にわたって裨益し、実際のニーズにとても良く合致したものでした。

第三に、復興、開発、そして人道危機の持続する解決に結びつくような支援を提供するためには、紛争予防や平和構築、開発に携わる関係者との緊密な連携に基づく、総合的なアプローチが必要です。緊急支援と復興のいわゆるギャップを克服することが極めて重要です。このような認識に立って、例えば日本はアフガニスタンで緒方イニシアティブといわれる包括的な地域開発プログラムを行っています。このプログラムの下で、緊急支援から開発への継ぎ目ない移行に努めています。このような総合的なアプローチを採用するにあたっては、国連カントリー・チームの経験とノウハウが十分に尊重されることが重要です。PKO活動と人道・復興努力との間での緊密な調整が不可欠で、そのような調整においては、費用対効果に然るべく配慮しつつ、常駐調整官や人道調整官の下でのカントリー・チームの活動が最大限活用されるべきです。

議長、

これまで、私は人間が原因を作った悲惨な状況の被害者に対する支援について議論してきました。しかし、洪水、地震、火山の噴火、干ばつ、台風、ハリケーン、サイクロンといった自然災害も忘れるべきではありません。時には何十万という人々が生命や生活基盤を失います。自然災害による被害を軽減するための備えも必要です。日本は、来年一月に神戸で国連防災世界会議をホストします。この会議では、災害に強い国や共同体の構築を目指して各国の経験やノウハウを共有し、参加国、国際機関その他の関係者の間でパートナーシップを育てるために、望ましい方法について議論したいと考えています。

議長、

国連の人道関係者に適切なガイダンスを与えるために、人道支援に関する原則を積極的に議論する必要があると考えます。他方で、総会と経済社会理事会で同じ議論を繰り返しても意味がありません。例えば、経済社会理事会では国連機関が人道支援を行う上でのガイダンスを提供し、総会は人道支援で共有すべき価値について議論するといったように、焦点を変えるのも一つのアイディアです。人道支援の分野での取り組みを再活性化させるための斬新なアイディアを歓迎するとともに、一層効果的な人道支援を達成するため、議論を進化させることを望みます。

ありがとうございました。