2004年

 
 

第59回国連総会における原口大使演説(仮訳)
(総会議題11「安保理報告」及び議題53「安保理改革」)

2004年10月11日

議長、

まず最初に、安保理年次報告の紹介を行ったジョンズ・パリー・英常駐代表に感謝します。また、安保理改革作業部会における議論の活性化にご尽力いただいたハント前総会議長、ガレゴス・チロボラ・エクアドル常駐代表及びヴェナベサー・リヒテンシュタイン常駐代表に対しても感謝の意を表します。

議長、

国連は、国連憲章が想定していた国家間紛争に加えて、国内紛争、貧困・感染症、テロ、大量兵器の拡散といった「新たな脅威」に直面しています。我が国は、国際の平和と安全の維持に主たる責任を有する安保理は上記の課題に効果的に取り組む能力を保持する必要があることから、国連を「21世紀初頭の国際社会の現実」に対応させるための安保理改革は、国連改革の中心的な課題であると考えます。ハイレベル委員会の設立はアナン事務総長による国連システムをこれらの挑戦に対応させる為の改善努力の象徴です。安保理は国際の平和と安全に関して中心的な役割を担う必要があることから、ハイレベル委員会での作業と同時に、我々加盟国の間でも、特に安保理改革に関して真剣な議論が行われてきていると認識します。

議長、

安保理改革に関する日本の立場は、小泉総理大臣が一般討論演説で述べたとおり、安保理が新しい脅威と挑戦に効果的に対処するため、国際の平和と安全において主要な役割を果たす意思と能力を有する国々を、常に安保理の意思決定過程に参加させると共に、今日の世界をよりよく反映するように安保理の代表制を向上させることが必要であり、そのためには、途上国・先進国の双方を新たな安保理のメンバーに含め、常任・非常任双方において安保理を拡大する必要があるというものです。国際社会においてこれまで我が国が果たしてきた役割は、安保理常任理事国となるに相応しい確固たる基盤となるものであると信じています。我が国はブラジル、ドイツ及びインドを正当な安保理常任理事国候補として支持します。また、アフリカも安保理の常任議席において代表されるべきであると考えます。

議長、

我々は過去10年以上に亘り安保理改革作業部会で議論を行ってきましたが、加盟国の間で安保理改革に関する結論は出ておりません。本年12月にハイレベル委員会が報告書を提出することとなっており、その中で安保理改革についても何らかの提案が出てくることと思われますが、今回こそ我々は安保理を如何に現在の世界の現実に合わせて改革していくかという観点から真剣に議論し、国連創設60周年にあたる来年中には安保理改革に関する議論に結果を出すべきであると考えます。本課題への対処に際しては、我々の叡智、勇気、そして地球的視点に立った公共精神が試されています。

議長、

事実はレトリックよりも雄弁であります。第58回国連総会の安保理改革作業部会の議長報告は、多くの発言国が安保理の常任・非常任双方のカテゴリーの拡大に対する支持を表明しました。今年9月の一般討論演説では、近年になく安保理改革について盛り上がった議論が行われました。我々のとりあえずの統計によれば、一般討論演説を行った190ヶ国のうち、安保理改革に言及した国は151ヶ国であり、そのうち常任・非常任双方の拡大に言及した国は86ヶ国にものぼります。この他にも同じ考え方を持ちつつも、時間の制約上、安保理改革に言及できなかった国は数十ヶ国にのぼると思われるところ、常任・非常任双方の拡大を志向する加盟国は多数存在します。他方、非常任のみの議席拡大を主張した国は6ヶ国に留まり、この事実から我々は安保理改革について現在の鳥瞰図を描くことが出来ます。加盟国の間には、常任・非常任双方の拡大を支持するという大きな流れが出来つつあると考えます。この流れを本物の改革実現につなげて行かなければなりません。日本は志を同じくする多くの国々とともに、安保理改革の実現に邁進する所存です。我が国としては、本件に関する国連加盟国の関心が極めて高くなっていることにかんがみ、本会期中に本議題について再度の審議を求める権利を留保します。

議長、

近年安保理の作業方法が改善されていることを歓迎します。特に非メンバーに対する公開ブリーフィング及び非メンバーも発言できる公開討論については、確実に開催回数が増加しており、これによって安保理の議論の透明性が高まっていると言えます。とりわけ我々加盟国の主要な利害が絡む問題について安保理が非メンバーに傍聴・発言の機会を与えることは、安保理における議論に多様な意見を反映させるのに資するという点で評価できます。

議長、

安保理の決定は、全加盟国を拘束するため、安保理の決定により大きな影響を受ける国の意見が、決定プロセスに反映されることが重要であり、それにより安保理の説明責任は果たされうると言えます。このため、日本は安保理がその意思決定過程で、議論されている事項に対し死活的な利益を有する国々を関与させる手段を引き続き検討するよう要望します。平和維持活動(PKO)に加え、政治ミッション、平和の定着など大きな財政的なインプリケーションがある決議に関し、特に主要な財政貢献国との関係で透明性が確保される必要があります。PKOの要員派遣国については、安保理と要員派遣国(TCC)との協議メカニズムが確立していますが、このメカニズムを拡大して主要な財政貢献国をも参加させることが不可欠です。この関連で、PKO作業部会が非メンバーも入れた形で開催されたことは前進であり、引き続き安保理がPKO作業部会の活性化に取り組むことを期待します。

ありがとうございました。

(了)

   
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2004年

 
 

第59回国連総会における原口大使演説(仮訳)
(総会議題11「安保理報告」及び議題53「安保理改革」)

2004年10月11日

議長、

まず最初に、安保理年次報告の紹介を行ったジョンズ・パリー・英常駐代表に感謝します。また、安保理改革作業部会における議論の活性化にご尽力いただいたハント前総会議長、ガレゴス・チロボラ・エクアドル常駐代表及びヴェナベサー・リヒテンシュタイン常駐代表に対しても感謝の意を表します。

議長、

国連は、国連憲章が想定していた国家間紛争に加えて、国内紛争、貧困・感染症、テロ、大量兵器の拡散といった「新たな脅威」に直面しています。我が国は、国際の平和と安全の維持に主たる責任を有する安保理は上記の課題に効果的に取り組む能力を保持する必要があることから、国連を「21世紀初頭の国際社会の現実」に対応させるための安保理改革は、国連改革の中心的な課題であると考えます。ハイレベル委員会の設立はアナン事務総長による国連システムをこれらの挑戦に対応させる為の改善努力の象徴です。安保理は国際の平和と安全に関して中心的な役割を担う必要があることから、ハイレベル委員会での作業と同時に、我々加盟国の間でも、特に安保理改革に関して真剣な議論が行われてきていると認識します。

議長、

安保理改革に関する日本の立場は、小泉総理大臣が一般討論演説で述べたとおり、安保理が新しい脅威と挑戦に効果的に対処するため、国際の平和と安全において主要な役割を果たす意思と能力を有する国々を、常に安保理の意思決定過程に参加させると共に、今日の世界をよりよく反映するように安保理の代表制を向上させることが必要であり、そのためには、途上国・先進国の双方を新たな安保理のメンバーに含め、常任・非常任双方において安保理を拡大する必要があるというものです。国際社会においてこれまで我が国が果たしてきた役割は、安保理常任理事国となるに相応しい確固たる基盤となるものであると信じています。我が国はブラジル、ドイツ及びインドを正当な安保理常任理事国候補として支持します。また、アフリカも安保理の常任議席において代表されるべきであると考えます。

議長、

我々は過去10年以上に亘り安保理改革作業部会で議論を行ってきましたが、加盟国の間で安保理改革に関する結論は出ておりません。本年12月にハイレベル委員会が報告書を提出することとなっており、その中で安保理改革についても何らかの提案が出てくることと思われますが、今回こそ我々は安保理を如何に現在の世界の現実に合わせて改革していくかという観点から真剣に議論し、国連創設60周年にあたる来年中には安保理改革に関する議論に結果を出すべきであると考えます。本課題への対処に際しては、我々の叡智、勇気、そして地球的視点に立った公共精神が試されています。

議長、

事実はレトリックよりも雄弁であります。第58回国連総会の安保理改革作業部会の議長報告は、多くの発言国が安保理の常任・非常任双方のカテゴリーの拡大に対する支持を表明しました。今年9月の一般討論演説では、近年になく安保理改革について盛り上がった議論が行われました。我々のとりあえずの統計によれば、一般討論演説を行った190ヶ国のうち、安保理改革に言及した国は151ヶ国であり、そのうち常任・非常任双方の拡大に言及した国は86ヶ国にものぼります。この他にも同じ考え方を持ちつつも、時間の制約上、安保理改革に言及できなかった国は数十ヶ国にのぼると思われるところ、常任・非常任双方の拡大を志向する加盟国は多数存在します。他方、非常任のみの議席拡大を主張した国は6ヶ国に留まり、この事実から我々は安保理改革について現在の鳥瞰図を描くことが出来ます。加盟国の間には、常任・非常任双方の拡大を支持するという大きな流れが出来つつあると考えます。この流れを本物の改革実現につなげて行かなければなりません。日本は志を同じくする多くの国々とともに、安保理改革の実現に邁進する所存です。我が国としては、本件に関する国連加盟国の関心が極めて高くなっていることにかんがみ、本会期中に本議題について再度の審議を求める権利を留保します。

議長、

近年安保理の作業方法が改善されていることを歓迎します。特に非メンバーに対する公開ブリーフィング及び非メンバーも発言できる公開討論については、確実に開催回数が増加しており、これによって安保理の議論の透明性が高まっていると言えます。とりわけ我々加盟国の主要な利害が絡む問題について安保理が非メンバーに傍聴・発言の機会を与えることは、安保理における議論に多様な意見を反映させるのに資するという点で評価できます。

議長、

安保理の決定は、全加盟国を拘束するため、安保理の決定により大きな影響を受ける国の意見が、決定プロセスに反映されることが重要であり、それにより安保理の説明責任は果たされうると言えます。このため、日本は安保理がその意思決定過程で、議論されている事項に対し死活的な利益を有する国々を関与させる手段を引き続き検討するよう要望します。平和維持活動(PKO)に加え、政治ミッション、平和の定着など大きな財政的なインプリケーションがある決議に関し、特に主要な財政貢献国との関係で透明性が確保される必要があります。PKOの要員派遣国については、安保理と要員派遣国(TCC)との協議メカニズムが確立していますが、このメカニズムを拡大して主要な財政貢献国をも参加させることが不可欠です。この関連で、PKO作業部会が非メンバーも入れた形で開催されたことは前進であり、引き続き安保理がPKO作業部会の活性化に取り組むことを期待します。

ありがとうございました。

(了)