2004年

 
 

安保理決議一二六七委員会(対タリバーン、アル・カーイダ制裁委員会)議長報告に関する安保理公開会合における原口国連大使演説(仮訳)

2004年9月13日

議長、

まず、本日のムニョス大使による詳細な報告に感謝します。最近のロシアにおける多くの罪なき子供を含む市民の命を奪った卑劣なテロ行為やインドネシア・ジャカルタのオーストラリア大使館前における爆破テロに見られるように、テロは一向に絶えないばかりか却って増加さえしているように思える状況にあります。状況は悪化し続けるばかりで誠に心痛の種となっています。我が国は被害者の家族をはじめとする関係者の方々に深い哀悼の意を表しますとともに、こうした残虐なテロ行為を強く非難し、何とかこうしたテロ行為を抑止するための国際協力の一層の強化を図る必要性を痛感します。

議長、

本制裁委員会議長の報告を受け、また、先月発表された本制裁委員会分析支援・制裁モニタリング・チームの第一次報告書を踏まえ、我が国は報告書に特筆されている状況に懸念を有していることを申し上げたいと思います。新世代のアル・カーイダやアフガニスタンにおいて残存するタリバーンの分子によるテロ関係の活動に見られるように、アル・カーイダ及び関連組織によるテロの脅威が三年前と同じく今日現実のものとして引き続き存在しています。世界中に広がるテロの継続する脅威を念頭に、我が国として次の三点を強調したいと思います。

第一に、我が国は、包括制裁対象者リストを重視しており、リストへの各国の情報提供が円滑に進み、より充実したリストの活用が可能となることを強く望みます。ただし、リストへのテロ関連個人・団体の名前の掲載がコンセンサス方式を採用していることから、最終的に掲載が制裁委員会に承認されるところまで辿り着くには幾つかのハードルがあり、そう簡単ではないことは我が国としても経験済みのところです。その観点から、モニタリング・チームもその報告書で勧告するように、テロとの闘いにあたりリストを効果的で正確なものとするように最新の内容へと改訂するとの制裁委員会の方針を歓迎するとともに、新たな情報に基づくリストの改訂が可能となる手続を構築することが重要と考えます。特に我が国の経験から、テロリストが違法に実在の人物になりすまして、海外で金融口座を開設しているケースへの対応が検討されることを期待します。さらに、アル・カーイダ関連のテロリストに対し大量破壊兵器を生み出す物質や知識を供給する人物の名前をリストに掲載するとのモニタリング・チームの勧告は、テロリストの攻撃準備を少しでもくじくものとして、その発想を歓迎します。

議長、

第二の点は、テロリストの資金と武器に関する問題です。モニタリング・チームの報告書でも指摘されているように、最近の多くの犠牲者を出すテロ事件では、アル・カーイダ関連テロリストが米ドルにして五桁の比較的少ない資金でテロ攻撃を実施しており、この手法はテロリストの資金移動を捉えにくくし、資金源の断ち切りもより困難にしています。また、最近モスクワの地下鉄駅付近で見られたような頻発する自爆テロも憂慮すべき事態であり、武器禁輸措置を課されていない装置や物質による兵器転用を如何に未然に防ぐかは重要な課題です。テロリストの執る手法の変化に合わせて制裁措置も調整されなければならないとの報告書の指摘は当を得たものであり、我々は、テロリストに制裁措置の網の目をくぐらせないような効果的な措置をとる必要があります。この点、モニタリング・チームは、より強化された効果的な制裁措置に関する勧告を出すべく研究を進めていくものと承知しており、我が国としてもその成果を期待したいと考えます。

第三に強調したい点は、より強化された国連関連諸機関の間の協力の必要性についてであります。テロ対策委員会(CTC)が持つ情報及びその分析を共有する等の協力が重要であることは我が国としても以前から指摘してきたことでありますが、モニタリング・チームが既にCTCの専門家と会合をもって脅威評価や加盟国のキャパシティ・ビルディングに関するニーズについて情報交換を行っていることを評価したいと思います。また、従来なかったような兵器で大量に市民を殺害しようとするアル・カーイダ関連テロリストの動きもあることから、大量破壊兵器の不拡散に関する安保理決議一五四〇委員会との協力も重要です。国連におけるテロ対策に関係する委員会や機関の間で更に効果的に協力を進めていくことはテロと闘う上で極めて重要であると信じます。

議長、

ムニョス大使が既にかつてより強調されているように、アル・カーイダのネットワークがグローバルなものになればなるほど、テロ対策は各国協調して取り進める必要があり、国連がテロ対策の課題への対応を如何に効果的に主導できるかが問われています。我が国としては、本制裁委員会の活動及び安保理決議一五二六をはじめこれまでの関連諸決議を支持しており、今後ともこれらを通じた効果的なテロ対策の実現に全面的に協力していく所存です。ムニョス大使並びのそのスタッフ、本制裁委員会事務局、そしてますます活動に拍車のかかってきたモニタリング・チームの専門家の献身に感謝いたします。

議長、有り難うございました。
                                     (了)

   
an class="banner">わかる!国際情勢  
(c) Permanent Mission of Japan to the United Nations
866 United Nations Plaza, New York, NY 10017
Tel: 212-223-4300

2004年

 
 

安保理決議一二六七委員会(対タリバーン、アル・カーイダ制裁委員会)議長報告に関する安保理公開会合における原口国連大使演説(仮訳)

2004年9月13日

議長、

まず、本日のムニョス大使による詳細な報告に感謝します。最近のロシアにおける多くの罪なき子供を含む市民の命を奪った卑劣なテロ行為やインドネシア・ジャカルタのオーストラリア大使館前における爆破テロに見られるように、テロは一向に絶えないばかりか却って増加さえしているように思える状況にあります。状況は悪化し続けるばかりで誠に心痛の種となっています。我が国は被害者の家族をはじめとする関係者の方々に深い哀悼の意を表しますとともに、こうした残虐なテロ行為を強く非難し、何とかこうしたテロ行為を抑止するための国際協力の一層の強化を図る必要性を痛感します。

議長、

本制裁委員会議長の報告を受け、また、先月発表された本制裁委員会分析支援・制裁モニタリング・チームの第一次報告書を踏まえ、我が国は報告書に特筆されている状況に懸念を有していることを申し上げたいと思います。新世代のアル・カーイダやアフガニスタンにおいて残存するタリバーンの分子によるテロ関係の活動に見られるように、アル・カーイダ及び関連組織によるテロの脅威が三年前と同じく今日現実のものとして引き続き存在しています。世界中に広がるテロの継続する脅威を念頭に、我が国として次の三点を強調したいと思います。

第一に、我が国は、包括制裁対象者リストを重視しており、リストへの各国の情報提供が円滑に進み、より充実したリストの活用が可能となることを強く望みます。ただし、リストへのテロ関連個人・団体の名前の掲載がコンセンサス方式を採用していることから、最終的に掲載が制裁委員会に承認されるところまで辿り着くには幾つかのハードルがあり、そう簡単ではないことは我が国としても経験済みのところです。その観点から、モニタリング・チームもその報告書で勧告するように、テロとの闘いにあたりリストを効果的で正確なものとするように最新の内容へと改訂するとの制裁委員会の方針を歓迎するとともに、新たな情報に基づくリストの改訂が可能となる手続を構築することが重要と考えます。特に我が国の経験から、テロリストが違法に実在の人物になりすまして、海外で金融口座を開設しているケースへの対応が検討されることを期待します。さらに、アル・カーイダ関連のテロリストに対し大量破壊兵器を生み出す物質や知識を供給する人物の名前をリストに掲載するとのモニタリング・チームの勧告は、テロリストの攻撃準備を少しでもくじくものとして、その発想を歓迎します。

議長、

第二の点は、テロリストの資金と武器に関する問題です。モニタリング・チームの報告書でも指摘されているように、最近の多くの犠牲者を出すテロ事件では、アル・カーイダ関連テロリストが米ドルにして五桁の比較的少ない資金でテロ攻撃を実施しており、この手法はテロリストの資金移動を捉えにくくし、資金源の断ち切りもより困難にしています。また、最近モスクワの地下鉄駅付近で見られたような頻発する自爆テロも憂慮すべき事態であり、武器禁輸措置を課されていない装置や物質による兵器転用を如何に未然に防ぐかは重要な課題です。テロリストの執る手法の変化に合わせて制裁措置も調整されなければならないとの報告書の指摘は当を得たものであり、我々は、テロリストに制裁措置の網の目をくぐらせないような効果的な措置をとる必要があります。この点、モニタリング・チームは、より強化された効果的な制裁措置に関する勧告を出すべく研究を進めていくものと承知しており、我が国としてもその成果を期待したいと考えます。

第三に強調したい点は、より強化された国連関連諸機関の間の協力の必要性についてであります。テロ対策委員会(CTC)が持つ情報及びその分析を共有する等の協力が重要であることは我が国としても以前から指摘してきたことでありますが、モニタリング・チームが既にCTCの専門家と会合をもって脅威評価や加盟国のキャパシティ・ビルディングに関するニーズについて情報交換を行っていることを評価したいと思います。また、従来なかったような兵器で大量に市民を殺害しようとするアル・カーイダ関連テロリストの動きもあることから、大量破壊兵器の不拡散に関する安保理決議一五四〇委員会との協力も重要です。国連におけるテロ対策に関係する委員会や機関の間で更に効果的に協力を進めていくことはテロと闘う上で極めて重要であると信じます。

議長、

ムニョス大使が既にかつてより強調されているように、アル・カーイダのネットワークがグローバルなものになればなるほど、テロ対策は各国協調して取り進める必要があり、国連がテロ対策の課題への対応を如何に効果的に主導できるかが問われています。我が国としては、本制裁委員会の活動及び安保理決議一五二六をはじめこれまでの関連諸決議を支持しており、今後ともこれらを通じた効果的なテロ対策の実現に全面的に協力していく所存です。ムニョス大使並びのそのスタッフ、本制裁委員会事務局、そしてますます活動に拍車のかかってきたモニタリング・チームの専門家の献身に感謝いたします。

議長、有り難うございました。
                                     (了)