西部アフリカ安保理ミッションの報告に関する安保理公開会合における原口国連大使演説(仮訳)
2004年7月16日
議長、
我が国は、平和の定着と人間の安全保障の実現は、西アフリカ地域において最も喫緊の、かつ重要な課題であると考えます。日本はこの問題を解決するため、主としてTICAD(アフリカ開発会議)プロセスを通じた様々な取り組みを続けていきます。
その観点から我が国は、現在シエラレオネ及びリベリアにおける情勢が順調に推移し、国家の再建に向けて多くの進展が見られていることを歓迎します。また、ギニアビサオにおいては議会選挙が成功裡に行われ、憲法上の秩序回復に向けた大きな一歩が踏み出されたことを喜ばしく思っています。三月二十五日の安保理公開会合でも述べたように我が国は西アフリカ諸国におけるこうした前進をさらに後押しすべく積極的に支援を行っています。リベリアについては、本年三月から七月までにDDRR支援、人道支援等に約九百万ドルの支援を実施しました。
各国の情勢が相互に密接に関わってきた西アフリカの地政事情に鑑み、各国の平和と安定を維持するために地域的アプローチを取ることは重要です。従来より繰り返し指摘され、今次安保理ミッションの報告書にも指摘されているとおり、一国の不安定化が地域全体に悪影響を及ぼすことを十分認識すべきであります。そのため、我が国はコートジボワールにおける現在の政治的停滞を深く懸念し、和平プロセス促進のため同国の全ての当事者による明確なコミットメント及び断固とした努力、特にリナ・マルクーシ合意の完全かつ無条件の実施についての努力が必要であることをあらためて強調したいと思います。この点に関し、日本は七月二十九日にアクラで首脳会議を開催することを視野に入れ、共通の目標及び作業計画を設定するための、国連事務総長、アフリカ連合及び関係国の努力を評価します。我が国としても先週エチオピアで行われたAUサミットに代表団を派遣し、コートジボワール情勢を含む西アフリカ地域の平和の問題及び平和の定着の重要性につき意見交換を行うため、西アフリカ地域の各国首脳・閣僚と会見することができたことを喜ばしく思います。
以上を述べた上で地域的アプローチを進めていく上で重要と考えられる以下の三点を指摘したいと思います。
第一に、我が国は、現在西アフリカ地域に展開されている国連ミッション間における相互協力、特に国境管理等での相互協力の促進に向けた動きを歓迎します。このような努力により、国連にとり利用可能な限られた資源がより有効に活用され、費用対効果が大きく高まることを期待します。我々はUNAMSILが成功裡に活動を遂行した結果として段階的に削減が実施されていることを歓迎します。このことから、我々は他の平和維持活動についても安保理は状況を踏まえた上でその活動形態の見直しを行うべきことを想起します。また、国連西アフリカ事務所への支援につき報告書において同事務所に対する追加的な資源の提供が勧告されており、我々はその実施の適正についてはECOWASとの協力促進という目標も含め十分精査すべきであります。
第二に、我が国はアフリカ自身がその紛争対処能力を向上していくことが重要であると考えています。この点で現在西アフリカ地域において積極的に紛争予防のための活動を実施しているECOWASの役割は大きく、国連としては、ECOWASの活動能力をより強化すべく協力していくべきであります。また、報告書に言及されているとおり、持続的な平和及び発展のためには、紛争当事国や紛争状態から脱しつつある国に限らず地域を構成する全ての国が国境管理能力強化、腐敗防止運動等ガバナンスを向上させることが極めて重要であります。このための国際社会の支援は重要でありますが、一義的にはアフリカ各国の自らの努力が重要であることを強調したいと思います。
第三に、我が国は和平プロセスにおけるDDRRは重要な課題の一つであるとの認識を共有しています。この観点において、我々は報告書の中で提起された、DDとRRの間における利用可能な資金の格差に留意しています。我が国はシエラレオネ、リベリア、コートジボワールといった国々におけるDDRRへの支援を行っており、この分野における協力を引き続き実施していくつもりです。我々はまた、コートジボワールにおいて世銀により支払われている補償金の額とリベリアにおいてPKO予算により支払われている補償金の額との間に3倍もの格差があることに対するミッションの懸念を共有します。この格差はコートジボワールへの元戦闘員の流出を招き、事態を不安定化しかねないとされています。補償金については、世銀を始めとする開発機関のDDRRへの一層の関与を促す一方で、PKO予算の使用が妥当かどうかとの問題が再度検証されるべきです。さらに、各国毎にDDRRを実施しても、地域全体で小型武器の流通を規制しない限り、問題の根本的解決にはつながりません。この観点から、特にECOWASが小型武器モラトリアムを活用し、地域における武器移動の取り締まりに取り組んでいることは重要です。小型武器問題に対し準地域での小型武器拡散の削減における安保理の行動に対する事務総長の勧告は有益であると考えます。
議長、
従来より我が国が指摘してきたことでありますが、安保理ミッションの費用対効果について十分評価が必要です。既に現地における国連の活動が行われている地域に安保理ミッションを送ることの利点及び経費の詳細について公表されることが有益であると考えます。
議長、
西部アフリカ諸国における和平への道を確固たるものとするために、国際社会の協力とともに地域諸国による自助努力の形成を促進していくことが重要であります。我が国としては真摯な自助努力が示され続ける限り、今後とも引き続き国際社会の責任ある一員として支援を行っていきたいと思います。
議長、ありがとうございました。 |