2004年

 
 

安保理公開討論「紛争後の平和構築における市民社会の役割」(仮訳)

2004年6月22日

議長、

 安保理において「紛争後の平和構築における市民社会の役割」に関する公開討論を開催する議長の指導力を多とします。事務総長が設立した「市民社会と国連の関係に関する有識者パネル」の報告が昨日発出されたことから、この公開討論は大変時宜にかなったものです。

 有識者パネルの報告書には、政府のみでは今日のグローバルな挑戦を解決できないとありますが、紛争後の平和構築にもこれはあてはまります。難民の帰還と定着、法の支配に基づく治安の回復、経済的復興、地域共同体の再建、国民和解等の多様な分野において、平和構築のために求められる全ての取り組みに、国家や国際機関のみで十分に効果的に対応できると考えることは現実的ではありません。これらの分野に長い間関わってきて強いコミットメントを有する市民社会団体は平和構築の過程において重要な補完的役割を有しています。これらの市民社会団体は支援活動の貴重な追加資源であるばかりではなく、支援活動を効果的に実施する上で役に立つ深い知識と貴重な経験を持っています。国連人道調整官や復興調整官と市民社会団体の協力的な接触により、紛争後の国の人々が明日は良い生活ができるとの希望を持てるような環境を作るという共通の目的の達成が容易になると考えます。

議長、

紛争後の平和構築の過程における市民社会団体の役割について、このほかに重要と考えられる点を2つ強調したいと思います。第一に、市民社会団体はその構成員が国際社会との関係に関する理解を深めるための教育の場を提供します。市民社会団体への参加を通じて、国際社会と自分自身が以下に深くかかわっているかを実感するようになり、国際協力の意識を高めるでしょう。このように、市民社会団体は、紛争後の社会において平和構築に取り組む政府の信頼できる支持者であり、貴重なパートナーでもあります。市民社会団体の歴史が十分でないところでは、非政府団体としての地位を尊重しつつ、現地の市民社会団体の育成・強化に努めていくことが適当な場合もあると考えられます。

 そのような観点から、本日はNGO、経済界及び政府が対等なパートナーシップの下に参加することにより、より効率的かつ迅速な対応を進める我が国のジャパン・プラットフォームについて紹介したいと思います。1999年に我が国のNGO数団体がコソボ難民支援の検討を開始しましたが、財政的基盤が十分ではなく、現場での経験を積んだ人材が不足していることが明らかとなりました。そこで、NGO4団体が政府と協力することにより弱点を克服する方法を模索しつつ、合同で難民キャンプの建設を計画しました。この過程で政府との協力だけでなく、経済界、メディア、学識経験者等の他のアクターとも協力関係を広めるた方が良いことが認識されるようになりました。このような認識に基づき、それぞれが対等なパートナーシップの下、その特性・資源を活かし、緊急援助のより迅速かつ効果的な実施に向かって連携・協力していく「ジャパン・プラットフォーム」が生まれました。このプラットフォームに基づき、政府の資金拠出、企業・市民からの寄付、企業からの技術、機材、人材、情報の提供、またアカウンタビリティー向上のためにメディア、民間財団、学識経験者らの参加・協力が行われています。ジャパン・プラットフォームに参加するNGOはアフガニスタン、イラク、イラン、リベリアなどの国々で紛争後の平和構築に向けて積極的に人道支援活動を行っています。

 次に、現地の市民社会団体が果たし得る独特かつ重要な役割について言及したいと思います。平和構築は紛争後の国の国民によるオーナーシップなしでは成功しえませんが、当該国の市民社会団体の活動は彼らのオーナーシップを強くあらわします。このような団体は現地の事情を最もよく把握しているため、平和構築の過程において大変効果的でもあります。例えば、当該共同体で伝統的な尊敬を勝ち得ている人は、かつての人権侵害者に罪を認めさせ、過去の過ちに対して犠牲者に公開の場で謝るよう説得することができるかもしれません。これは国民和解に対する直接的貢献となります。ブルンディにおいて、バシンガン・タヘはこのような機能を効果的に果たしたと承知しています。また、当該共同体の婦人団体が繰り返し呼びかけることによって、少年兵が徐々に武装解除に応じた例もあります。現地の市民社会団体の育成によって、市民社会団体への参加を通じて、自らの社会を自らの手で構築するという意識と手段が得られオーナーシップを高めるとの側面もあります。オーナーシップを育成することは、また個人や共同体の能力向上にとっても重要であり、このことは人間の安全保障の促進にもつながります。このように、紛争後の国において現地の市民社会団体の活動を発展させることは重要であり、国連及び国際社会はそのための支援を行うべきです。我が国としても、人間の安全保障基金や草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて、現地の市民社会団体と共にプロジェクトの実施に努めています。

 議長、

 アナン事務総長は有識者パネルの創設にあたって、いわゆる「北」の国々のNGOに比して、途上国のNGOによる国連活動への参加が少ないことを指摘しています。このように参加が異なっているのは、市民社会団体の果たす役割に対して国家の間で異なる評価があることの反映かもしれません。本日の討論を通じて、市民社会団体が紛争後の平和構築に果たす役割に関する共通認識が醸成されることを期待します。

   
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2004年

 
 

安保理公開討論「紛争後の平和構築における市民社会の役割」(仮訳)

2004年6月22日

議長、

 安保理において「紛争後の平和構築における市民社会の役割」に関する公開討論を開催する議長の指導力を多とします。事務総長が設立した「市民社会と国連の関係に関する有識者パネル」の報告が昨日発出されたことから、この公開討論は大変時宜にかなったものです。

 有識者パネルの報告書には、政府のみでは今日のグローバルな挑戦を解決できないとありますが、紛争後の平和構築にもこれはあてはまります。難民の帰還と定着、法の支配に基づく治安の回復、経済的復興、地域共同体の再建、国民和解等の多様な分野において、平和構築のために求められる全ての取り組みに、国家や国際機関のみで十分に効果的に対応できると考えることは現実的ではありません。これらの分野に長い間関わってきて強いコミットメントを有する市民社会団体は平和構築の過程において重要な補完的役割を有しています。これらの市民社会団体は支援活動の貴重な追加資源であるばかりではなく、支援活動を効果的に実施する上で役に立つ深い知識と貴重な経験を持っています。国連人道調整官や復興調整官と市民社会団体の協力的な接触により、紛争後の国の人々が明日は良い生活ができるとの希望を持てるような環境を作るという共通の目的の達成が容易になると考えます。

議長、

紛争後の平和構築の過程における市民社会団体の役割について、このほかに重要と考えられる点を2つ強調したいと思います。第一に、市民社会団体はその構成員が国際社会との関係に関する理解を深めるための教育の場を提供します。市民社会団体への参加を通じて、国際社会と自分自身が以下に深くかかわっているかを実感するようになり、国際協力の意識を高めるでしょう。このように、市民社会団体は、紛争後の社会において平和構築に取り組む政府の信頼できる支持者であり、貴重なパートナーでもあります。市民社会団体の歴史が十分でないところでは、非政府団体としての地位を尊重しつつ、現地の市民社会団体の育成・強化に努めていくことが適当な場合もあると考えられます。

 そのような観点から、本日はNGO、経済界及び政府が対等なパートナーシップの下に参加することにより、より効率的かつ迅速な対応を進める我が国のジャパン・プラットフォームについて紹介したいと思います。1999年に我が国のNGO数団体がコソボ難民支援の検討を開始しましたが、財政的基盤が十分ではなく、現場での経験を積んだ人材が不足していることが明らかとなりました。そこで、NGO4団体が政府と協力することにより弱点を克服する方法を模索しつつ、合同で難民キャンプの建設を計画しました。この過程で政府との協力だけでなく、経済界、メディア、学識経験者等の他のアクターとも協力関係を広めるた方が良いことが認識されるようになりました。このような認識に基づき、それぞれが対等なパートナーシップの下、その特性・資源を活かし、緊急援助のより迅速かつ効果的な実施に向かって連携・協力していく「ジャパン・プラットフォーム」が生まれました。このプラットフォームに基づき、政府の資金拠出、企業・市民からの寄付、企業からの技術、機材、人材、情報の提供、またアカウンタビリティー向上のためにメディア、民間財団、学識経験者らの参加・協力が行われています。ジャパン・プラットフォームに参加するNGOはアフガニスタン、イラク、イラン、リベリアなどの国々で紛争後の平和構築に向けて積極的に人道支援活動を行っています。

 次に、現地の市民社会団体が果たし得る独特かつ重要な役割について言及したいと思います。平和構築は紛争後の国の国民によるオーナーシップなしでは成功しえませんが、当該国の市民社会団体の活動は彼らのオーナーシップを強くあらわします。このような団体は現地の事情を最もよく把握しているため、平和構築の過程において大変効果的でもあります。例えば、当該共同体で伝統的な尊敬を勝ち得ている人は、かつての人権侵害者に罪を認めさせ、過去の過ちに対して犠牲者に公開の場で謝るよう説得することができるかもしれません。これは国民和解に対する直接的貢献となります。ブルンディにおいて、バシンガン・タヘはこのような機能を効果的に果たしたと承知しています。また、当該共同体の婦人団体が繰り返し呼びかけることによって、少年兵が徐々に武装解除に応じた例もあります。現地の市民社会団体の育成によって、市民社会団体への参加を通じて、自らの社会を自らの手で構築するという意識と手段が得られオーナーシップを高めるとの側面もあります。オーナーシップを育成することは、また個人や共同体の能力向上にとっても重要であり、このことは人間の安全保障の促進にもつながります。このように、紛争後の国において現地の市民社会団体の活動を発展させることは重要であり、国連及び国際社会はそのための支援を行うべきです。我が国としても、人間の安全保障基金や草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて、現地の市民社会団体と共にプロジェクトの実施に努めています。

 議長、

 アナン事務総長は有識者パネルの創設にあたって、いわゆる「北」の国々のNGOに比して、途上国のNGOによる国連活動への参加が少ないことを指摘しています。このように参加が異なっているのは、市民社会団体の果たす役割に対して国家の間で異なる評価があることの反映かもしれません。本日の討論を通じて、市民社会団体が紛争後の平和構築に果たす役割に関する共通認識が醸成されることを期待します。