2004年

 
 
アフガニスタン情勢に関する安保理公開会合における原口国連大使演説(仮訳)

2004年4月6日


議長、

三月三十一日及び四月一日にベルリンで開催されたアフガニスタン国際会議は、アフガニスタンに対する国際的な関心がイラク等他の問題に移ってしまうことが懸念されたにもかかわらず、多くの国より閣僚レベルの出席を得て、アフガニスタンの人々に対する国際社会の強いコミットメントを再確認するものでした。日本は、今次会議において新たに今後二年間で四億ドルの無償援助を提供する用意がある旨発表し、これにより、二千一年九月以降の貢献は十億ドル以上となります。また、会議においてアフガニスタンの復興・開発のためドナー社会から表明されたコミットメントの総額は、今後三年間で八十二億ドルに上ります。我が国は会議の共同議長として、これらの成果を歓迎するとともに、ドイツ政府に対して会議の開催につき謝意を表したいと思います。

日本は、当初より、政治プロセスの強化、人道支援から復興再建への切れ目のない移行、治安の確立及び全土への拡大は相互密接に関連しており、これらは総合的に対処すべきことを強調してきました。また、我が国は、人間一人一人の保護、能力強化を通じ、社会づくりと国づくりを進める「人間の安全保障」がアフガニスタンにおいても実現されることが重要であると考えます。平和及び治安に関するボン・プロセスと、復興に関する東京プロセスを統合するものである今次会議は、その意味でも、アフガニスタンの平和の定着に向けた重要なステップであったと考えています。

議長、このような成功について認識した上で、今後対処すべき課題として以下の三点を指摘したいと思います。

第一は、選挙です。カルザイ大統領により、大統領選挙及び議会選挙を九月に開催することが正式に発表されたことにより、今次会議は、選挙準備プロセスを更に加速化させる契機となりました。しかし、有権者登録及び在外アフガニスタン人に対する投票機会の提供の遅延への対処、選挙を成功裏に実施するために必要な資源の調達等、必要なすべての作業を今後数か月以内に迅速に実施する必要があります。日本は、選挙の成功に向けて支援を行うべく努力していく考えであり、かかる支援の一環として既に有権者登録のための費用として八百二十万ドルの支援を表明しています。

第二は治安ですが、ベルリン会議において、国際社会が、地方の治安回復及び復興開発への貢献のため、PRT(地方復興チーム)の展開等を通じて、カブール等一部都市部のみならず、アフガニスタン全土の治安状況の安定化のため一層の支援を行っていく決意を示したことを歓迎します。我が国は国連とともに武装解除・動員解除及び社会復帰(DDR)プロセスを主導しており、二月中旬までにカブールを含む四地域でのDDRプログラムの試行段階において五千五百名の元兵士を武装解除・動員解除しました。選挙前における同プログラムの積極的な履行及び強化が最も重要な課題です。今後、カブールにおける完全な武装解除、部隊司令官の武装解除、社会復帰プログラムの進展、雇用機会の創出等の必要に一層取り組む必要があると考えています。アフガニスタン諸派に対し、DDRへの完全なコミットメントを強く求めるとともに、近隣諸国及び国際社会に対してもプログラムへの一層の支援を求めたいと思います。

第三に、会議において最も議論された問題の一つは麻薬の生産・取引の問題であり、問題に対する効果的な対策の重要性が強く認識されました。単なる取り締まりでは問題を解決することはできず、代替作物の導入、麻薬生産に関わる地方グループのDDR推進等の措置の並行的な履行を含む総合的な取り組みが必要です。この関連で、農業・地域開発を進めることが重要であることは言を待ちません。日本は、地域コミュニティ・レベルの復興に焦点を当て、「人間の安全保障」を実現する試みとして、地方総合開発計画(緒方イニシアティブ)を加速化させており、これは、麻薬対策を側面支援することになると考えます。

議長、

ボン合意の署名及び東京会議の開催以降現在までに多くの成果が達成されていますが、ボン・プロセスの最後の、最も重要な指標である選挙の実施に向け、残された課題は多くあります。更に、アフガニスタンを再建し、永続的平和を達成するための取り組みは、選挙の実施で終了する訳ではなく、国際社会の長期のコミットメントが不可欠です。一度始めた国連のプロジェクトは、目的を達成するまで関与をし続けることが、国連の信頼性を守る上で必須であることを強調したいと思います。アフガニスタンと国際社会の永続的なパートナーシップがベルリン宣言で強調されましたが、アフガニスタン全体の明るい将来のため、これを維持すべく取り組まなければなりません。

ありがとうございました。

   
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2004年

 
 
アフガニスタン情勢に関する安保理公開会合における原口国連大使演説(仮訳)

2004年4月6日


議長、

三月三十一日及び四月一日にベルリンで開催されたアフガニスタン国際会議は、アフガニスタンに対する国際的な関心がイラク等他の問題に移ってしまうことが懸念されたにもかかわらず、多くの国より閣僚レベルの出席を得て、アフガニスタンの人々に対する国際社会の強いコミットメントを再確認するものでした。日本は、今次会議において新たに今後二年間で四億ドルの無償援助を提供する用意がある旨発表し、これにより、二千一年九月以降の貢献は十億ドル以上となります。また、会議においてアフガニスタンの復興・開発のためドナー社会から表明されたコミットメントの総額は、今後三年間で八十二億ドルに上ります。我が国は会議の共同議長として、これらの成果を歓迎するとともに、ドイツ政府に対して会議の開催につき謝意を表したいと思います。

日本は、当初より、政治プロセスの強化、人道支援から復興再建への切れ目のない移行、治安の確立及び全土への拡大は相互密接に関連しており、これらは総合的に対処すべきことを強調してきました。また、我が国は、人間一人一人の保護、能力強化を通じ、社会づくりと国づくりを進める「人間の安全保障」がアフガニスタンにおいても実現されることが重要であると考えます。平和及び治安に関するボン・プロセスと、復興に関する東京プロセスを統合するものである今次会議は、その意味でも、アフガニスタンの平和の定着に向けた重要なステップであったと考えています。

議長、このような成功について認識した上で、今後対処すべき課題として以下の三点を指摘したいと思います。

第一は、選挙です。カルザイ大統領により、大統領選挙及び議会選挙を九月に開催することが正式に発表されたことにより、今次会議は、選挙準備プロセスを更に加速化させる契機となりました。しかし、有権者登録及び在外アフガニスタン人に対する投票機会の提供の遅延への対処、選挙を成功裏に実施するために必要な資源の調達等、必要なすべての作業を今後数か月以内に迅速に実施する必要があります。日本は、選挙の成功に向けて支援を行うべく努力していく考えであり、かかる支援の一環として既に有権者登録のための費用として八百二十万ドルの支援を表明しています。

第二は治安ですが、ベルリン会議において、国際社会が、地方の治安回復及び復興開発への貢献のため、PRT(地方復興チーム)の展開等を通じて、カブール等一部都市部のみならず、アフガニスタン全土の治安状況の安定化のため一層の支援を行っていく決意を示したことを歓迎します。我が国は国連とともに武装解除・動員解除及び社会復帰(DDR)プロセスを主導しており、二月中旬までにカブールを含む四地域でのDDRプログラムの試行段階において五千五百名の元兵士を武装解除・動員解除しました。選挙前における同プログラムの積極的な履行及び強化が最も重要な課題です。今後、カブールにおける完全な武装解除、部隊司令官の武装解除、社会復帰プログラムの進展、雇用機会の創出等の必要に一層取り組む必要があると考えています。アフガニスタン諸派に対し、DDRへの完全なコミットメントを強く求めるとともに、近隣諸国及び国際社会に対してもプログラムへの一層の支援を求めたいと思います。

第三に、会議において最も議論された問題の一つは麻薬の生産・取引の問題であり、問題に対する効果的な対策の重要性が強く認識されました。単なる取り締まりでは問題を解決することはできず、代替作物の導入、麻薬生産に関わる地方グループのDDR推進等の措置の並行的な履行を含む総合的な取り組みが必要です。この関連で、農業・地域開発を進めることが重要であることは言を待ちません。日本は、地域コミュニティ・レベルの復興に焦点を当て、「人間の安全保障」を実現する試みとして、地方総合開発計画(緒方イニシアティブ)を加速化させており、これは、麻薬対策を側面支援することになると考えます。

議長、

ボン合意の署名及び東京会議の開催以降現在までに多くの成果が達成されていますが、ボン・プロセスの最後の、最も重要な指標である選挙の実施に向け、残された課題は多くあります。更に、アフガニスタンを再建し、永続的平和を達成するための取り組みは、選挙の実施で終了する訳ではなく、国際社会の長期のコミットメントが不可欠です。一度始めた国連のプロジェクトは、目的を達成するまで関与をし続けることが、国連の信頼性を守る上で必須であることを強調したいと思います。アフガニスタンと国際社会の永続的なパートナーシップがベルリン宣言で強調されましたが、アフガニスタン全体の明るい将来のため、これを維持すべく取り組まなければなりません。

ありがとうございました。