テロ行為等による国際の平和と安全に対する脅威に関する安保理公開討論における原口国連大使演説(仮訳)
2004年3月4日
議長、
テロリズムは無辜(むこ)の人々の命を奪い、社会を不安定化し、繁栄の基礎を危うくします。特に、グローバル化が進む今日、テロリズムが最先端の科学技術をその手段として活用する余地が大幅に増えてきていることを考えますと、それは、国際社会が直面する新しい最も深刻な脅威の一つと考えられます。効果的なテロ対策は国連に課されたきわめて重要な課題です。その意味で、アリアス大使(CTC議長)の指導の下、CTCがテロとの闘いを一層効果的に進める方途につき真剣に模索されてきたことを高く評価します。今般の報告書は昨年十一月の議長報告書に指摘された諸問題に効果的に対処するため、組織上の対応策等をまとめたものと理解します。日本としてはこれを支持することを冒頭申し上げたいと思います。
議長、
以上を申し上げた上で、次の四点を強調いたします。
第一に、CTCの組織改編に際しては、事務局等既存の国連の組織との調整を図り、国連全体の強化につながるように配慮することが重要です。今次報告書においても提案されているとおり、CTCが最近のテロ行為に見られる諸傾向に精通した専門家を抱え、それら専門家の力を得て、各国から寄せられる多くの情報を分析することでCTCとしてテロ撲滅に向け各国が共通して取る措置、また特定の国が取る措置について提言できるようになれば、CTCの役割は一段と強化されることになるでしょう。ただし、テロ対策関連法制整備支援等の技術支援は、既にUNODC(国連薬物犯罪オフィス)で行われているので、CTCの活動の強化がそのような既存の活動と重複することがないよう、今次報告書にあるとおり、他の国連機関と十分調整、連携がなされることを要請したいと思います。
第二に、テロ対策支援の推進と充実化も重要であります。CTCがこの分野で果たしてきた役割を評価しますとともに、新たな組織の下で関係国への訪問等を通じて適切な技術支援の促進が図られるようにする努力が重要と考えます。日本としても、国際テロ対策に関する協力の重要性にかんがみ、キャパシティ・ビルディング支援を積極的に行っており、特にアジア地域諸国を中心に、出入国管理、交通保安、税関、輸出管理、警察・法執行及びテロ資金管理の六分野でキャパシティ・ビルディング支援に関する各種セミナーを実施し、また、新たな分野として、生物・化学兵器テロ等に対する危機管理能力向上を目的とするセミナー等の技術協力の支援を行っており、本年度は約二百八十名を受け入れました。
第三に、テロ活動の実施を可能とする資金源を断ち、テロリストへの武器流出を防ぐことが引き続き重要と考えます。これらの措置はテロを防止していくために不可欠です。このために、安保理決議一二六七に基づき設置された委員会(対タリバーン、アル・カイーダ制裁委員会)との調整も重視されるべきであります。我が国としては、テロリスト等計四百団体を超える個人・団体に対し、資産凍結等の措置を実施してきています。また、我が国としては、引き続き各国においてテロ資金対策に必要な法整備が進められることを求めていきたく、そのために、特にアジア地域を中心として、テロ資金供与防止条約の締結を促すとともに必要な法制の整備のための支援を行っていく所存です。
第四に、日本は再活性化に関する今次報告を支持するものではありますが、だからといって、そのための経費が節度なく膨張して良いということにはなりません。この関連で、今次報告書が、強化された組織を含む全ての措置が「CTCにこれまで配分された予算や資源を不釣り合いな形で増加させてはならない」旨指摘していることを評価したいと思います。また、CTCの諸活動にかかる財源に関する透明性が確保されることも重要と考えます。一般的に新しい組織を作ると、本来の目的を越えて組織の存続、拡大が重視される傾向のあることはしばしば指摘されるところであります。その意味で、二○○七年十二月三十一日を新たな組織の期限とするサンセット条項が提案されていることも評価したいと思います。
議長、
CTCは既に三年目の活動に入っており、我々は今一度これまで取ってきたテロ対策が、組織面、措置の面の双方において有効に機能しているか否かを検証する時期に来ているものと考えます。その意味において、今回の提案は正しい方向にあると考えます。CTCの活動に寄せられる期待には大きなものがあります。新しいCTCにおいても、効果的に目標を達成しているかどうか現実の作業状況につき常に真剣なチェックが行われることを求めたいと思います。また、CTCの活動は国連加盟国全ての関心事でもあります。今後ともCTCの活動報告書については、遅滞なく全ての国連加盟国に開示されることを希望します。
議長、どうも有り難うございました。
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