小型武器問題に関する安保理公開討論における原口幸市国連大使演説
2004年1月19日
まず、私は、一昨年10月に行われた小型武器に関する安保理会合の時点から現在までの進展につきレビューを行いたいと思います。この間、特筆すべき点として二点が挙げられると考えます。一つは小型武器に関する中間会合の開催、もう一つは、小型武器に関する国連総会決議の全会一致での採択です。
我が国猪口邦子大使が議長を務めた中間会合においては、特に小型武器の非合法拡散とそれによる被害が全世界的規模の問題となりつつあるとの認識に基づき、本問題に対応するに当たり多国間主義を行動原則として打ち出しました。特に、全会一致原則を重視したことにより、被害国を含めた各国が軍縮のプロセスを自らのオーナーシップにより進めることが出来るとの実感を共有することが出来たと考えます。また、中間会合では、議長総括において、優先的に取り組むべき課題につき合意が得られたことをにより、問題解決のための国際協力の必要性、また個々の課題に対する国内法の整備、国際協力の促進、こうした活動に従事する要員の訓練、この分野での途上国に対する財政的支援の強化の必要性についても幅広い支持を集めました。
中間会合の成功を歓迎するとともに、各国の協力に対し改めて感謝申し上げます。同時に、2005年の次回中間会合とそれを受けた翌年の第2回小型武器会議に向け、現在高まっている機運を一層高めていくことが重要であると考えます。
議長、
小型武器の分野では申し上げたような成果がみられる反面、事務総長報告が的確に指摘しているように、この分野で取り組むべき課題は山積しています。より具体的には、小型武器の供給側と需要側の両面からの取り組みが必要です。本日は、そのうちのいくつかに言及したいと思います。
先に述べましたように、昨年一二月、我が国が共同提案国となり提出した小型武器に関する国連総会決議が全会一致で採択されました。この決議では、トレーシングに関するオープンエンド作業部会の設立が決定された点で特に大きな意義を有しています。
トレーシングとは小型武器の非合法移転を探知、犯罪化するための重要な方途です。特に、トレーシングに関する国際文書の作成は、小型武器の問題に供給側から取り組むための重要な課題であります。我が国としても、トレーシングを優先的な分野として積極的に取り組むことが必要と考えており、二月から開始されるオープンエンド作業部会において具体的な成果が挙げられるよう期待します。
小型武器を供給面からコントロールするための取り組みとして、武器禁輸措置の問題が次に挙げられます。
安保理による武器禁輸措置の発動においては、単に安保理決議を採択するだけではなく、採択後、その履行状況を監視し違反がある場合にはその対策を講じることも重要です。最近決議されたソマリア武器禁輸制裁の安保理決議において、モニタリング・グループの設立とともに、違反リストの作成を要請したことは、安保理が履行状況の監視の重要性を認識した現れとして歓迎します。かかる取り組みは、他の紛争地域において、同様の武器禁輸措置が講じられる場合の有益な参考となると考えます。
その一方で、小型武器を需要側から規制するとの観点も同じように重要であります。すなわち、世界各地の紛争問題に対応するためには、小型武器に対する需要を取り除いてやるための措置を国際社会として押し進める必要があると考えます。特に、紛争を終了させ、安定した社会をつくるためには、元兵士のDDRを進めることが不可欠です。武器の回収に進んで協力させるためには、それなりの経済的インセンティヴの供与を要しますし、さらに武器を放棄した元兵士に新しい生活を可能とする雇用の機会を提供することも重要です。
なお、私は、昨年末、ECOSOCのブルンジに関するアドホック・グループの一員として、同国を訪問しました。同国でも和平に応じた反乱軍の兵士の武装解除が真剣に模索されているのに感銘を受けました。同国での武装解除はカントンメントで行われるので、その成否は元兵士をカントンメントまでうまく集めることが出来るかにまずかかっています。そのためには、その間に元兵士には支援を行う必要がありますが、武器を持つ人間への援助は原則上出来ないというのが世銀の方針だと聞かされたました。プレ・カントンメント時の元兵士への支援もDDR成功の要件の一つである以上、この点についての支援方針の見直しも必要ではないかと考えます。
現在、安保理における審議は、公式の協議に限ってみれば、時間にして6~7割をアフリカにおけるPKOを始めとする国連の平和活動について費やされていると聞いております。アフリカにおける開発の促進は、その平和と安定に深く依存しますが、紛争地域の住民の間に広く拡散する小型武器の存在がアフリカの紛争を悲惨なものとし、その解決を難しくしています。小型武器問題は、とりわけアフリカにおいて深刻です。この関連で、昨年、安保理において西アフリカと中部アフリカの問題が精力的に議論され、特にECOWAS等による準地域的な小型武器問題への取り組みの重要性が安保理メンバーに強く認識されたことは重要です。その中でも、特に、元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰は、単に武器を回収し衝突の危険性を削減するといった効果だけでなく、紛争終了後の平和構築のための努力の一要素として小型武器に対する需要を減ずるという観点からも重要です。具体的には、我が国はアフガニスタンにおいて現在DDRプログラムを進めており、その成果については、国連における種々の機会を通じて共有していきたいと考えます。また、我が国は、従来より小型武器回収の対価として開発を提供するプログラムを行って参りました。かかる取り組みを今後も継続するともに、カンボジアでの武器回収の経験をアフリカ、ラテンアメリカ、中東地域における小型武器問題への取り組みにも適用していきたいと考えています。
議長、
我が国としては、安保理が引き続きこの重要な問題につき注意を払っていくよう希望します。また、国連事務総長が必要に応じ引き続き進展状況の報告を行うよう要請します。
議長、有り難うございました。
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