2004年

 
 

テロ行為による国際の平和と安全に対する脅威(仮訳)

2004年1月12日

議長、

一二六七委員会は、引き続きタリバーン、アル・カーイダ及びその関連団体との闘いにおいて重要な役割を果たしており、その活動を賞賛します。タリバーン、アル・カーイダに象徴されるように、今日テロも国境を越えて広がっています。 国際社会が一致団結してテロ撲滅に向け有効な手だてを講ずることは、我々の将来の平和と安全に大きな影響を及ぼすため、国際社会にとっては挑戦です。我々はテロとの闘いにおける努力を一時も怠ってはなりません。

議長、

先月公表された、安保理決議一三六三により設置されたモニタリング・グループの報告書は、アル・カーイダのイデオロギーが広まり続けているとしており、日本はその状況を深く懸念しています。九・一一の衝撃から二年以上が経過し、当時の国際社会の一致した危機意識が薄れつつあるように見受けられることは問題であります。アル・カーイダの規制という具体的な措置をとっている一二六七委員会の活動への各国の協力が不十分であるという報告書の指摘には非常に深刻なものがあります。特に、我が国は、報告書の指摘する次の三点についてコメントしたいと思います。

第一に、報告書において、包括制裁対象者リストが策定されて以来、これまでリスト対象者の国境での逮捕例が一例も報告されていないこと、また、国境管理当局が自国の制裁対象者リストに包括制裁対象者リストに含まれる十分な情報を取り込んでいないケースもあることが指摘されています。これらの事実は、我々の努力が未だ十分でないことを示しているため残念なことです。また、報告書では、イラクにおける外国勢力の活動が指摘されましたが、我々は、アフガニスタンにおける努力の後、イラクがテロリストの聖域となることは絶対に避けなければなりません。ここで、我が国としては、アフガニスタンにおいて民主的なプロセスを経て新憲法が採択されたことを歓迎し、新憲法に基づく正式政権樹立のための選挙実施に向けたアフガニスタン各派の協力を期待し、国際社会に対して政治プロセスへの更なる支援・協力を呼びかけるものでありますが、タリバーンの復活、国境地帯でのアル・カーイダの活動継続は大きな懸念材料であり、同国を再びテロリストの安住の地とすることがないよう、国際社会の一致した取り組みが重要です。その意味でも、イラク、アフガニスタンと国境を接する国々による厳格な国境管理政策が重要であり、これら諸国が従来の努力に加え、一層の取り組みを行うよう期待します。

第二に、モニタリング・グループの報告書において、アル・カーイダが生物・化学兵器の使用を既に決定しているとの懸念すべき記述があることが大きく報道されましたが、日本は、オウム真理教の一団によって引き起こされた地下鉄サリン事件を経験した国として、テロリストがこのような兵器を入手・使用することの危険性を強く認識しており、そのような兵器・物質がテロリストの手に渡らないようすべての国による一層厳格な武器禁輸措置の実施を求めます。また、この関連で、国連小型武器行動計画に含まれる措置の採用、核物質防護条約、NPT(核兵器不拡散条約)、CWC(化学兵器禁止条約)、BWC(生物兵器禁止条約)、可塑性爆薬禁止条約、爆弾テロ条約といった国際条約の批准ないし履行促進、MANPADS(携帯式地対空防衛システム)規制等に関するモニタリング・グループの勧告を支持します。日本は、この関連で、東南アジア諸国を対象としたテロ防止関連条約締結促進のためのセミナーを昨年十月に東京で開催する等の取り組みを行っています。

第三に、先述のとおり、報告書が一二六七委員会の活動に対する各国の協力が不十分であることにつき指摘したことは非常に懸念される状況です。他方、資金凍結措置については、包括制裁対象者リストのデータ表記の不統一、必要な情報の著しい不足、リストの追加・変更措置のプロセスの透明性の欠如から、国内において疑いのある人物・団体とリスト上の人物・団体の同一性を確認することが困難となり、各国にとって必要な措置の実施が困難となる場合もあります。日本としては、委員会がこれらの点の改善に向け一層の努力を行うよう求めたいと思います。日本は、包括制裁対象者リストの変更等を公表後速やかに国内で実施する体制を整えています。報告書が指摘しているように、一二六七委員会のアップデートされた包括制裁対象者リストは、各国により遅延なく国内法令や実施している措置に反映されることが極めて重要であります。このため、私が昨年七月の公開討論の場でも提案したように、アップデートの国内実施のタイミングについて、制裁委員会によるプレス・リリース発表または加盟国への正式通知後一定期間内に実施するべしといった指針を委員会が出すことは有益と考えます。さらに報告書は、テロに関与していると見られる団体が引き続き活動を認められていることを指摘しています。チャリティ等を通じた活動の規制が困難なことは十分認識していますが、チャリティから如何なる方面に資金が流れたかという実態がより明確になるような工夫がなされるなど、日本としては、これら団体の活動の透明性の確保が図られる必要があると考えます。また、非合法な地下金融の使用等は厳格に規制されるべきです。

議長、

最後になりましたが、制裁委員会議長としての貴議長、並びにチリ代表部のスタッフ及び制裁委員会事務局、モニタリング・グループ専門家の献身に改めて感謝します。この委員会が一層効果的に機能していくものと確信しています。

議長、ありがとうございました。
   
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2004年

 
 

テロ行為による国際の平和と安全に対する脅威(仮訳)

2004年1月12日

議長、

一二六七委員会は、引き続きタリバーン、アル・カーイダ及びその関連団体との闘いにおいて重要な役割を果たしており、その活動を賞賛します。タリバーン、アル・カーイダに象徴されるように、今日テロも国境を越えて広がっています。 国際社会が一致団結してテロ撲滅に向け有効な手だてを講ずることは、我々の将来の平和と安全に大きな影響を及ぼすため、国際社会にとっては挑戦です。我々はテロとの闘いにおける努力を一時も怠ってはなりません。

議長、

先月公表された、安保理決議一三六三により設置されたモニタリング・グループの報告書は、アル・カーイダのイデオロギーが広まり続けているとしており、日本はその状況を深く懸念しています。九・一一の衝撃から二年以上が経過し、当時の国際社会の一致した危機意識が薄れつつあるように見受けられることは問題であります。アル・カーイダの規制という具体的な措置をとっている一二六七委員会の活動への各国の協力が不十分であるという報告書の指摘には非常に深刻なものがあります。特に、我が国は、報告書の指摘する次の三点についてコメントしたいと思います。

第一に、報告書において、包括制裁対象者リストが策定されて以来、これまでリスト対象者の国境での逮捕例が一例も報告されていないこと、また、国境管理当局が自国の制裁対象者リストに包括制裁対象者リストに含まれる十分な情報を取り込んでいないケースもあることが指摘されています。これらの事実は、我々の努力が未だ十分でないことを示しているため残念なことです。また、報告書では、イラクにおける外国勢力の活動が指摘されましたが、我々は、アフガニスタンにおける努力の後、イラクがテロリストの聖域となることは絶対に避けなければなりません。ここで、我が国としては、アフガニスタンにおいて民主的なプロセスを経て新憲法が採択されたことを歓迎し、新憲法に基づく正式政権樹立のための選挙実施に向けたアフガニスタン各派の協力を期待し、国際社会に対して政治プロセスへの更なる支援・協力を呼びかけるものでありますが、タリバーンの復活、国境地帯でのアル・カーイダの活動継続は大きな懸念材料であり、同国を再びテロリストの安住の地とすることがないよう、国際社会の一致した取り組みが重要です。その意味でも、イラク、アフガニスタンと国境を接する国々による厳格な国境管理政策が重要であり、これら諸国が従来の努力に加え、一層の取り組みを行うよう期待します。

第二に、モニタリング・グループの報告書において、アル・カーイダが生物・化学兵器の使用を既に決定しているとの懸念すべき記述があることが大きく報道されましたが、日本は、オウム真理教の一団によって引き起こされた地下鉄サリン事件を経験した国として、テロリストがこのような兵器を入手・使用することの危険性を強く認識しており、そのような兵器・物質がテロリストの手に渡らないようすべての国による一層厳格な武器禁輸措置の実施を求めます。また、この関連で、国連小型武器行動計画に含まれる措置の採用、核物質防護条約、NPT(核兵器不拡散条約)、CWC(化学兵器禁止条約)、BWC(生物兵器禁止条約)、可塑性爆薬禁止条約、爆弾テロ条約といった国際条約の批准ないし履行促進、MANPADS(携帯式地対空防衛システム)規制等に関するモニタリング・グループの勧告を支持します。日本は、この関連で、東南アジア諸国を対象としたテロ防止関連条約締結促進のためのセミナーを昨年十月に東京で開催する等の取り組みを行っています。

第三に、先述のとおり、報告書が一二六七委員会の活動に対する各国の協力が不十分であることにつき指摘したことは非常に懸念される状況です。他方、資金凍結措置については、包括制裁対象者リストのデータ表記の不統一、必要な情報の著しい不足、リストの追加・変更措置のプロセスの透明性の欠如から、国内において疑いのある人物・団体とリスト上の人物・団体の同一性を確認することが困難となり、各国にとって必要な措置の実施が困難となる場合もあります。日本としては、委員会がこれらの点の改善に向け一層の努力を行うよう求めたいと思います。日本は、包括制裁対象者リストの変更等を公表後速やかに国内で実施する体制を整えています。報告書が指摘しているように、一二六七委員会のアップデートされた包括制裁対象者リストは、各国により遅延なく国内法令や実施している措置に反映されることが極めて重要であります。このため、私が昨年七月の公開討論の場でも提案したように、アップデートの国内実施のタイミングについて、制裁委員会によるプレス・リリース発表または加盟国への正式通知後一定期間内に実施するべしといった指針を委員会が出すことは有益と考えます。さらに報告書は、テロに関与していると見られる団体が引き続き活動を認められていることを指摘しています。チャリティ等を通じた活動の規制が困難なことは十分認識していますが、チャリティから如何なる方面に資金が流れたかという実態がより明確になるような工夫がなされるなど、日本としては、これら団体の活動の透明性の確保が図られる必要があると考えます。また、非合法な地下金融の使用等は厳格に規制されるべきです。

議長、

最後になりましたが、制裁委員会議長としての貴議長、並びにチリ代表部のスタッフ及び制裁委員会事務局、モニタリング・グループ専門家の献身に改めて感謝します。この委員会が一層効果的に機能していくものと確信しています。

議長、ありがとうございました。