2003年

 
 

第58回国連総会第3委員会 議題117(b)「人権及び基本的自由の効果的な享受の向上に向けた異なるアプローチを含む人権問題」及び議題117(c)「人権状況と特別報告者及び特別代表の報告」に関する原口国連常駐代表演説(仮訳)

2003年11月10日

議長、

まず初めに、基本的人権は世界のあらゆる場所で促進され擁護されなければならず、また全ての人権の促進及び擁護はウィーン宣言及び行動計画に定められているとおり国際社会の正当な関心事項であるとの日本政府の立場を再確認したいと思います。人権と基本的自由を促進し擁護することは、各々の国の主要な責任です。人権が問題となる多くのケースにおいて、好ましい進展が見られることを心強く思います。一方で、残念なことに何らの進展も見られない場合もあります。国際社会は、そのような未解決の問題を解決するとの固い決意を持って、これらに取り組む努力を更に強める必要があります。

北朝鮮当局による日本人の拉致に関する問題はそのような未解決の問題の一つです。本年4月16日の第59回国連人権委員会で採択された「北朝鮮の人権状況決議」は、北朝鮮に対して、外国人の拉致に関するすべての未解決の問題を明確にかつ透明性をもって解決することを求めています。日本に帰国した拉致被害者5人とそのご家族が1年以上別離状態となっている非人道的状況を北朝鮮が直ちに解消する必要があることを日本は強調します。可能な限り早期に拉致被害者と被害者のご家族の方々が日本で再会できるよう、北朝鮮が具体的かつ責任ある措置を取ることを求めます。さらに、昨年10月の国交正常化交渉の際に渡した、拉致事件の事実関係を問う質問票について、北朝鮮が具体的な情報を提供することを強く求めます。

同決議は強制的失踪作業部会に北朝鮮が協力することを求めるとともに、国連人権高等弁務官事務所が北朝鮮と建設的な対話を行うことも求めています。強制的失踪作業部会と国連人権高等弁務官事務所がその期待されている使命を効果的に果たせるよう、北朝鮮が完全かつ何の制限も設けることなく協力するよう強く求めます。同時に、全ての関係国が必要な場合には拉致問題について徹底的に調査を行い、関連情報を提供することによって協力することを求めます。

議長、

冒頭に、私はあらゆる人権の促進と擁護は国際社会の正当な関心であると申し上げました。一方で、人権問題に効果的に取り組むにあたっては、問題となっている国における歴史、文化、伝統といった人権問題に影響を与えている特定の状況を考慮に入れることが重要であると考えています。ある国が直面している特定の状況を無視して一律なアプローチを取っても、実際の人権状況の改善の助けになるとは考えられません。

このような視点に立って、以下の3つのアプローチを結合することが重要と考えています。第一に、対話を通じて各々の国の特定の状況についての相互理解を促進すること、第二に、効果的かつ実際的な方法で人権擁護を向上させるために協力すること、第三に、必要な場合には深刻な人権侵害に対する強い非難を表明することです。

このような三層のアプローチに基づき、相互理解を促進し、現実的な解決策を探求するため、日本はいくつかの国と人権対話を行いました。ここでの議論の基本的な目的は対話の相手を非難することではありません。好ましい進展があったときには、状況を完全に是正するためには依然としてやらなければいけないことがたくさんあると嘆くのではなく、改善の途をここまで来たと誉め、最終目標に到達する努力を継続し加速化するよう奨励する方が良いと考えています。

議長、

この文脈で、私は特にカンボジア、ミャンマー、スーダンの状況につき述べたいと思います。日本政府は、カンボジアにおいて人権の分野でいくつかの前向きな変化が起こっていることに強く力づけられています。国際監視団は概ね7月の総選挙はスムーズにおこなわれ、更に民主化のプロセスを強化する上で重要な一歩となるとの見方で一致しています。基本的に民主的な国家建設のために鍵となると考えられている法の支配の確立については、民法、民事訴訟法、腐敗対策法の法案が閣僚評議会に提出されたことを喜んでいます。クメールルージュ裁判については、カンボジア政府と国連の間で合意が署名されたことを歓迎するとともに、カンボジアの国会が合意を早急に批准し、また、国際社会が特別法廷に対し必要な財政的、人的支援を与えることを要請します。日本政府は人権の分野におけるカンボジア政府の真摯な努力を支援していく所存です。

議長、

ミャンマーについては、日本政府は現下の情勢を懸念しており、関係者の政治活動の自由が速やかに回復し、国民和解と民主化に向けた具体的な措置がとられることが重要と考えています。我々は、ミャンマー政府とアウン・サン・スーチー女史との対話を促進する上で重要な役割を果たしているラザリ事務総長特使の努力を完全に支持します。我々の考えでは、8月30日にキンニュン首相により発表されたロードマップといった最近の進展に注目しつつ、ミャンマー政府に対し真摯な努力をもって、全ての関係者が関与する形での国民和解及び民主化を速やかに進めることを求めます。我々はASEAN諸国がミャンマー政府がそうした措置をとるよう働きかけていることを歓迎します。我々は、ミャンマーはこれらの分野において着実に進展していけば、繁栄する大きな潜在性のある国であると考えています。

議長、

スーダンにおいては、我々二国間の人権対話が具体的な成果を上げていることを喜ばしく思います。例えば、8月にはハルツームにおいて、スーダン政府と日本政府はUNICEFとともに共同で女性性器切除に反対するシンポジウム開催しました。我が国は包括的停戦合意が実現すれば、人権状況がより一層増進されることを強く願っています

議長、

人権の擁護促進のためには、国際社会のたゆみない努力が必要です。国連はその創設以来これらの努力において常に極めて重要な役割を果たしてきました。私は日本政府が国連とこの目的のために協力していくとの固いコミットメントを確約して、締めくくりの言葉と致します。

有り難うございました。

   
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2003年

   

第58回国連総会第3委員会 議題117(b)「人権及び基本的自由の効果的な享受の向上に向けた異なるアプローチを含む人権問題」及び議題117(c)「人権状況と特別報告者及び特別代表の報告」に関する原口国連常駐代表演説(仮訳)

2003年11月10日

議長、

まず初めに、基本的人権は世界のあらゆる場所で促進され擁護されなければならず、また全ての人権の促進及び擁護はウィーン宣言及び行動計画に定められているとおり国際社会の正当な関心事項であるとの日本政府の立場を再確認したいと思います。人権と基本的自由を促進し擁護することは、各々の国の主要な責任です。人権が問題となる多くのケースにおいて、好ましい進展が見られることを心強く思います。一方で、残念なことに何らの進展も見られない場合もあります。国際社会は、そのような未解決の問題を解決するとの固い決意を持って、これらに取り組む努力を更に強める必要があります。

北朝鮮当局による日本人の拉致に関する問題はそのような未解決の問題の一つです。本年4月16日の第59回国連人権委員会で採択された「北朝鮮の人権状況決議」は、北朝鮮に対して、外国人の拉致に関するすべての未解決の問題を明確にかつ透明性をもって解決することを求めています。日本に帰国した拉致被害者5人とそのご家族が1年以上別離状態となっている非人道的状況を北朝鮮が直ちに解消する必要があることを日本は強調します。可能な限り早期に拉致被害者と被害者のご家族の方々が日本で再会できるよう、北朝鮮が具体的かつ責任ある措置を取ることを求めます。さらに、昨年10月の国交正常化交渉の際に渡した、拉致事件の事実関係を問う質問票について、北朝鮮が具体的な情報を提供することを強く求めます。

同決議は強制的失踪作業部会に北朝鮮が協力することを求めるとともに、国連人権高等弁務官事務所が北朝鮮と建設的な対話を行うことも求めています。強制的失踪作業部会と国連人権高等弁務官事務所がその期待されている使命を効果的に果たせるよう、北朝鮮が完全かつ何の制限も設けることなく協力するよう強く求めます。同時に、全ての関係国が必要な場合には拉致問題について徹底的に調査を行い、関連情報を提供することによって協力することを求めます。

議長、

冒頭に、私はあらゆる人権の促進と擁護は国際社会の正当な関心であると申し上げました。一方で、人権問題に効果的に取り組むにあたっては、問題となっている国における歴史、文化、伝統といった人権問題に影響を与えている特定の状況を考慮に入れることが重要であると考えています。ある国が直面している特定の状況を無視して一律なアプローチを取っても、実際の人権状況の改善の助けになるとは考えられません。

このような視点に立って、以下の3つのアプローチを結合することが重要と考えています。第一に、対話を通じて各々の国の特定の状況についての相互理解を促進すること、第二に、効果的かつ実際的な方法で人権擁護を向上させるために協力すること、第三に、必要な場合には深刻な人権侵害に対する強い非難を表明することです。

このような三層のアプローチに基づき、相互理解を促進し、現実的な解決策を探求するため、日本はいくつかの国と人権対話を行いました。ここでの議論の基本的な目的は対話の相手を非難することではありません。好ましい進展があったときには、状況を完全に是正するためには依然としてやらなければいけないことがたくさんあると嘆くのではなく、改善の途をここまで来たと誉め、最終目標に到達する努力を継続し加速化するよう奨励する方が良いと考えています。

議長、

この文脈で、私は特にカンボジア、ミャンマー、スーダンの状況につき述べたいと思います。日本政府は、カンボジアにおいて人権の分野でいくつかの前向きな変化が起こっていることに強く力づけられています。国際監視団は概ね7月の総選挙はスムーズにおこなわれ、更に民主化のプロセスを強化する上で重要な一歩となるとの見方で一致しています。基本的に民主的な国家建設のために鍵となると考えられている法の支配の確立については、民法、民事訴訟法、腐敗対策法の法案が閣僚評議会に提出されたことを喜んでいます。クメールルージュ裁判については、カンボジア政府と国連の間で合意が署名されたことを歓迎するとともに、カンボジアの国会が合意を早急に批准し、また、国際社会が特別法廷に対し必要な財政的、人的支援を与えることを要請します。日本政府は人権の分野におけるカンボジア政府の真摯な努力を支援していく所存です。

議長、

ミャンマーについては、日本政府は現下の情勢を懸念しており、関係者の政治活動の自由が速やかに回復し、国民和解と民主化に向けた具体的な措置がとられることが重要と考えています。我々は、ミャンマー政府とアウン・サン・スーチー女史との対話を促進する上で重要な役割を果たしているラザリ事務総長特使の努力を完全に支持します。我々の考えでは、8月30日にキンニュン首相により発表されたロードマップといった最近の進展に注目しつつ、ミャンマー政府に対し真摯な努力をもって、全ての関係者が関与する形での国民和解及び民主化を速やかに進めることを求めます。我々はASEAN諸国がミャンマー政府がそうした措置をとるよう働きかけていることを歓迎します。我々は、ミャンマーはこれらの分野において着実に進展していけば、繁栄する大きな潜在性のある国であると考えています。

議長、

スーダンにおいては、我々二国間の人権対話が具体的な成果を上げていることを喜ばしく思います。例えば、8月にはハルツームにおいて、スーダン政府と日本政府はUNICEFとともに共同で女性性器切除に反対するシンポジウム開催しました。我が国は包括的停戦合意が実現すれば、人権状況がより一層増進されることを強く願っています

議長、

人権の擁護促進のためには、国際社会のたゆみない努力が必要です。国連はその創設以来これらの努力において常に極めて重要な役割を果たしてきました。私は日本政府が国連とこの目的のために協力していくとの固いコミットメントを確約して、締めくくりの言葉と致します。

有り難うございました。