テロ行為による国際の平和及び安全に対する脅威に関する安保理公開会合における原口国連大使演説(仮訳)
2003年10月16日
議長、
八月のジャカルタにおけるホテル爆破事件及びバグダッドの国連事務所に対する攻撃、九月のムンバイ市内における爆弾事件、最近もイラクで行われているテロ攻撃が示すとおり、テロの脅威が増大していることは、公正な世界の創造創設に向けた我々の努力に対する極めて深刻な挑戦です。テロリズムとの闘いにおける国際社会の断固たる取り組みが重要であることを改めて強調したいと思います。この関連で、以下の三点を指摘したいと思います。
第一に、テロリストに安住の地を与えないことの重要性については繰り返し指摘してきたところです。国際社会の度重なる呼びかけにもかかわらず、テロ関連条約・議定書の締約国の数は、依然として十分とは到底言えない状況です。我が国は、この点に関連し、東南アジア諸国のテロ防止関連条約加盟を奨励することを目的として、本日及び明日、東京においてセミナーを開催しています。さらに、テロリストに安住の地を与えないためには、国際的取り組み、地域取り組みが不可欠です。CTCが他の国際機関及び地域機関との連携を強化していることを歓迎します。アジアに焦点を当てた地域取り組みの例として、九月、中国、デンマーク、ドイツ、スペイン及び我が国の共催により、ASEMテロ対策セミナーが北京で開催されており、我が国としても、このような国際協力・地域協力を一層強化していく決意です。
第二に、テロリストによるテロ行為を実施する手段へのアクセスの否定に関し、テロ資金防止条約の締結促進、決議一二六七等に基づくアルカーイダ・タリバンに対する資産凍結措置の厳格な実施が重要なことは言うに及びません。しかし、国連加盟国は、それにとどまらず、なお一層の努力を行うべきです。我が国は、決議一三七三に基づき従来よりハマスの軍事部門の資産を凍結する措置をとってきましたが、同団体がテロを容認・支持する発言を行ってきていることに鑑み、今般、ハマス全体に対する資産凍結措置を実施することとしました。この我が国の措置は、パレスチナ自治政府が「ロードマップ」において求められているテロ基盤の解体に向け一層の努力を行うことを後押しし、ひいては、イスラエル・パレスチナ両者の平和共存と中東和平の実現に資するものと信じます。
テロ行為の直接的な手段として使用され得る武器に関し、我が国として、国連通常兵器登録制度に関する政府専門家グループがMANPADS(携帯式地対空防衛システム)を登録及び報告の対象となるカテゴリーに含めることを勧告したことを歓迎します。MANPADSの同カテゴリーへの追加が加盟国間で合意されることにより、テロリストによるMANPADS取得の防止に大きく貢献することになることを期待します。同時に、CTC及び安保理は、テロリズムとの闘いの文脈において、大量破壊兵器の拡散の問題も真剣に一体となって取り組むべきであると考えます。
第三に、各種の制約から来るキャパシティの不足から、開発途上国の多くが、テロ対策の重要性を認識し、かつ、そのために努力する真摯な意図を持っているにもかかわらず、有効なテロ対策措置をとることができていません。このような開発途上国に対しこの分野でキャパシティ・ビルディングのための支援を提供することが重要です。我が国は、CTCとも連携しつつ、開発途上国の研修員の受け入れ等の活動を通じ、これに引き続き貢献していきます。
議長、
テロリズムの根本原因に対処することの重要性が様々な機会に強調されてきました。根本原因を特定しこれに対処することは極めて重要であり、すべての関係者は根本原因の解消のため真剣な努力を求められます。他方、テロの根本原因への対処の重要性は認めつつも、根本原因の存在をテロリズムを正当化する理由としたり、テロ対策が進まないことの言い訳とすることは絶対に受け入れられません。国際社会の一致した、断固たる意思と行動があってはじめて、我々はテロに打ち勝つことができることを認識しなければなりません。
ありがとうございました。
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