第58回国連総会議題56「安保理改革」における原口大使演説(仮訳)
2003年10月14日
議長、
まず最初に、前回の安保理改革作業部会を効率的に進めるために努力をされたヤン・カヴァン前総会議長に感謝したいと思います。また、作業部会の包括的な報告を準備されたインガルフソン・アイスランド大使とカセムサルン・タイ大使に感謝申し上げます。大使お二人がNYを離任され、作業部会の有能な同僚を失うことは残念ですが、お二人の今後のご成功をお祈りしたいと思います。
議長、
昨年からのイラク情勢に関する議論の過程で、国際の平和と安全の維持に主要な責任を有する安保理の実効性に疑問が呈されるようになりました。この疑問は安保理改革の必要性に関する議論にかつてないほどのモメンタムを与えました。総会一般討論の開始にあたってのメンバー国に対する演説の中で、コフィ・アナン事務総長は「安保理の決定が、特に途上国からより尊重されるよう欲するのであれば、更なる緊急性を以て安保理の構成の問題に対処する必要がある」旨述べています。これに続く一般討論演説で3分の2以上のメンバー国が安保理改革を含む国連改革の必要性に言及しました。この数字は本件に関しモメンタムが高まっていることを強く示すものです。
議長、
10年前に始まった作業部会の議論を振り返って、安保理改革についての一般的合意に達する上で必要な要素は既に出揃っているという事実にも拘わらず、何ら見るべき進展がなく、また停滞状況からの出口が見えないことは遺憾です。カヴァン前議長は非公式クエスチョネアへの返答に関するサマリーで、「返答した全ての国は一ヶ国の例外を除き作業部会の動きが満足すべきものではないと感じている」旨述べています。日本も作業部会に進展がない現状に強い不満を表明します。我々は現在の停滞状況の責任の大半は作業部会そのものにあることを認識すべきです。
現在の状況をそのままにしておくことは国連が世界の変化に対応していく能力に疑問を投げかけます。作業部会は安保理改革を議論するために総会が設立した唯一の機関であり、我々は今次総会における作業部会で具体的な成果を収めるよう最大限努力すべきです。もし次回作業部会で何ら進展がない場合には、日本としては作業部会の議論のやり方を見直すことが必要かも知れないと考えます。この関連では、日本は作業部会の議長としての新総会議長ジュリアン・ハントゥ氏とその新しいビューローの指導力に期待します。私はまた日本も作業を支援し、そして作業部会の議論を促進するための新たなアイディアを出すよう努力する考えであることを付け加えます。
議長、
著名人によるハイレベルパネルの設立という事務総長のイニシアティブに触れないわけにはいきません。日本は事務総長のイニシアティブを支持するとともに、大きな関心を持ってその進展をフォローします。事務総長が先述の演説で述べたとおり、確固かつ明確な決定ができるのは加盟国ですが、特に安保理改革を含む国連改革に関する実質的な勧告が発出されることを期待しています。日本はこのイニシアティブに対し可能な限りの貢献を行う所存です。
事務総長はまた、「国連ミレニアム宣言の実施」の報告の中で、国連改革の重要性を強く訴えています。彼は、国連が新たな挑戦に対応するためには、国連創設60周年にあたる2005年に行われるミレニアム宣言の進展のレビューまでに、国連の変革に関し合意すべきであると提案しています。日本はこの提案を真剣に受けとめています。川口外務大臣が先月23日の一般討論演説で述べたように、日本はそうしたレビューの機会に各国の首脳レベルが集まり、安保理改革をはじめとする国連改革に関し政治的意思決定をすべきであると考えます。
議長、
安保理が60年前の基本構造を維持するままでは、国連が活動するシステムの正統性に対する疑問を呼び起こすと言わざるを得ません。全ての加盟国に対し、組織の機能を強化しその正統性を回復するために具体的行動をとることを求めます。日本はそのために積極的な役割を果たす決意であることを改めて表明します。
議長、ありがとうございました。
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