2003年

 
 

第58回国連総会議題11「安保理報告」における原口大使演説(仮訳)

2003年10月13日

議長、

まず最初に安保理年次報告の紹介をしたジョン・D・ネグロポンテ大使に感謝します。また、報告書の冒頭文を起案した英国、スペインに感謝します。

議長、

報告書がカバーしている期間においては、報告書の冒頭文にもあるとおりイラク問題が安保理の議論の多くの部分を占めました。多大の時間と努力がイラク問題の議論に費やされました。その過程で、国際の平和と安全の維持に主要な責任を有する安保理の実効性に疑問が呈されるようになりました。安保理報告起案の過程で安保理メンバー各国の見解をどのように報告書に反映させるかを巡り活発な議論があったものと理解します。私はそのような率直な見解を例年のように安保理公開会合で聴取することを期待していました。しかしながら、過去の慣例に反し、今回自国の見解を発言する安保理メンバーはありませんでした。安保理メンバーから直接見解を聴取することができなかったのは、安保理の非メンバーに対する透明性、説明責任を確保するとの観点から残念なことでした。

議長、

今回の報告に要約されている安保理の個々の活動内容にコメントする考えはありませんが、安保理が検討するに値する可能性のある二つの論点を提起したいと思います。

一点目は安保理の活動の非メンバーに対する開放性の確保に関してです。日本は近年安保理が非メンバーに開放性を確保することをますます認識するようになり、たった今ネグロポンテ大使が確認したとおり、公開討論がより頻繁に行われていることを歓迎します。また、時々公開ブリーフィングと発表された会合が公開討論に変更されることがあります。このことは歓迎すべき進展ですが、このような変更がしばしばショートノーティスで行われています。8月のコソボに関する議論を例に取ると、我々は形式の変更を会合当日のジャーナルで初めて知らされました。結果として多くの非メンバーがこの機会から十分な利益を得ることができませんでした。我々は、安保理非メンバーがそのような機会を十分に活用できるようにするため、安保理に対しそのような変更がある場合には合理的な範囲で前広に通知するよう求めたいと思います。同様のことが、今月初めに開かれたような安保理緊急会合にもあてはまります。緊急会合である故に十分前もってこのような緊急会合を発表することが難しいことは理解できます。しかしながら、私は非メンバーが希望する場合に発言できるよう、前もってこのような緊急会合を通報するような手段の確保を、安保理メンバーが模索することが必要であると考えます。

更に、本来その月の活動をレビューすることを目的とするラップ・アップ・セッションが、その月の活動とは全く無関係のテーマ別議論を行うことで、その本来の目的からずれてしまうケースがあります。

これらは我が国のような幾つかの非メンバーに不満をもたらす手続きに関する幾つかの事例です。安保理メンバーが引き続きこの分野で、このような手続き的な改善に向けた努力を続けることを希望します。

議長、

二点目に、日本は安保理がその意思決定過程で、議論されている事項に対し死活的な利益を持っている国々を関与させる手段を引き続き検討するよう要望します。

平和維持活動(PKO)、政治ミッション、平和構築など財政的なインプリケーションがある決議に関し、特に主要な財政貢献国との関係で透明性が確保される必要があります。PKOの要員派遣国については安保理と要員派遣国(TCC)との協議メカニズムが確立しています。主要財政貢献国政府は国内で納税者に対し説明する義務があることから、これら主要財政貢献国についても同様の何らかのメカニズムが必要です。このような経費の大半を負担する非メンバー国が、安保理15ヶ国が下す決定につき相談も受けず、決定が適正に実施されているかを確認することなく、決定を実施するために必要な小切手をただ黙々と切ることを期待するのは非合理的です。

この関連で、本代表団が継続的にとりあげてきた安保理ミッションについて予算上の透明性については未だ十分な説明を受けていないことを改めて指摘します。他方で、ミッションの派遣前、派遣後の説明がより詳細に行われるようになったこと等、安保理ミッションの透明性に関する他の問題については改善が見られることを認めたいと思います。

議長、

手続き的な改善は重要です。しかしながらそれだけでは安保理の正統性の十分な強化には十分ではありません。我々は世界レベルで責任を負う意思と能力のある国々を常任理事国として含めるよう安保理を改革すべきであると考えます。安保理改革に関する日本の立場はこの審議に引き続き行われる「安保理改革」の議論の際に述べることとしたいと思います。

ありがとうございました。

   
法令外国語訳 外交政策Q&A  
(c) Permanent Mission of Japan to the United Nations
866 United Nations Plaza, New York, NY 10017
Tel: 212-223-4300

2003年

 
 

第58回国連総会議題11「安保理報告」における原口大使演説(仮訳)

2003年10月13日

議長、

まず最初に安保理年次報告の紹介をしたジョン・D・ネグロポンテ大使に感謝します。また、報告書の冒頭文を起案した英国、スペインに感謝します。

議長、

報告書がカバーしている期間においては、報告書の冒頭文にもあるとおりイラク問題が安保理の議論の多くの部分を占めました。多大の時間と努力がイラク問題の議論に費やされました。その過程で、国際の平和と安全の維持に主要な責任を有する安保理の実効性に疑問が呈されるようになりました。安保理報告起案の過程で安保理メンバー各国の見解をどのように報告書に反映させるかを巡り活発な議論があったものと理解します。私はそのような率直な見解を例年のように安保理公開会合で聴取することを期待していました。しかしながら、過去の慣例に反し、今回自国の見解を発言する安保理メンバーはありませんでした。安保理メンバーから直接見解を聴取することができなかったのは、安保理の非メンバーに対する透明性、説明責任を確保するとの観点から残念なことでした。

議長、

今回の報告に要約されている安保理の個々の活動内容にコメントする考えはありませんが、安保理が検討するに値する可能性のある二つの論点を提起したいと思います。

一点目は安保理の活動の非メンバーに対する開放性の確保に関してです。日本は近年安保理が非メンバーに開放性を確保することをますます認識するようになり、たった今ネグロポンテ大使が確認したとおり、公開討論がより頻繁に行われていることを歓迎します。また、時々公開ブリーフィングと発表された会合が公開討論に変更されることがあります。このことは歓迎すべき進展ですが、このような変更がしばしばショートノーティスで行われています。8月のコソボに関する議論を例に取ると、我々は形式の変更を会合当日のジャーナルで初めて知らされました。結果として多くの非メンバーがこの機会から十分な利益を得ることができませんでした。我々は、安保理非メンバーがそのような機会を十分に活用できるようにするため、安保理に対しそのような変更がある場合には合理的な範囲で前広に通知するよう求めたいと思います。同様のことが、今月初めに開かれたような安保理緊急会合にもあてはまります。緊急会合である故に十分前もってこのような緊急会合を発表することが難しいことは理解できます。しかしながら、私は非メンバーが希望する場合に発言できるよう、前もってこのような緊急会合を通報するような手段の確保を、安保理メンバーが模索することが必要であると考えます。

更に、本来その月の活動をレビューすることを目的とするラップ・アップ・セッションが、その月の活動とは全く無関係のテーマ別議論を行うことで、その本来の目的からずれてしまうケースがあります。

これらは我が国のような幾つかの非メンバーに不満をもたらす手続きに関する幾つかの事例です。安保理メンバーが引き続きこの分野で、このような手続き的な改善に向けた努力を続けることを希望します。

議長、

二点目に、日本は安保理がその意思決定過程で、議論されている事項に対し死活的な利益を持っている国々を関与させる手段を引き続き検討するよう要望します。

平和維持活動(PKO)、政治ミッション、平和構築など財政的なインプリケーションがある決議に関し、特に主要な財政貢献国との関係で透明性が確保される必要があります。PKOの要員派遣国については安保理と要員派遣国(TCC)との協議メカニズムが確立しています。主要財政貢献国政府は国内で納税者に対し説明する義務があることから、これら主要財政貢献国についても同様の何らかのメカニズムが必要です。このような経費の大半を負担する非メンバー国が、安保理15ヶ国が下す決定につき相談も受けず、決定が適正に実施されているかを確認することなく、決定を実施するために必要な小切手をただ黙々と切ることを期待するのは非合理的です。

この関連で、本代表団が継続的にとりあげてきた安保理ミッションについて予算上の透明性については未だ十分な説明を受けていないことを改めて指摘します。他方で、ミッションの派遣前、派遣後の説明がより詳細に行われるようになったこと等、安保理ミッションの透明性に関する他の問題については改善が見られることを認めたいと思います。

議長、

手続き的な改善は重要です。しかしながらそれだけでは安保理の正統性の十分な強化には十分ではありません。我々は世界レベルで責任を負う意思と能力のある国々を常任理事国として含めるよう安保理を改革すべきであると考えます。安保理改革に関する日本の立場はこの審議に引き続き行われる「安保理改革」の議論の際に述べることとしたいと思います。

ありがとうございました。