ミレニアム・サミット成果のフォローアップ(議題60)及び事務総長年次報告(議題10)に関する総会討議における原口幸市国連大使演説(仮訳)
2003年10月6日
議長、
国際社会は、グローバル化の進展の結果、国家間の相互依存を益々強めつつあります。我々はもはや、一国のみで安全や繁栄を達成することができません。我々が、不要な摩擦を回避し、協力を強化するためには、国際的な合意やルールに従って行動する必要があります。我々は、有効で、適正に構築された多国間の枠組みを益々必要としています。更に、我々が今日直面する問題は、一層多様で複雑になっています。効果的で、永続する解決を、包括的で統合されたアプローチによって求めなければなりません。
国連は、普遍的な構成と広範な権限を持っており、我々の時代のこうした要求に応えることのできる機関です。我々は、国連が重要な役割、他のどの国際機関も満たすことのできない役割を、引き続き果たしていくべきであると信じています。
国連によるイラク問題への対応の結果として、不満や批判が提起されたことも事実です。しかしながらこれらは、我々が国連の役割に対して抱いている高い期待が、違った形で現れたものととらえるべきでしょう。我々は引き続き、国際の平和と安定を維持する責任を負った機関としての、国連の妥当性を信じています。
もちろん、このことは我々が国連の現状に満足していることを意味しません。国連が、いくつかの側面において改革を必要としていることには疑いがありません。我々加盟国は、国連を再び活性化するための方途と手段を真剣に考える必要があります。国連が、真正な世界統治システムとして、その期待された役割を一層有効に果たせるようにするためには、どのように国連を改革することが最適か、ということです。
議長、
これに関連し、日本は安保理改革、行財政改革、及び総会の再活性化が、特に注目に値すると考えます。
第一に、安保理改革とは基本的に、理事会の正統性と有効性を高めることを意味します。事務総長はミレニアム宣言の実施に関する報告書の中で、「安保理の構成は、21世紀の地政学的現実と調和しないと思われる」と述べており、私はこれに全面的に同意します。
安保理は、グローバルな責任を担う意思と能力をともに持った国を、新たな常任理事国として加える必要があると我々は考えています。我が国の外務大臣が一般討論演説で明確に述べたとおり、日本は引き続き安保理改革の実現のために積極的に取り組み、改革された安保理の中で、常任理事国としてより大きな責任を担いたいと考えています。
第二に、国連がその限られた財政的資金の中で新たな問題に対処するためには、活動を一層厳格に優先順位付けすること、時代遅れの活動からは更に資金を再配置することを通じて、予算を一層合理化しなければなりません。これが2004/05年度計画予算審議における、我が政府の基本的立場です。
分担率については、適切なタイミングにて、各国の経済実勢や、国連における地位・責任をも反映した、より均衡のとれた公平なものとしていく必要があります。
私はまた、加盟国間における、国連事務局職員数の衡平な地理的配分が必要であることにも、皆様の注意を喚起したいと思います。これは、まだ達成までには遠い目標です。深刻な過小代表は、優先事項として、是正されなければなりません。
私がここで特に強調したいことは、加盟国の間に公平感が広く共有されなければ、我々は国連の円滑な運営を望み得ないということであります。長期的には、個々の加盟国が、国連が公正かつ衡平に運営されていると感じて初めて、国連は加盟国の全面的な支持を得ることができるでしょう。特定の国々が、過度の負担を強いられている、あるいは処遇が公平でないと感じているのに、これが顧みられないとすれば、私は国連に対する支持が深刻に損なわれかねないと考えています。
第三に、国連の外交官達は、外の世界にほとんど影響のない多数の決議を通すことのみに専心しているのではないか、との印象を与えるかも知れません。総会が、国連の主たる審議機関、政策形成機関、代表的機関としての役割を効果的に果たせるようにするためには、総会における議論を再び活性化し、妥当性を回復しなければなりません。このためにとるべき措置として明らかなのは、議題を更に合理化し、整理を行うことです。
議長、
ここで私は、事務総長がミレニアム宣言の実施に関する報告書であげている三つの分野、すなわち平和と安全、開発、人権と民主主義、に移りたいと思います。
イラクにおける安全の回復と復興は、依然として我々の優先課題です。日本は、イラクが近隣と平和裡に共存しうるような、穏健で統一された国になるよう、国際社会が支援することが極めて重要であると考えています。この関連で、我々は現在議論されている新たな安保理決議が、国際的なパートナーシップの強化のために良い基盤を提供することを望んでいます。
北東アジアの平和と安全については、北朝鮮の核開発計画が、日本にとってのみならず、国際社会全体にとって、最も重大な懸念事項です。我々は今一度、北朝鮮に対し、全ての核開発計画を、速やかに、完全、検証可能かつ不可逆的な形で廃棄することを求めます。
同時に日本は、川口外務大臣が述べたとおり、核問題、ミサイルの問題、拉致問題を含む全ての未解決の問題を包括的に解決した後、日朝平壌宣言に基づき、日朝国交正常化の実現を目指していきます。
軍縮と不拡散の分野においては、日本は、核兵器によって引き起こされる壮絶な悲劇を体験した唯一の国として、核兵器のない平和で安全な世界に向けて、現実的で漸進的なアプローチに基づき、精力的で決意に満ちた外交努力を行っています。我々は今次総会において、「核兵器の全面的廃絶への道程」決議案を提出します。加盟国の圧倒的な支持を呼びかけたいと思います。
我々は皆、バグダッドの国連本部に対するテロ攻撃に衝撃を受けました。これは、我々全てに対する攻撃でした。我々は卑劣なテロリスト達に対し、断固たる行動をとらなければなりません。以前にもまして、今こそ、強力なテロ対策をとる政治的意思を示すとともに、それを実行する能力をもつ必要があります。同時に、国連及び人道要員の安全確保のため、より有効な方途を探るべきです。
普遍的な刑事司法を実現し、重大な罪を犯した者に対する不処罰に終止符を打つこともまた、武力紛争の根元的原因に対処する一つの方法です。カンボディアは、国連の支援の下にクメール・ルージュ裁判を実施するための努力を払っていますが、日本はこれを支援する上で中心的な役割を果たしてきており、国連とカンボディアとの間で合意案が署名されたことを歓迎します。我々は、カンボディア政府と国連の双方に対し、同国において正義を早期に実現するためのプロセスを加速するよう呼びかけるとともに、加盟国の同裁判への支援を訴えたいと思います。
議長、
10月1日、第3回アフリカ開発会議(TICADⅢ)が成功裡に終了したことをご報告できるのは幸いです。TICADプロセスは今年10年目を迎えますが、これはアフリカ開発に対する日本の強いコミットメントを示すものです。我々は、国際社会がアフリカに対する援助疲れに苦しんでいた正にそのとき、アフリカ支援の必要を強調してきたことを誇りに思います。TICADⅢの結果が、アフリカ開発のための更なる重要なモメンタムとなることを希望します。
ミレニアム開発目標を達成するためには、全ての国がコミットメントを実現するための自らの努力を増大させ、具体的で前向きの結果を生み出さねばなりません。先進国と途上国とがお互いに、ゴールと目標に向けた努力が足りないと批判し合うことになってしまうとすれば、残念なことです。事務総長のミレニアム宣言(A/58/323)に関する報告については、我が国政府はいくつかのコメントがあり、文書にて後日、事務局に提出するとともに、加盟国に配布するよう準備しています。
自然災害は、しばしば我々が苦労して得た開発努力の貴重な成果を消し去ってしまいます。したがって、防災は持続可能な開発にとって、不可欠の前提条件の一つです。この機会に、21世紀の新たな戦略を策定するため、国連の枠組みにおいて防災世界会議を我が国において開催するとの提案を、強調したいと思います。
持続的な開発を達成する上で、教育もまた、重点を置くべき鍵となるものです。日本は引き続き、国連持続可能な開発のための教育の10年を推進し、本件についての決議案を提出します。
議長、
我々は、人権の尊重、民主主義と良い統治の確立が、社会が繁栄していくための健全な基盤にとって欠かせない要素であると確信しています。しかし、このプロセスは自動的に進んでいくものではありません。これまでも、またこれからも、外部から、また内部から、様々な挑戦にさらされるでしょう。
これらの挑戦は非常に多様でかつ複雑であるため、我々の政治的、経済的及び社会的生活の広範な側面を包含する、包括的で統合されたアプローチを必要としています。日本は「人間の安全保障」の概念的枠組みを積極的に推進しており、個々の人々と社会とを人間中心の視点から保護し、能力を高めるための努力を強化しています。我々は、人間の安全保障委員会の報告書に盛られた提言を実現するための努力を継続します。
議長、
ミレニアム宣言の実施の進展は、2005年にレビューされることになっています。日本は宣言に盛られた目標の達成に向け、自らの適切な貢献を行い、他の加盟国とともに努力することに引き続きコミットしています。
ありがとうございました。
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