安保理決議1267委員会議長報告に関する安保理公開討論における原口国連大使演説(仮訳)
2003年7月29日
議長、
1267委員会は、タリバン・アルカーイダ及びその関連団体との闘いにおける有効なツールであり、その活動に感謝します。しかし、遺憾ながら幾つかの国でアル・カーイダの仕業とみられるテロは後を絶たず、また、かつての本拠地アフガニスタンにおいても、タリバン・アルカーイダの残党が依然として活動しています。これらの集団は、引き続き国際平和と安全を脅かしています。我が国としても、海上自衛隊の艦艇をインド洋で補給活動に従事させることにより、アフガニスタンにおいてこれら残党と闘っている多国籍軍の活動への協力を現在も継続しています。現地での断固たる対応と、国際社会全体による制裁措置の厳格な適用及び途上国によるそのような実施を可能にするキャパシティ・ビルディング等による総合的な取り組みにより、タリバン・アルカーイダの挑戦に打ち勝たなければなりません。
議長、
先般発表された安保理決議1363モニタリング・グループの報告書は詳細かつ極めて興味深い文書であり、グループの活動を高く評価します。我が国は、報告書の指摘する次の三点について深く懸念しています。
第一に、アルカーイダの主要指導者を捜索・拘束するための努力が進んでいますが、依然として国際的な追求を逃れている指導者があり、更に、アフガニスタンで訓練されたのではない新世代のアル・カーイダの分子が登場し、世界を危険なほど自由に行き来できていると指摘されていますが、これらの事実は深刻です。当局間の情報交換の強化、制裁対象リストの充実等により、効果的な渡航禁止措置をとり、タリバン・アル・カーイダに対する包囲網を狭めていくことが急務です。
第二に、CTC、FATF、テロ資金防止条約等を通じて各加盟国で新法制、制度の採用が促進され、その結果として多くのタリバン・アルカーイダ関連の資産及び資金が凍結されていますが、アル・カーイダにとって依然として麻薬の不法取引、チャリティ等により多くの資金が入手可能であり、彼らが「ハワラ」等のシステムにより依然として資金を配分することができていると指摘されています。アル・カーイダのすべての資金源を断ち、その活動を実施する力を奪うため国際社会の一層の取り組みが必要です。モニタリング・グループとCTC専門家との関係強化等によるCTCと1267委員会との一層の協力は有益です。
第三に、非合法な武器へのアクセスを可能とする環境がアル・カーイダの脅威を高めています。したがって、厳格な武器取引対処措置の実施が不可欠であり、特に、国際社会は大量破壊兵器関連物質がテロリストの手に渡ることを完全に防止しなければなりません。日本は、国内に原子力プログラムを有しない国を含めた各加盟国に対し核物質防護条約の締結を求めているグループの勧告を支持します。小型武器の規制に関する各国の取り組みも重要です。
議長、
1267委員会の包括制裁対象者リストは着実に充実が図られてきていますが、情報の不足により、各国におけるリスト掲載の個人・人物の特定の面で困難を生ずることがあります。したがって、リスト掲載個人・団体の申請国を含む各国が追加的な情報を提供するよう一層努力するよう求めます。また、リストのアップデートは、各国が遅滞なく国内法令に反映させることが重要であり、このため、アップデートの国内実施のタイミングについて、制裁委員会によるプレス・リリース発表又は加盟国への正式通知後一定期間内に実施するべしといった指針を委員会が出すことは有益であると考えます。
最後になりましたが、議長、制裁委員会前議長であったヴァルデス前大使及び現議長のムニョス大使、並びにチリ代表部のスタッフ及び制裁委員会事務局、モニタリング・グループ専門家の献身にあらためて感謝したいと思います。ムニョス大使のリーダーシップの下で、委員会が引き続き効果的に機能するものと確信します。
議長、有り難うございました。
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