コンゴ民主共和国情勢に関する安保理公開討論における原口国連大使演説(仮訳)
平成15年7月18日
議長、
コンゴ民主共和国の現在の情勢は、国際社会が対応すべき最も重要な状況の一つであり、非安保理メンバー国がこのような重要な問題について意見を述べる機会を歓迎します。
議長、
コンゴ(民)政府と他のコンゴ諸派との間の長い交渉の結果として新たな暫定国民統一政府の構成に関する合意が達成され、引き続き6月30日にジョセフ・カビラ大統領により新政権の関係閣僚の任命が発表されるとともに、昨日、4名の副大統領の宣誓式が行われたことは、コンゴ(民)の和平プロセスにおいて極めて重要なステップです。日本政府はこのような進展を歓迎するとともに、これに至る調停者の努力を評価します。新政府が、暫定憲法の規定に従い、できる限り速やかに機能を開始できるよう、コンゴ諸派が十分に協力することを強く希望します。日本政府としても新政府と緊密に協力していく用意があり、この関連で、武装解除、動員解除及び社会復帰の分野で支援を提供することを検討しています。
議長、
我が国政府は、コンゴ(民)の東部地域において、事態を安定化させ、人道的危機を回避するための措置をとることが緊急に必要であると考えています。極めて困難な状況下で行われているMONUC及び欧州連合のリーダーシップの下で派遣された暫定緊急多国籍軍の活動に感謝します。9月の多国籍軍撤退後の状況は予断を許さないため、適切なマンデートを有するMONUC部隊をイツリ地区に展開することを可能とする決議を安保理が速やかに採択し、これにより多国籍軍からMONUC部隊への円滑な移行を確保することが重要です。それは関係当事者に対し和平プロセスを推進するとの安保理の強い決意を示すことになります。この関連で3点指摘したいと思います。
第一に、ブニア周辺地域の深刻な状況において、イツリ和平プロセスを推進するため、同地区に展開するMONUC部隊には十分に強力な執行マンデートが与えられる必要があると認識しており、これを付与することを支持します。同時に、議長、その実行には慎重さが必要です。国連憲章第7章に基づく治安の確保等の活動のための強力な執行マンデートは、当事者の一部が停戦合意、和平合意に参加していない状況の下では、従来のPKOの慣行を変化させ、PKO部隊があたかも紛争当事者のように戦闘に従事しなければならないような困難な状況に追い込むおそれがあります。したがって、このような強力な権限を他の平和維持活動に安易に付与すべきではありません。このようなマンデートは、事態の緊急性から真に必要であり、要員派遣国の確保及びそれにより事態を解消し得るとの明確な見通しがある例外的な場合にのみ付与されるべきものです。
また、そのようないかなる執行マンデートも、曖昧なものとすることは適当でなく、それが、いかなる条件の下で、いかなる地域において執行されるのかが安保理決議において明確に定義され、当該マンデートの行使を可能とする部隊運用基準が設定されるべきです。
第二に、MONUCの規模について、日本政府は、東部地区において追加的に生じた緊急の必要に適切に対処し、コンゴ(民)の他の地域に危機が波及することを防ぐため、MONUCを強化する必要性を認識します。しかし、コンゴ(民)のような広大な国土を有する国において、MONUCの軍事的プレゼンスによって力で平和を定着させることは不可能であり、イツリ地区と同様のアプローチをコンゴ(民)全土でとることは現実的でないことにも留意する必要があります。関係当事者が自らの意思で協力して和平プロセスを推進しなければなりません。
第三に、事務総長の提案する武器禁輸措置については、日本はそれが適用される場合にはその実効性の確保が重要であると考えます。この観点から、安保理が、特にいかにその実施をモニターするか等、必要な措置について慎重な検討を行うことを期待します。小型武器の問題に関連し、先週開催された小型武器中間会合において、2001年に開始された行動計画に基づき、大湖地域においてこの問題に関する各国のフォーカル・ポイントが設定されたことが示されました。これらの各国のフォーカル・ポイントの間で、武器禁輸措置の実施に関する緊密な協力が行われることが重要です。また、この機会に、安保理が天然資源の不法搾取の問題についても、有効な対策をとることを検討すべきである点も強調したいと思います。
議長、
日本は、新任のスウィング事務総長特別代表のリーダーシップ下で、MONUCが引き続き有効に機能することを期待します。コンゴ(民)において失敗すれば、国連の平和維持活動に対する信頼そのものが深刻に揺らぐことになります。国際社会が問題の解決を助けるため、引き続き全力で取り組んでいかなければなりません。
議長、ありがとうございました。
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