アフガニスタンの治安情勢及び麻薬規制問題に関する安保理公開会合における原口国連大使演説
平成15年6月17日
議長、
アフガニスタンの治安情勢及び麻薬規制問題に関する本日の会合を開催頂き有り難うございます。
議長、
芥子作物の撲滅のためにアフガニスタン政府及び国際社会の双方がとってきた措置にもかかわらず、二千三年、アフガニスタンはまたもや世界最大の麻薬産出国となると予想されています。このことは、非常に多くの麻薬がアフガニスタンから不法に輸出され、世界各地で多くの犯罪と被害者を生み出すことを意味しており、更に、アフガニスタンにおいては、治安の回復、和平の定着を危うくするということを意味します。芥子栽培及び麻薬ビジネスが地方の軍閥を不法に富ませ、中央政府の権威に挑戦するベースを与えるからです。これは誠に由々しい問題です。軍閥の財政的基盤を抑えることにより中央政府の権威を確立し、これによりアフガニスタンの治安状況の改善、和平の定着に資するような、効果的な薬物対策が必要です。この点に関し、以下を指摘したいと思います。
第一に、我が国は、アフガニスタン政府が策定した国家麻薬規制戦略十ヵ年計画を強く支持します。我が国は、また、この取り組みに関する主導国である英国のイニシアティブを歓迎します。麻薬規制の成功は、栽培者に対する効果的なプログラム及び法執行能力向上のみならず、貧困の消滅にもかかわっています。なぜなら、貧困はしばしば麻薬問題の原因となっているからです。特に地方における同国の全般的な経済状態を改善することは、農家が芥子栽培への依存を克服することを可能にすることに資すると考えられ、そのため、日本としても、「諸方イニシアティブ」と呼ばれる総合地域開発計画を着実に実施し、その下で、収入増、医療、衛星、教育面の能力向上、労働集約型のインフラ整備などの分野でプロジェクトを実施しているところです。
第二に、アフガニスタン国内の芥子撲滅及び麻薬取引対策促進に加え、問題を地域的側面から対処することが必要です。アフガニスタンで生産された麻薬は、近隣諸国を通じて陸路で国外の市場に不法に輸出されるからです。近隣諸国が国境を効果的に管理し及び自国内の輸送ルートを断つことが不可欠です。この関連で、パキスタン、イラン、タジキスタンなどの近隣諸国がとっている様々なイニシアティブを評価します。日本は、これら諸国におけるUNDCPの活動を支持し、これに対する拠出を行ってきています。
第三に、あらゆる麻薬の規制が世界的に強化されなければなりません。麻薬に対する需要及び供給が世界中で規制されない限り、麻薬取引を阻止することはできません。このためには、更なる税関当局間の情報交換および法執行・捜査機関間の一層の協力が必要です。
第四に、既に冒頭で麻薬が治安に影響を及ぼすことに触れましたが、これは当然のことながら治安対策が効果的な麻薬対策にもつながることになります。その意味で、元兵士のDDR(武装解除・動員解除及び社会復帰)並びに信頼できるアフガニスタン国軍および警察の設立は、麻薬規制の取り組みの有効性を向上させることにもなります。
この関連で、カルザイ大統領が六月二十二日開始すると宣言しているDDRプロセスを支持していくことの重要性を強調したいと思います。カルザイ大統領が装置解除及び動員解除を来年六月の選挙までに終了するとコミットしていることは心強い限りです。日本及び国連は、このプロセスを主導しており、その成功の為に大きな努力を傾注しています。我々が直面している問題として、移動装置解除ユニット(MDU)の中立性を確保、国際的な検証システムの確立、治安の確保、国防省改革、社会復帰プロジェクトの充実等があります。我々は、緊急再建チーム(PRT)の地方への派遣国及び派遣予定国の協力を高く評価します。DDRはアフガニスタンの全般的な治安状態の改善、和平プロセス、復興、再建のために不可欠であり、国際社会に対し、DDRに対する全面的な協力を呼びかけたいと思います。
議長、
イラク、中東その他の地域で新しい緊急の問題が発生するにつれて、国際社会の関心はややもするとアフガニスタンから逸れていくのではないかと懸念されます。しかし、この国において和平を達成することに失敗すれば、それは他の地域における和平プロセスにも深刻な影響を与えかねないことを認識すべきです。アフガニスタンの和平プロセスは、制憲ロヤ・ジルガ及び来年の選挙を控え現在非常に微妙な段階にあり、治安状況は非常に不安定です。我々の和平プロセスに対する支援はアフガニスタン情勢が世界の耳目を集めていた時期の一時的なジェスチャーであってはなりません。我々は、自由、民主的かつ平和的なアフガニスタンの建設が達成されるまで、自らのコミットを果たしていく必要があります。
有り難うございました。
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